ー旅立ちの章 7- 普通の豚メンとかっこいい豚メンの違いってなんやろな?
「あかん。わい、段々、腹が立ってきたんやで!風花くん、菜々くん。千歳ちゃんはどこでお見合いをしているんや?わい、今からそこに乗り込んで、千歳ちゃんをさらってくるんやで!」
「うっわー、四さんってすっごい情熱的なんだねー。これはあたし、四さんの評価を見直さなきゃならなくなったよー!」
「うふふ。これぞまさに青春ですわ?ああ、田中さんが私に言い寄ってきたときを想いだしてしまいましたわ?あの時の田中さん、いつもの豚メンがかっこいい豚メンに変わっていましたわ?」
「あ、あの?風花くん?田中くんのかっこいい豚メンってなんでやんすか?それって、どっちにしろ、豚メンは豚メンってことだと思うんやで?」
あらあらまあまあ!と風花くんが驚きの表情になっているんやで?
「それは気付きませんでしたわ?でも、あの時の田中さんはかっこいい豚メンだったのですわ?うーん、私の見間違いでしょうか?」
あ、あかん。ちょっと、いらんことを風花さんに言ってもうたわ!田中くん、ごめんな?きっと、風花くん、田中くんの顔をまじまじと眺めながら、うーーーん?と悩むことになるかも知れへんけど、気にしてはいけないんやで?
「なんか呼ばれた気がしたから、こっちに来てみたんだぶひい。さっきから、訓練をさぼって、四さんは何をしているんだぶひい?そろそろ、列に戻らないと、河尻さまからケツ罰刀を喰らうぶひいよ?」
なんてタイミングの悪い奴なんや、田中くんは!
「ん?風花さん、どうかしたんだぶひい?そんなに真剣な顔つきで僕の顔を見ているけど、僕の顔に何かついているんだぶひい?」
風花さんが、うーーーん、うーーーん、うーーーん?と唸っているやで。これは要らん火種を2人に残したんやで!
「いえ?田中さんがかっこいい豚メンに見えるのですが、その理由は、私の視力が落ちてしまったせいなのかと悩んでいるところなのですわ?」
相変わらず毒を呼吸をするが如くに吐くひとやで、風花くんは!いくら鈍い田中くんと言えども、何を言わんかしているのかを察してしまうんやで?
「そうぶひいか?僕は普段通りなんだぶひい。特別、恰好つけようとして、顔を決めているわけではないんだぶひい。多分、風花さんの視力が問題ではなくて、風花さんが僕を愛していてくれているから、そう見える、恋の魔術なんだぶひい」
うおっ。この田中くん、何をさらりと歯が浮くようなことを言っているんや!こいつ、ほんま、ドブにはまってしまえばいいのにな!
「なるほどですわ。合点がいきましたわ。さすが私の愛する田中さんなのですわ。田中さんは私の気付かないことを教えてくれる、かっこいい豚メンなのですわ」
田中くんが、えへへとにやけ顔になり、風花くんもまたうふふと微笑んでいる。ええなあ。わいも千歳ちゃんとあんな風に幸せに笑って日々を過ごせる仲になりたいわあ。
「本当、田中くんと風花にはごちそうさまーとしか言いようがないよー。で、話を戻して、千歳ちゃんのお見合い会場の件だけど、確か、津島の町のちょっと値段がお高めの食事が楽しめる料理屋さんだったはずだよー?」
「ん?千歳さん、お見合いをするんだぶひい?しかも、津島の町のちょっと値段がお高めの食事が楽しめる料理屋さんって言うのは、あの、綾高いのことぶひいか?」
「そうですわ。あの、綾高いですわ。田中さんとの密会時に一度、連れていってもらいましたけど、出されるお茶が高級なものでびっくりしましたわ」
「食べたおわったあとの会計で、2度びっくりなことになる店だぶひい。風花さんには悪いけど、今度、あの店にまた行くのは少し待ってほしいんだぶひい。先日の合戦で、また鎧にヒビが入っちゃって、修理費がかさむことになったんだぶひい」
「いえいえ。そんなに気張らなくても良いのですわ?私は田中さんと一緒に食事を楽しめるのなら、どこのお店でも構わないのですわ?そんなお店に無理をして通うことによって、田中さんとの密会の回数が減ってしまっては本末転倒ですもの」
「風花さんの心遣いには感謝をしてもしきれないんだぶひい。安くてもなるべく美味しいお店を探し出しておくんだぶひい。それが僕にできる最善なんだぶひい」
「うふふ。期待してますわ。それで、四さん?その綾高いのお店で、千歳さんは今、お見合いをしているはずなのですわ。少し待ってくださいね?今、大体の場所の地図を紙に書きますわ?」
風花くんと田中くんが、ああでもないこうでもないと言いながら、紙に色々と書きこんでくれているみたいやなあ。ほんま持つべきは頼れる親友やで!わい、田中くんに今度、何かおごらないとあきまへんなあ。豚メンやさかい、豚さんが好んで食べる物がいいんやろうなあ?うーん、草?草でええんやろか?
「四さんー。いくら田中くんでも、つくしやゼンマイならともかくとして、その辺に生えてる雑草は食べないと思うよー?」
「そうなんか?わい、金が無かった頃は、よくその辺の食べれそうな草をもいで、稗と一緒に茹でて喰ってたもんやで?」