ー旅立ちの章43- ひのもとの国は言挙げを慎む国なんやで?
まあ、そんな不気味な魚がいたら、わい、怖くて、速攻、川に投げ捨てるんやけどな?
「まあ、四たんの言うとおりなんだぜ。俺様もさすがに驚いて、川に投げ捨ててしまったんだぜ。いやあ、神さまの使いと知っていれば、もう少し丁寧に川に投げ捨てておけばよかったぜ!」
いや、慶次くん、それはどっちも投げ捨てているんやで?丁寧もくそもあらへんで?
「罰当たりな奴らなんだポッポー。ちなみに拙者も大神の使徒なんだポッポー。焼き鳥にしようとせずに、敬えだポッポー」
まーた、鳩のまるちゃんがとち狂ったことを言い出したんやで。ほんま、このクソ鳥、羽を毟って、丸焼きにして、塩をまぶして、喰ってやりたいんやで?
「四さま、まるちゃんをいじめるのはやめるっしー。なんで、他の動物には優しいのに、鳩にだけはきびしいんだっしー?」
「それは、わいの頭の上でウンコをプリプリするからや。大体、なんで、わいの頭の上でプリプリするんや?その辺の道端でやってくれやで?」
「それはさっき説明したんだポッポー。四の力を抑えるためなんだポッポー」
大体、わいの力ってなんなのや?そこをちゃんと説明せんかいな!
「フシュルルルー。言葉というものは、それ自体に力を持っているのだフシュルルルー。だから、マルはそれを口にすることをしたくないのだフシュルルルー」
おっ。長寿さまくんが何かようわからんことを言いだしたんやで?
「貴様たちニンゲンは、いや、ニンゲンに限らず、このひのもとの国では、言挙げする際には充分に気をつけねばならないんだフシュルルルー」
言挙げってのは言葉を口にするってことやんか?なんや?わいは口うるさいからしゃべるなって言いたいんかいな?
「ご主人さま、そうじゃないッチュウ。言葉は【祝い】にも【呪い】にもなるってことでッチュウ。だから、言う内容には充分、気をつけなきゃならないと言うことだッチュウ」
「そりゃあ、あんた死ぬわよ!って、辻占いのおばはんに言われたら、ぶん殴りそうになりますわなあ?あれ、なんなんや?わいにはよ死ねって言いたいんかな?」
「それは【呪い】の言葉なんだポッポー。そのおばはんは、四に死んでほしいと願っているんだポッポー。早いうちに始末しなければならないんだポッポー!」
「四たんに【呪い】をかけたやつは一体、誰なんだぜ!そいつをすまきにして、木曽川に流してやるんだぜ!」
「慶次くん、心配せんでもええんやで?【神の家】の関係者やったから、お仲間さんたちと同じく、ぼこぼこにしといたんやで?まったく、信者さんたちの銭で肥え太っていたから、えらい良い感じに火がついたんやで?」
「四さまは世の中から、悪人をひとり、やっつけたんだっしー。僕は四さまを誇らしく感じるっしー」
そない褒めんでも良いんやで?千歳ちゃん。しっかし、【神の家】は、あれで滅ぼしたつもりやったけど、まだ残党が残っているって言う話やったなあ?近いうちに決着をつけなならんで?
「おそろしいッチュウ。ご主人さまは【呪い】が怖くないんでッチュウ?」
「うん?そら、怖いんやで?でも、こんな戦続きの時代に、殺す殺されるなんて当たり前なんや。ちょっと呪われたくらいで、どないやっちゅうねんって話やんか?」
「でも、僕は呪われたくはないっしー。四さま。僕に【呪い】をかけてくるひとがいたら、全部、とっちめてほしいっしー」
「わいにまかせとき?千歳ちゃんを呪うような輩がいたら、この世から消えてもらうんやで?わいが全部、土の下に埋めたるさかい、心配せんでも良いんやで?」
「フシュルルルー。【呪い】をかけてくるやつらは、川に流すか、しっかり火で焼くことをお勧めするんだフシュルルルー。【禊ぎ】と言う言葉を知っているのか?フシュルルルー」
「あんまり詳しくはわからへんけど、神社の神主くんたちがやっている、禊ぎのことであっているんかいな?」
「まあ、間違ってはいないんだフシュルルルー。なるべく清い水で自分の身体を洗い、そして、死体は火できれいに焼くのが良いのだフシュルルルー。あと塩を玄関にまくのも【禊ぎ】なのだフシュルルルー」
ふーん。塩をまくのも禊ぎやな、そう言われれば。
「【呪い】も【死体】も【穢れ】なのだフシュルルルー。大神は【穢れ】を嫌うのだフシュルルルー。そして、ひのもとの国のニンゲンもそれを習い、【穢れ】を忌み嫌うようになったのだフシュルルルー」
「じゃあ、わいの頭にウンコをプリプリさせている、まるちゃんは穢れそのものちゃいますか?」
「失敬なやつだポッポー!確かにウンコは【穢れ】だポッポー!」
そこは否定せんのかいな!
「まあ、よく聞くのだポッポー。ウンコが【穢れ】ゆえに、他の大神たちから、四の力を隠すのにうってつけだと言うことなんだポッポー」




