ー旅立ちの章66- 利家くんには鳩のまるちゃんの声が聞こえないみたいなんやで?
やっぱりかいな。材木問屋の家族と大工の皆さんはすでにこの世から消されていたんかいな!こいつら、やっぱり、悪やで。ひとを殺すことになんのちゅうちょすらしない奴らやで!
「慶次、こいつを外に連れて行けッス。ここで殺したら、この家が穢れてしまうッス」
「あいよ。適当に埋めてくるんだぜ。そこにある鍬を借りるんだぜ」
「野犬に掘り返されないように深く埋めとくッスよ?死体が見つかったら大事になるッスからね」
慶次くんがあいよっ!と言って、利家くんとこの家から出ていくんやで?わいと利家くんは土間に水をぶっかけて、さらに箒ではいて、土間にこびりついた血を洗い流すんやで?
それから30分もしたら、慶次くんがまた戻ってきて、その辺に鍬を置いたんやで?
「さて、埋めてきたんだぜ。ついでに周りにあいつの仲間が居ないか、気配を探っては視たものの、それらしき奴らはいなかったんだぜ。多分、やつは単独行動みたいだったんだぜ」
「ごくろうッス、慶次。茶でも飲むッスか?三日前から使ってる茶葉ッスけど」
「おっ。悪いね。って、うっすいんだぜ。三日も使った茶葉を使うんじゃないんだぜ」
「そんなこと言われても仕方ないッスよ。さて、どうしたもんッスかね。俺が狙われていると言うことは、松にも危険が及ぶ可能性が出てきたと言うことッス」
「松くんは前田家の屋敷に預かってもらう方がええんちゃいますか?【神の家】の奴らをシバキに行こうにも、病人を置いてはいけへんやろ?」
「四の言う通りッスね。慶次、悪いけど、松を前田家の屋敷に避難させておいてくれないッスか?俺が命を狙われている以上、松にまで危険が及ぶこととなれば、信長さまもその辺は考慮してくれるはずッス」
「わかったんだぜ。だが、熱がぶり返しちまうかも知れないから、今日1日、様子を視てからになるんだぜ。叔父貴、それで良いか?だぜ」
「そうッスね。じゃあ、慶次は今日1日、俺と一緒に松の身を守ってほしいッス。俺ひとりだと、夜、この小屋に火をつけられでもしたら、対処できないッスからね」
「さすがに火着けはしないんじゃないのか?だぜ。そんなことになれば、信長さまの知るところになるんだぜ。あいつらとしては、殺して、どこかに埋めるほうを選ぶはずだぜ?」
「そうかも知れないッスけど、念には念を入れてッス。夜は俺が警備するから、慶次は昼間、起きててほしいッス」
「わかったんだぜ。四たん、すまねえな。そういうわけだから、俺様は、叔父貴と松さんを今日1日、守らなきゃならないんだぜ」
「わかったんやで?くれぐれも注意してくれやで?」
「四さま。僕たちも、利家くんの家に泊まっていったほうがよくないっしー?男2人よりも3人のほうが身を守るには安全っしー」
「それはそうやけど、わいらが長屋に戻らんかったら、蛇とねずみと河童くんが共食いを始めるんやで?わい、そっちのほうが恐ろしく感じるんやで?」
「そうだったしー。そっちを放っておいたら、大変なことになりそうだっしー。うーーーん、うまい方法はないっしー?」
千歳ちゃんがそう悩んでいると、わいの髪の毛をひっぱる奴がいるんやで?
「ポッポー。拙者に良い考えがあるんだポッポー」
おい、クソ鳥、何いきなりしゃべってるんや!利家くんがびっくりするやろが!
「まるちゃん、良い考えって何だっしー?」
「ちょっと、四。お前の嫁さんが鳩としゃべり出したッスよ?医者に診せたほうがいいんじゃないッスか?」
「あれ?利家くんには鳩のまるちゃんがしゃべってるのがわからへんのかいな?」
「何を言っているッスか。どうやって人間様と鳥が会話するんッスか。四も頭がおかしくなっているんッスか?」
なんやと?まるちゃんと会話できるのは、わいと千歳ちゃんと慶次くんだけって言うこっちゃかいな?
「ポッポー。どうやら、拙者の声はそこの利家なる男には聞こえぬようだポッポー」
「うるさい鳩ッスね。ポッポー、ポッポーと何を喚き散らしているッスか。松が起きてしまうッス」
「すまんやで。ちょっと、鳩のまるちゃんをシバキ倒してくるさかい、外に行ってくるんやで?千歳ちゃんも一緒にくるやで?」
わいはそう利家くんに断って、ボロ小屋の外に出たんやで?って、待ってくれや?ボロ小屋のすぐ近くにさっき土を掘り返しましたって言う跡があるんやで?慶次くん、埋めるならもっと遠くに埋めてくるんやで?死体の匂いでえらいことになりまっせ?
「ポッポー。さて、今夜一晩、どうするかの話をするんだポッポー。どうせなら、長屋に居残っている連中、全員、このボロ小屋に集めるんだポッポー」
「なんやと?そないなことしたら、利家くんが白目をむくんやで?そして、気が狂ったかのように、蛇とねずみと河童くんを斬り殺してしまうかもしれへんで?」




