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ー旅立ちの章49- なんでもかんでも他人様の文化と宗教を受け入れるのはあかんのやで?

「ねずみのこっしろーと言ったか、貴様フシュルルルー。それはきっと【姫】の力が貴様の食欲を伝播させている可能性があるのだフシュルルルー」


「【姫】ってなんや?長寿さまくん。またわけのわからん単語を出してくるのはやめてくれやで?」


「黙ってきいてやれだポッポー。よんはツッコミ担当と言えども、ちょっとは抑えるんだポッポー」


「でも、よんさまがツッコミを入れたい気持ちはわかるんだっしー。なんで僕はきみたちに【姫】って呼ばれるんっしー?僕はちょっと変わったお父さんとお母さんの間に産まれただけっしーよ?」


「フシュルルルー。貴様は千歳ちとせと言う名であったな?フシュルルルー」


「そうっしーよ?それがどうかしたのかっしー?偽名だって疑っているっしー?」


「貴様の両親、いや、母親の血筋に関わる話だフシュルルルー。代々、お前の母親の血筋で、長女は【姫】と呼ばれてきたのだフシュルルルー。貴様の母親の苗字は【寿ことぶき】と名乗っていなかったか?フシュルルルー」


「確か、そうっしー。でも、その苗字は普段は誰にも言ってはいけないって言われているっしー。なんだか、ひとに知られると厄介なことになるって、お母さんが言っていたっしー」


「本来なら隠さなくても良い苗字だったフシュルルルー。お前の母方の一族は【寿ことぶき】の名の通り、繁栄を約束する名だったのだフシュルルルー」


「なんだっしー。僕、もしかして、忌み嫌われているのかと想っていたっしー。安心したっしー。よんさま、今度から僕のことは、寿千歳ことぶきちとせと呼んでほしいっしー。あっ、でも、今度、結婚するから、楮千歳こうぞちとせに変わっちゃうっしー。えへへっ」


 なんか、わいと同じ苗字になってくれるって考えただけで、わいは興奮してしまうんやで?夫婦別姓を唱えるやつが最近、ちまたに居るけど、あれ、わかってて言っているんかいな?


よんたん、夫婦別姓ってなんだぜ?そんなの聞いたことがないんだぜ。夫婦になる以上は、普通、嫁いだ先の苗字を名乗るもんだぜ?」


「まあ、なんやら、新興宗教のやつらが、これからは大陸の文化を習って、夫婦別姓、要は旦那と嫁で苗字を合わせる必要なんてないんや。あなたはそのままでいつまでもいるべきや!って唱えてるんやな?」


「ふーーーん。けったいな新興宗教もあったもんだぜ。しかも、大陸からと言われれば、まるで新しい文化に染まれて、気分が良くなっちまうもんだぜ」


「そうや、まさにそこが問題や。ひのものと国は他の国からの文化をありがたやあ!って何も考えずに受け入れるもんなんや。まあ、デウスの教えとかは、南蛮のひとらが流行らせようとしているんやけど、そのまま受け入れるんは間違いなんや」


「そうだねっしー。デウスの教えを信じるひとたちは、神さまはデウスひとりだから、神を名乗る悪魔を許すなって言って、神社仏閣に喧嘩を売っているっしー。今に、いくさに発展するんじゃないかって、恐ろしく感じてしまうっしー」


「まあ、デウスの教えを広める宣教師たちを受け入れれば、南蛮のやつらとの商売で口を利いてくれるってことで、信長さまも尾張おわりでの布教を許しちゃいるが、正直、あいつらはいけすかないんだぜ。この前、清州きよすの町で宣教師に出くわして、あまりにもしつこいから殴っちまったんだぜ!」


 宣教師くんもかわいそうやで?よりにもよって、慶次けいじくんに改宗をせまるなんてな。慶次けいじくんは感性は狂ってはいるけど、生意気な坊さんを殴ったり、生意気な神主さんを池にぶん投げたりしているんや。そんな慶次けいじくんでも、祭りや正月などの神社仏閣がやっている行事には文句は言わへんしな。それどころか、最近は熱田神宮で熱心に何やら願い事をしているみたいやしなあ。


「話が横道にそれてしまったんやで?ひのもとの国以外から、文化や宗教を受け入れるのはまあいいんやで?でも、そのまま受け取ることはしてはいかんってわけや。特に夫婦別姓は文化と言うより、もう宗教や」


「んー?よんさま、言っていることがよくわからないっしー。夫婦別姓が変だってことはわかるっしーけど、宗教とまでは言わなくて良いんじゃないっしー?」


「いや、あれは宗教や。儒教と言うもんを知っているかいな?あれは徳って言うもんを第一に考えているやけど、徳って一体なんなんや?って話なんや」


「ん?徳?坊さんが徳を積むとかあれなのか?だぜ」


「ちゃうねん。儒教の【徳】には形がないんや。しかも何をさしているかもさっぱりなんや。仏教の言う【徳】とはまた別ものなんや。だから、儒教は宗教やっちゅう話や。しかも、そんなわけのわからんもん信じてるから、大陸の人間は女性を大事にする気がないんや。だから、夫婦別姓がありがたいなんて想ってるわけなんや。そんなもん、そのまま額面通りにすばらしい言って、受け入れたらあかんで!」


「おお。よんたんが怒っているんだぜ」


「まあ、僕はもしよんさまのお嫁さんになって、自分と同じ苗字を使うなって言われたら、その時点で、よんさまは僕を家族だと認めてくれないんだなあと想ってしまうっしー。幸い、よんさまからはこうぞちとせになってほしいって言われているから、そんな心配は杞憂なんだけどっしー」

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