ー旅立ちの章63- 茶碗を割る気はなかったんやで?
「お待たせしたっしー。粟と稗の粥に野菜マシマシっしー。そこに鰹節の削ったモノと味噌をぶっ込んでみたっしー。うーん。梅干しがないところが残念なところっしー」
「梅は今、漬けてる最中ッスから、仕方ないッス。来月にはいい具合に仕上がるはずッス」
「そうかっしー。ちょっと、四さま、お椀をとってほしいっしー」
ん?お椀?このひび割れたやつでええんかなあ?なんか、粥が漏れ出しそうな気がするんやで?
「なんや。ちょっと力を込めるとパキッといきそうなやなあ?なんか危なっかしいお椀なんやで?おっと、割ってもうたわ!どないしよ!」
「おいおい、四たん。そんなに力を込めたらダメだぜ。女性のお椀カップを持つように優しく扱わなければならないんだぜ?ほら、俺様のようにって、うわっ!パキッと割れたんだぜ!」
「何をしているッスか。俺の家のお椀を全部、割る気ッスか。しかし、お椀がボロボロすぎるッス。どうにかして、新しいお椀を手に入れないといけないッス」
「慶次くん、お椀くらいこっそり、利家くんに渡せないんかいな?前田家の当主の家なら、いらんお椀くらいごろごろ転がっているやろうが?」
「まあ、それもそうなんだが、俺様が直接、持って来たら面倒ごとに発展するんだぜ。四たん、今度、前田家の屋敷にきてくれだぜ。そしたら、お椀を20個近く渡すんだぜ。それを叔父貴のとこに送ってほしいんだぜ」
「わかったやで。とりあえず、松くんに粥を喰わせましょうや。利家くん。松くんを起こしてくれやで?」
「わかったッス。おい、松。粥が出来たッス。起きてくれッス。ん?ぐっすり寝てるッスね。おーーーい。松、起きるッス。起きなかったら、また、さっきの河童のぬるぬるの液体を飲ませるッスよー?」
「うわーーー!それはやめてーーー!あんなぬるぬるの栗の花の匂いがする液体なんて飲めないー!」
あっ。松くんが起きたんやで?そんなにあの河童くんのぬるぬるの液体が気に入ったんかいな?さすが、利家くんが鍛えただけはあるんやで?
「ふーふーっしー。熱いから気をつけるっしー。おお、すごい食いつきっしー。よっぽど、お腹が空いていたっしーね?」
「はふはふ。熱が出てて、食欲がなかったのー。でも、あの苦いぬるぬるのお薬を飲んでひと眠りしたら、熱がすっかり冷めたのー。そしたら、お腹がすっごく空いてきたのー。はふはふ」
「たくさんあるから、ゆっくり食べるっしー。うーーーん、もうちょっと元気になってきたら、うどんも良さそうっしー」
「干しうどんは安くて、日持ちがするからなあ。利家くん、うどんはないんかいな?」
「うどんッスか。今度、買ってくるッス。しかし、金策をどうするッスかねー。これから暑くなっていくから、着物のひとつでも質に入れれば良いッスかねー」
「そんなことしたら、今年の冬はどうする気っしー!春先でこの寒さで松くんは熱を出して倒れたっしーよ?着物は残しておくべきっしー!」
「そんなこと言われても金に変えれるものは着物くらいしかないッス。俺にどうしろと言うッスか」
「利家くん?泣き言言う前に身体を使って働くんや。信長さまも働くことは禁じてないはずやで?そうや。良いこと想いついたわ。末森城を手に入れた今、あそこは再開発を行うはずやで。あそこでなら、力仕事もあるはずやで?」
「そうッスね。じゃあ、信長さまに見つからないように、土方の仕事でも見つけて働くッスか。でも、俺はどっちかと言うと槍働きのほうが手っ取り早いんッスけどねえ」
「槍働きなんかしたら、一発で信長さまにバレてしまうんだぜ。でも、叔父貴って、今まで、土方仕事や、大工仕事なんてしたことあったか?だぜ」
「無いッスよ。でも、あんなのちょっと手先が器用なら出来るもんッスよね?俺はこう見えても針仕事なんかも出来るッス。土方仕事くらい、ちょちょいのちょいッス」
ほんまやろか?このひと、土方仕事のしんどさを舐めているんちゃいますの?多分、1日眼で腰をいわすやで?ここはいっちょ助言をしときましょうか。
「利家くん。いっちゃ悪いでやんすけど、土方仕事はイチャイチャを一晩3回するくらいに腰が痛くなってしまうんやで?わいもたまにやるけど、その晩は千歳ちゃんとイチャイチャできなくなってしまうんやで?」
「マジッスか?土方仕事って、そんなに腰をぶいぶい言わすんッスか?甘く視てたッス。俺、三日持つッスか?」
「まあ、その代り、お給金は良いんだぜ。大体1日50文から80文は手堅くもらえるもんだぜ?」
「うおっ!50文から80文って言ったら、2人で2週間は喰っていけるじゃないッスか!俺、頑張るッス。松のために土方仕事を頑張るッス!」
50文で2週間ってどういうこっちゃ?普通、2人で暮らしてたら、1日20文は食費だけでかかるもんやで?利家くんとこは、1日1食しか喰ってへんのかなあ?




