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ー旅立ちの章45- とりあえず、皆、仲良しなんやで?

「ケケッ。美味いきゅうりを食べさせていただき、恐悦至極だケケッ」


「河童くん、よかったねっしー。今度、また、農家のひとからわけてもらうっしー」


「【姫】さまは優しいお方だケケッ。【姫】さまの優しさに免じて、この男を始末するのはやめておくんだケケッ」


「やったっしー!さすが河童くんは話がわかる男っしー。(よん)さま、良かったねっしー。これで問題がひとつクリアされたっしー」


 なんやろな?わいはただ、河童くんが太くて長いきゅうりを恍惚の顔をしながら喰っているのをまざまざと見せつけられただけなんやけどな?


「まあ、一難去ってまた一難って言いますからなあ?いきなり、ドカッ!とうちの戸をぶち破って、何かがやってくるかもしれへんなあ?」


「さすがにこんな時間にやってくるやつはいないはずだぜ。で?これから、どうするんだ?(よん)たん?」


「まあ、とりあえず、これ以上の襲撃はなさそうやから、酒とご飯を楽しもうやないか?どうや?長寿さまくんと、ねずみのこっしろーくん、それに河童くんも、食べていくかいな?慶次(けいじ)くんが取ってきた熊肉も大量に余っているさかいなあ」


「ちょっと待つんだポッポー!拙者にも何かを喰わせるんだポッポー!」


 ああ、そういえば、鳩のまるちゃんのことをすっかり忘れていたんやで?


 それから、わいらは、長寿さまくんのエキスが入った(まむし)酒を楽しみつつ、熊肉を切り取っては鉄製の網の上に乗せて、焼きまくったんやで?


「うほおおお!この熊肉、すっごい脂がのってますなあ!こりゃあ、煙がすごいことになっているんやで?」


「あーははっ!やはり酒盛りは、大人数で楽しんだほうが良いんだぜ!そら、そろそろ、俺様の裸踊りとしゃれこむんだぜ!」


慶次(けいじ)くん。ふんどしはしっかり締めておいてほしいっしー。慶次(けいじ)くんは裸踊りを始めると、すぐにすっぽんぽんになろうとする悪いくせがあるっしー」


「いやあ、すまねえすまねえ。俺様の貧相ないちもつなんざ、見てても面白くもないんもんだぜ。しかし、舞いながら、いちもつがぶらぶらするのは、女性にはわからない快感があるんだぜ!」


 慶次(けいじ)くんの立派ないちもつを見せつけられたら、わいの男としての矜持がぽきりと音を立てて崩れ落ちそうやから、やめてほしいんやで?


「奥方さまの作った、この大根の菜ごはんが、とっても美味しいでチュウ!できることなら、毎晩でも食べさせてほしいッチュウ!」


「こっしろーくんは食いしん坊なんだっしー。でも、食べ過ぎは注意っしー?鳩のまるちゃんに食べられてしまうっしーよ?」


「それは怖いんだッチュウ。僕は悪いねずみじゃないんだッチュウ。食べないでほしいッチュウ!」


「ポッポー。鳩は猛禽類ではないんだポッポー。基本的に豆と(あわ)(ひえ)を食べるんだポッポー。どこかの蛇と一緒にしないでほしいんだポッポー」


「フシュルルルー。マルよ、貴様、喧嘩を売っているのか?フシュルルルー。ワシもこんなやせ細った、ねずみを食べる気などないんだフシュルルルー。ワシの好物はカエルなんだフシュルルルー。まあ、たまには動物の肉も食べるのだがな?フシュルルルー」


「まあまあ、長寿さま、それにまるちゃん、喧嘩はやめるんだぜ。今夜は楽しく飲むんだぜ?あっ、でも、俺様はいつでも喧嘩なら買うんだぜ?いつでも売ってきてくれて良いんだぜ?」


「フシュルルルー。マルよ、ワシが言い過ぎたのだフシュルルルー。謝るのだフシュルルルー。この男から危険な香りしかしないんだフシュルルルー」


「ケケッ。長寿さま、その大男には気をつけたほうが良いんだケケッ。うちの縄張りを守る熊公がぶちのめされたことがあるんだケケッ」


「な、なんと、あの誰もが恐れる熊公をぶちのめしたと言うのか?フシュルルルー。力だけなら、カラス天狗を超えると言われている熊公なのだぞ?フシュルルルー」


「まあ、その時は、この大男も怪我を負わされていたんだケケッ。自慢の退魔の槍もポッキリ折れてしまったんだけどケケッ」


「た、退魔の槍!?なんで、そんなものをただの人間が持っているんだフシュルルルー。この大男は一体、何者なのだ?フシュルルルー!」


「ん?さっきから、大男、大男って言ってるのは、俺様のことなのかだぜ?俺様は尾張おわりいち、いや、将来、ひのもとの国1番の傾奇者になる予定の前田慶次まえだけいじさまだぜ!気軽に慶次けいじさまと呼んでくれなんだぜ!」


 どこが、気軽にさまづけなんやとツッコミを入れそうになってしまうんやで?


慶次けいじくんの槍が【退魔の槍】って、どういうことなんや?わい、そっちのほうが気になりますわ」


「ポッポー。神ははがねで出来た武器を嫌うものが居るんだポッポー。慶次けいじの槍はまでものがはがねなんだポッポー。しかも、それを血でけがし続けているんだポッポー。それゆえに、退魔、いや、退神の槍へと昇華しているんだポッポー」

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