ー旅立ちの章74- 教祖様の怪しいお薬をめぐって仲たがいしはじめたんやで?
あ、あかん。リーダー格の男が、怪し気な薬の包み紙をわいに渡してきたんやで?
「ほれ、早く飲むんだべ。適正があれば、幸福感に包まれて、教祖さまのために働こうと想うようになるんだべ?」
「おい、与作。こんなやつ、仲間にする必要なんかないんだぎゃ。なんで、大事な教祖様の薬を渡さなならんのだぎゃ。こんなやつに分け与える分があるなら、おいらにくれだぎゃ!」
「田吾作、うるさいだべ!わての言うことは教祖様の言葉だべ!」
「何を言っているんだっぺ。お前のどこが教祖様なんだっぺ!教祖様を馬鹿にしているんだっぺか!?」
「おおん!?喜兵衛。お前を教祖様に会わせてやった恩を忘れたんだべか?お前が先に死にたいだべか!?」
お、おや?何やら、仲間内で喧嘩を始めたんやで?これはもしかして、わいにはチャンスとちゃいますか?
「与作。おら、おめえが前々から気に入らなかったんだっぺ!いっつもいっつも、高速渦巻き攻撃の時は、安全な一番後方にばっかりいるんだっぺ!なんで、おらばっかり、一番先頭なんだっぺ!」
「そりゃ、お前がこの中で一番下っ端だからに決まっているんだべ!そんなこともわからないアホだから、いつまで経っても、高速渦巻き攻撃の一番先頭なんだべ!」
「喜兵衛。お前は頭が悪いんだぎゃ。2番目と3番目は特に連携が取れてないと、高速渦巻き攻撃は成功しないんだぎゃ。そんなことすらわからないんだぎゃ?」
「そんなこと言っておきながら、与作と田吾作は、この男に反撃を許しているだっぺ!おらはちゃんと、こいつが右によけるように誘導したんだっぺ!」
「おいらだって、ちゃんと鍬を横薙ぎにして、こいつを与作の方に誘導したんだぎゃ!とどめをとるのを失敗した与作が全部悪いんだぎゃ!おいらのせいにするなだぎゃ!」
「何を言ってるんだべ!田吾作が、強く、ふっ飛ばしすぎた所為で、目測を誤ったんだべ!今回の高速渦巻き攻撃が失敗したのは、全て田吾作の所為だべ!」
「与作。おいらは怒ったんだぎゃ。自分の失敗を棚にあげて、まるで全ての失敗の原因がわてにあるような言い方はさすがに納得がいかないんだぎゃ!」
「なんだべ?納得がいかないって言うなら、どうする気だべ?田吾作さんよ。まさか、わてに逆らおうって言うんだべ?もう、教祖様からの薬を分けてやらないんだべ?それでも良いんだべ!?」
おお、おお。与作くんと田吾作くんが一触即発の状態になったんやで?いいんやで?いいんやで?そのまま、殴り合いに発展してくれやで?
「へへっ。喜兵衛。おいら、良いことを想いついたんだぎゃ」
「どうしたんだっぺ?田吾作。まさかだっぺ?」
「ああ、そのまさかだぎゃ。喜兵衛。力を貸せだぎゃ!与作を殺して、教祖様のお薬を全部、奪うのだぎゃ!」
「あひゃあああ!そりゃいい考えだっぺ!前々から、与作のでかい態度が気に入らなかっただっぺ。こいつを殺しても、ボロ小屋の連中を始末してしまえば、あとから教祖様にはどうとでも言い繕うことができるんだっぺ!」
「お、おい。田吾作、喜兵衛。何を考えているだべか!わてを殺せば、教祖様からお叱りを受けるんだべ!それでも、お前たちは良いというのか?だべ!」
「喜兵衛!鋤で突くだぎゃ!」
「うひゃひゃひゃひゃ!」
うわあ。まじでこいつら、狂っているんやで。喜兵衛くんが与作くんの腹に深々と鋤を喰い込ませたんやで!
「うぎいいいいい!いだい、いだいだべ!お前ら、教祖様の命令が聞けないんだべか!」
「お前は教祖様でもなんでもないんだっぺ!田吾作、早く、その手に持つ鍬で頭をかち割るだっぺ!」
「うはああああ!おういええええ!」
どぎゃん!ばきん!ばっきん!うっわ。ぐろいんやで。与作くんの頭がスイカのように割れて、脳漿が辺りに飛び散ったんやで?
「はあはあはあ。与作、悪いんだぎゃ。でも、あごでおいらたちを動かそうとするその態度が気にくわなかったんだぎゃ!」
「そんなことより、こいつの荷物から教祖様のお薬を奪うんだっぺ!」
「きひきひ、きひひ。たんまり、お薬を隠し持っているんだぎゃ。これさえあれば、当分、薬を教祖様から買わなくてすむんだぎゃ!」
「あひゃひゃひゃ!さっそく、ひと包み飲むんだうぎいいいい!」
喜兵衛くん。すまへんな?お楽しみの前に、わいの槍を馳走してくれるんやで?
「お、おい。喜兵衛えええ!てめえ!何で、喜兵衛に槍をぶっ刺しているんだぎゃ!」
「あんたら、ほんまに頭がおかしくなってもうてるんやな?敵を目の前にして、仲間割れとは、アホ以下でっせ?」
田吾作くんがよだれを口の端からだらだらと流しているんやで?そして、両眼の焦点が合わないながらも、わいを睨んでくるんやで?
「いだい、いだい、いだい、いだいだっぺ。はあはあはあ。教祖様のお薬を飲めば、こんな痛み、すぐ取れるんだっぺ!」
何を言うておりますんや。喜兵衛くん?そないなもん、飲まれて復活されたら、わいとしては困るんや。もう1回、深々と槍を突き刺させてもらうんやで?
って、どういうことや!?突き刺した槍が肉に食い込んで、抜けないんやで!?
「ひひっ。ひひっ。こんなこともあろうかと、あらかじめ、ひと包み、飲んでおいたのが正解だったんだっぺ!おらの筋肉は、今や鋼鉄に変わっているんだっぺ!」
何を言うてますんや?ただ、あんたが馬鹿力で筋肉を締め上げているだけやんか?傷口をグリッと捻って、広げりゃいいだけの話やで?って、あかんわ!槍を捻ろう想っても、びくともせんくなったんやで!?




