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ー旅立ちの章52- 殴るつもりがでこぴんとは卑怯なんやで!

「かあああ!千歳ちとせさんのお父さんとお母さんはすごいんだぜ。一族の掟を破ってまで駆け落ちをするたあ、見上げた根性なんだぜ!俺様も嫁が欲しくなった時は、やってみるんだぜ!」


「やめときやで?そんなことしたら、後悔のほうがあとあと、すごいことになるからなあ?わいも昔、とある女性と駆け落ちしようと想ったんやけど、結局、のちのちのことを考えたら、できんもんやったで?」


よんさま、何、昔の彼女のことを想い出しているっしー。なんだか、ムカムカしてきたっしー!慶次けいじくん。一発、よんさまを殴ってほしいっしー!」


「おう、わかったぜ!千歳ちとせさんを悲しませる奴は、たとえ、よんたんと言えども許せないんだぜ!さあさあ、さあ!よんたん、死ぬ前に辞世の句でも詠むんだぜ!」


「ちょっと待ちいや!わいが、昔の彼女のことを想い出したのは悪いと想うんやで?でも、慶次けいじくんのこぶしで制裁を受けるのは勘弁なんや!」


「うーるーせー!つーべーこーべー、いーわーずーに、だーまってー、くーらーいーやーがーれー!」


あかん!【瀕すれば鈍する(うさぎとかめ)】が発動してしもうたわ!慶次けいじくん、わいを殺す気で殴ってきたんやで!このままやと、わい、死んでしまうんやで?何か、慶次けいじくんのこぶしを回避する、いや、待つんや!これは回避すれば、わいにこぶしが当たるまで、延々、殴られるんや!回避じゃなくて、殴られても死なないようにせなならんわ!


そうや!また額で受ければいいんや!慶次けいじくんの腕が伸びきって、その威力が拳に全て乗り切る前に喰らうんや!


わいはゆっくりとした動きやけど、慶次けいじくんのこぶしに向かって、額をぶつけるように身体を動かしていくんやで!


よっしゃ、ばっちりや!わいの軌道予測は完璧や!ここまでこぶしが接近すると、いくら慶次けいじくんでも腹めがけては軌道は変えれんやろ!


って?あれ?なんかおかしくないか?慶次けいじくん、わいの額にこぶしが当たりそうになったところで、こぶしを止めたんやで?はっ!まさかこれは、慶次けいじくんの罠かいな!あかん!額をさらけ出したのは大失敗やったやんか!


「すまねえな。よんたん。よんたんがまた、額で受けるのは予想できたんだぜ。だから、俺様は考えたんだぜ。でこぴんだぜ!」


ばっちこーーーーーーーん!


ふわあああ。世界が回って視えるんやで。わいはあほやったで?慶次けいじくんは殺気をはらまして、こぶしを突きだしたのはええけど、それはフェイクだったんやで?真の目的は、わいにでこぴんで制裁することやったんやで?


よんさまー!よんさまー!ちょっと、慶次けいじくん、いくら一発、ぶん殴ってくれとは頼んだけど、殺せとは言ってないっしー!手加減するっしー!」


「ちょっと待ってくれよ、千歳ちとせさん。俺は殺すつもりはなかったから、でこぴんですませたんだぜ。ほら、よんたんは眼をまわしちゃいるが、死んではないんだぜ?早とちりは困るんだぜ?」


「ああ。世界が回るんや。まるで千歳ちとせちゃんとイチャイチャずっこんばっこんを一晩で3連発したときみたいやで?わい、このまま天国に逝ってしまいそうやでえええ」


「だいじょうぶみたいっしーね。良かったっしー。でも、よんたんはすごいっしーね?まるで、慶次けいじくんに殴られるのが額だってわかっているような動きを見せていたんだっしー」


「いや。それは違うんだぜ。俺様は左頬をぶん殴ろうとしたんだぜ。でも、よんたんは、その俺様のこぶしの軌道に合わせて、額をこちらに向けてきたんだぜ。いやあ、よんたんは、すごいんだぜ」


「まったく、驚かせられるんだポッポー。よんが不完全ながら、神力を使うとは想わなかったんだポッポー。どうやら、よんは自分の命が危険にさらされた時のみ、真なる力の一部を使えるようなのだポッポー。今までは勘が良いだけだと想っていたが、頭の上に乗っていたから、その考えは間違いだと、やっと気づいたんだポッポー」


「鳩のまるちゃんがまた変な事をほざきはじめたんやでえええ。ああ、額がずきずきするんやでえええ。まるちゃんを焼き鳥にして、塩をまぶして食べないと、これは回復しないんやでえ?」


「おう、河童。よんたんの額にその頭の皿から湧き出る妙薬を塗ってやれだぜ。どうやら、よんたんはでこぴんのあまりの痛さに錯乱しているんだぜ?」


「ケケッ。慶次けいじは河童使いが荒いんだケケッ。まあ、一蓮托生となった身で、いきなり死なれても困るんだケケッ。ちょっと、治療してやるから、よん。くねくねと【姫】のふとももの上で動くのはやめるんだケケッ」


「はわわわ。千歳ちとせちゃんの太ももがすべすべしてて気持ちいいんやで?しかも、千歳ちとせちゃんは良い匂いがするんやで?わい、このまま、眠りにつきたいんやで?」

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