ー旅立ちの章53- わい、旅に出るほど暇じゃないんやで?
「で?結局、河童くんもわいの味方になってくれるでええんかいな?」
「ケケッ。そうなのだケケッ。でも、長寿さま、マルさま。これからどうなさるつもりなのだ?ケケッ」
なんで、鳩のまるちゃんごときに「さま」づけなんや?わいをさまづけしてほしいところやで?
「四は四なのだケケッ。それ以上でもそれ以下でもないんだケケッ。でもお前の相方はさまづけするのだケケッ」
「ほんとっしー?じゃあ、これからは千歳さまと呼んでほしいっしー。やったっしー!これで、四さまより、偉くなった気分なんだっしー!」
「ケケッ。【姫】さま、いや、千歳さま。これからよろしくなのだケケッ。で、四。これからどうする気なのだ?ケケッ」
「ん?河童くん。そないなこと言われても、わい、これから忙しくなるのは言ったはずやで?足軽10人長に抜擢される予定やし、それに信長さまが末森城を奪ったばっかりやから、そこで日銭稼ぎの仕事もできるんや。わい、千歳ちゃんとの結婚式のための資金を貯めなならんからなあ?」
「フシュルルルー。自分の身に危険が迫っているというのに、呑気な奴なのだフシュルルルー。しかし、生きていくには金が必要なのだフシュルルルー」
「そうだポッポー。四が金を稼げば、拙者のご飯も豪華になるんだポッポー。稗や粟だけじゃなく、米も食べたいところなのだポッポー」
「なんか贅沢なことを言っているんやで?天かすでも食べておけばいいんやで?」
「天かす、食べたいでッチュウ!僕、天かすが大好物だッチュウ。ぜひ、食べさせてほしいッチュウ!」
「ねずみのこっしろーくん?残念ながら、今は天かすはないんだっしー。今度、準備しておくから待ってほしいっしー」
「そうでチュカ。わかったデチュ。今夜は天かすはあきらめるでッチュゥ。でも、こっそり食べようとしてもだめでチュウヨ?僕、鼻は利くほうなんでッチュウ!」
「まったく食いしん坊な、ねずみもいるもんだぜ。でも、気を付けるんだぜ?食生活に気をつけないと痛風になっちまうんだぜ?」
「怖いでチュウ。痛風は怖いでチュウ。僕、天かすは大好物だけど、気を付けるでチュウ」
「なんかねずみのくせに痛風を気にするのも嫌な話やで?でも、食生活は気をつけなならんのは、確かやで」
「フシュルルルー。なんでこいつらはすぐ話が横道にそれるんだフシュルルルー?」
「あきらめろだポッポー。それよりも、四の命が狙われている以上、何か対策を講じなければならないんだポッポー。カラス天狗が四の暗殺に失敗した以上、次なる刺客を寄越すに決まっているんだポッポー」
「それは困ったっしー。四さま、カラス天狗をぼっこぼこにしてきたほうが良いんじゃないっしー?」
「千歳ちゃん?争いからは憎しみしか生まれないんやで?」
「四たん。それは違うんじゃないかだぜ?男と男のステゴロ勝負は友情をはぐくむためにあるんだぜ?俺様に殴られて、運よく生き残った奴は、もれなく俺の舎弟に生まれ変わるんだぜ?」
なんや、慶次くんが頭のおかしいことをまた言い出したんやで?舎弟は舎弟であって、友達とちゃうやろうが?
「なるほどっしー。争いはステゴロへと進化し、そして、友情を経て、慶次くんの舎弟へと生まれ変わるんだっしー。これは深くて良い話なんだっしー」
「なんで、そこで納得しているんや?千歳ちゃん?まあ、ええか。で?カラス天狗くんはどうしてもぶっとばしに行かなならへんのか?わい、そんなの面倒で嫌やで?」
「そんなことを言われても、四の身を守らざるえないこちらの疲弊も考えてほしいポッポー」
「疲弊も何も、鳩のまるちゃんがしてることなんて、わいの頭の上でウンコをぷりぷりしているだけやないかいな!」
「そんなことはないんだポッポー。四の食べるモノに毒が混ざっていないか、稗や粟を常についばんでいるのだポッポー。おかげで、拙者は太るばかりなのだポッポー」
「千歳ちゃん。鳩のまるちゃんに食べさせすぎないように注意してやで?こいつの体重が増えると、わいの首が痛くなってしゃあないんやで?」
「まるちゃんが可哀想だっしー。せっかく四さまの毒見役を勝って出てくれているというのに、扱いがひどすぎるっしー。僕も四さまと結婚したあとは、扱いがひどくなるっしー?」
「いやいや。そんなことは、せーへんで?わい、千歳ちゃんをごっつ大事にしたいと想っているんやんか。だから、千歳ちゃんが結婚したあと、食べ過ぎてぽっちゃりになっても全然、構わへんのやで?」
「本当っしー?僕が豚さんのようにまるまるとなってしまっても、四さまは僕のことを変わらず愛してくれるっしー?」
「任せてくれやで?千歳ちゃんがぽっちゃりになっても、わいがお姫さま抱っこできるように身体を鍛えておくからな?だから、安心して千歳ちゃんは太ってくれていいんやで?」
「慶次くん、四さまを一発ぶん殴ってほしいっしー!女性に太ってくれなんて、デリカシーのかけらもないっしー!」
「おう!頼まれたんだぜ!四たん、女性に太れとはひどい言いぐさなんだぜ!俺様はさすがに看過できないんだぜ!」




