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ー旅立ちの章58- よっしゃ。いっちょ人助けをしてくるんやで?

「ふう。朝から米を食べるとは贅沢なひと時やったで?ほな、さっそく、行きましょうかいな?」


(よん)たん、行くってどこへだぜ?」


慶次(けいじ)くん。決まっているやんか。慶次(けいじ)くんの叔父の利家(としいえ)くんの嫁さんの松くんが熱を出しているんやろ?河童くんの妙薬が効くかどうか、試してこなならんやん?」


「おう。そうだったぜ!すっかり忘れていたんだぜ。じゃあ、案内するから、ついてきてほしいんだぜ!」


千歳(ちとせ)ちゃんも一緒に行くやで?帰りがいつになるかわからんのに、1人で長屋に待っとくのも寂しいもんやろ?」


「そうっしねー。じゃあ、僕もご同行させてもらうっしー。河童くんと長寿さまくんはどうするっしー?」


「ケケッ。オイラは長屋で皆の帰りを待っておくノダケケッ!」


「フシュルルルー。ワシも長屋で待機させてもらうフシュルルルー。マルよ。(よん)の身、任せたのだフシュルルルー」


「僕はどうするでッチュウかね。長寿さまと一緒にいたら、食べられそうな気がするでッチュウ」


「ねずみのこっしろーくんも、留守番をお願いするっしー。利家(としいえ)くんは喰うにも困る生活をしているっしー。ついてきたら、利家(としいえ)くんに食べられるかもっしー」


「こわいでッチュウ。僕、悪いねずみじゃないでッチュウ。食べないでほしいッチュウ!」


 まあ、ついてきても、長屋にいても食べられる危険性があるのは可哀想に想えるんやで?


「長寿さまくん。ねずみのこっしろーくんを食べんといてな?せっかく増えた仲間がいきなり一匹、減るのはさすがに気分が悪いんやで?」


「フシュルルルー。そんなことはしないと言っているだろうが!フシュルルルー。そんな心配をするより、その松とやらの心配をしてやるのだフシュルルルー」


 それもそうやな。じゃあ、ねずみのこっしろーくん。短いつきあいやったなあ?長寿さまくんに喰われたら、次は、ニンゲンさまに転生するんやで?ほな、行ってくるんやで?


 わいと千歳(ちとせ)ちゃん、そして鳩のまるちゃんは、慶次(けいじ)くんに連れられて、清州(きよす)の街を出て、さらに歩いていたんやで?


「なんや、利家(としいえ)くん。織田家から追放された言うてたけど、けったいなとこに移り住んでいるんやなあ?こんなボロッボロの廃屋かと想うようなとこで、よくもまあ、生活できるもんやで?」


「まあ、台風が来ない事だけを祈っているんだぜ。春一番が吹き荒れていた時なんかは、屋根を持っていかれそうだったと叔父貴(おじき)が嘆いていたんだぜ」


「こんなとこで住んでいたら、松くんの熱が下がるわけがないんだっしー。信長さまは血も涙も無いんっしー?」


「信長さまの命令を無視して、信長さまの家臣を斬り殺してるんだぜ。本当なら、切腹を言い渡されるはずなんだぜ。ただの謹慎で済んだだけでもマシってもんなんだぜ?」


「あれ?追放ちゃいますの?わい、てっきり、織田家から出ていけって言われたもんやと想っていましたわ」


(よん)さま。何を言っているんだぜ。追放だったら、尾張(おわり)の地から追い出されているんだぜ。清州(きよす)の街の外とはいえ、まだ恩情はかけられているほうなんだぜ?」


「謹慎程度なら、じぶんとこの屋敷で謹慎すればいいもんなのになあ?なんで、こんなボロ小屋に住んでいるんや?」


「屋敷で謹慎していたら、家族に迷惑がかかるからだぜ。叔父貴(おじき)は自分の責で、前田家全体の問題にならないようにと苦慮した結果がこのボロ小屋なんだぜ」


 なるほどなあ。自分の家には迷惑かけれん。だからと言って、追放ではないから、余所の国にも行けんってことかいな。なんか、ややこしい事情になっているんやなあ、利家(としいえ)くんは。


「ん?誰ッスか?うちの前でぴーちくぱーちくうるさいのはッス。ここを前田利家(まえだとしいえ)の家と知っての狼藉ッスか?俺は今、機嫌が悪いから手加減できないッスよ?」


 うおっ。噂をすれば利家(としいえ)くんやで。うっわ。あの男前やった利家(としいえ)くんがぼろっぼろの着物を着ているんやで。


「おう。叔父貴おじき。昨日ぶりだぜ!嫁さんの松さんは元気にしているか?だぜ」


「なんだ、慶次けいじッスか。松は今日も熱が出ているッス。あんまり騒いでほしくないところッス」


利家としいえくん。わいのことを覚えていますかいな?ひでよしくんの親友まぶだちよんさまやで?今日は熱さましに効く薬を持ってきたんやで?」


「ん?よんさま?誰ッスか?ひでよしの親友まぶだちにそんな名前の奴、いたッスか?」


よんさま、名前を覚えられてないっしーよ?」


「おっかしいなー?いつもひでよしくんの隣で必死に存在感をアピールしてるはずなんやけどなあ?わいやで?楮四十郎こうぞよんじゅうろうやで?」


「ああ、想い出したッス。ひでよしの近くで、いきなり踊りだしたりしていた奴ッスね。これは失礼したッス。無意識に視ないようにしていたから、記憶に余りなかったッス」


 ひどい言いぐさやで。まあ、ええか。多分、利家としいえくんは、わいのことより松くんのほうが心配で気がかりなんやろうな。自分にとって大事なひとが病気なら、他のことなんてどうでもよくなるもんや。わいが、いっちょ、元気づけさせてやるからな?安心してくれやで?

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