ー旅立ちの章65- すでに刺客が送り込まれていたんやで!
【神の家】、許すまじやで!わいは頭に血が昇ってくる想いなんやで!
「四さま、落ち着いてほしいっしー。今の四さまの顔がおそろしいことになっているっしー。まるで、ひとを殺すのも厭わないと言った感じっしー」
「すまんやで。でも、わいはあいつらが尾張に根付くのは許せないんやで!利家くん。やつらの屋敷はどこなんや?火をつけてやるんやで!」
「四。落ち着くッス。罪を暴く前に行動を起こせば、四、お前がひとり罪を被るだけになるッス。火着けは重罪ッス。いや、下手をすれば死罪ッス」
「くっ!火を着けたほうが手っ取り早いって言うのに、歯がゆいんやで!」
「まずは、消えた材木問屋と大工たちがどうなったのかを調べるべきッス。その【神の家】の奴らが何かをしたと言うのであれば、それを信長さまに訴えたほうが安全に事を運べるッス」
「しかしやで?そんな悠長なことをしていたら、わいだけやなくて、利家くんもやばいことになるはずやで?利家くんも無関係やあらへんで。わいの予想やと、材木問屋と大工たちは【神の家】の奴らに殺されたんやで。それなら、出資した利家くんの身にも危険が迫っているってことやで?」
「そうッスね。四の言う通りッス。おい、俺を監視している奴、いい加減、中に入って、姿を見せるッス」
な、なんや?すでに利家くんは自分の身に危険が差し迫っていることに気付いていたんかいな?
「ふっ。さすがは元・赤母衣衆筆頭だぎゃ。まさか、気配を消していた我を察知するとは想わなかったのだぎゃ!」
な、なんや?声が天井から聞こえるんやで?
「うるさいッス。慶次、その槍を貸せッス。オラオラッス!」
利家くんが槍を天井にぶっ刺したんやで?そんなことしたら、雨が降ったときに、だばだばっとそこの穴から雨水がダダ漏れなんやで?
「おっと。しまったッス。まあ、あとで修繕しておくッス。おい、慶次。殺しはしてないッスから、外に転がっている奴を中に連れてくるッス」
「あいよ。ったく、俺様がぶっ殺してやろうと想っていたのに、先に叔父貴に取られるとはなだぜ。こんなことなら、叔父貴の静止を振り斬っておけば良かったぜ」
慶次くんがよっこらせと言いながら立ち上がって、ほったて小屋の出入り口の戸を開けて、外に出ていくんやで?
「なんや?慶次くんと利家くんは、【神の家】の奴らに監視されていたことに気付いていたんかいな?」
「【神の家】の関係者かどうかは知らなかったッス。でも、さっきから、天井がギシギシ言っていたッス。監視するならもう少し、頭を使えってだけッス」
わいもギシギシ言っているのはわかっていたけど、それはボロ小屋ゆえんだと想っていたんやで。なんたって、ちょっと強風が吹こうものなら、屋根が全部、飛んで行きそうやからな、この小屋は。
「おっし、叔父貴。連れてきたんだぜ。幸い、急所に槍がぶっ刺さっていたみたいだから、あと10分ほどの命なんだぜ」
「そうッスか。やっぱり、視えない相手をぶっ刺したら、急所を外すのは難しいッスね。そこの土間の所に転がしておいてくれッス」
慶次はハイよっと応えて、捕まえてきた男を土間に転がすんやで?しっかし、こいつ、なんて恰好なんや?熊の毛皮を頭に被っているんやで?しかも、身体に身につけているのは真っ黒な服なんやで?
「おいっ。お前は【神の家】の関係者ッスか?どうせ、すぐに死ぬ身ッス。冥土の土産に全て吐くッス」
「う、うるさいのだぎゃ!あああ、痛い。痛いだぎゃ!こんなに痛いのでは、何もしゃべる気がないんだぎゃ!」
「慶次。槍をちょっと汚すッスけど、良いッスか?」
「ああ、構わないんだぜ。でも、槍がへし折れるほど、ぶん殴るのはやめてくれなんだぜ?」
そこは善処するッスと言って、利家くんが、槍の柄の部分で、土間で横たわる男をバコッバキッベコッ!と殴っているんやで?うっわ。さすがのわいもドン引きやで?千歳ちゃん、視ちゃダメやで?
「おいっ。これ以上、痛めつけられたくなかった言うッス。お前は【神の家】の関係者ッスか?洗いざらい言えば、楽に死なせてやるッス」
「う、うひいいい!これ以上、苦しめるのはやめてほしいのだぎゃ!そうだぎゃ。オイラは【神の家】の関係者だぎゃ!【神の家】尾張支部建設の出資者を消せと上から命じられただぎゃ!」
「ほう。そうッスか。じゃあ、お前らの屋敷の建設に関わった、材木問屋の家族も、大工たちも姿を消したのは、お前らの仕業だっと言うことッスか?」
「ひ、ひい!オイラは命じられただけだぎゃ!だから、あいつらを消しただけだぎゃ!そうしなきゃ、オイラは【神の国】に逝けないと言われたのだぎゃ!オイラは悪くないのだぎゃ!」




