ー旅立ちの章39- 鳩のまるちゃんとの出会いを語るんやで?
「フシュルルルー。貴様らは色々と何を言っているんだフシュルルルー。それよりも、マル。貴様は四をかくまうのはやめるんだフシュルルルー」
「それはお断りなんだポッポー!飢えて死にそうなところを助けてくれたのは、四だポッポー!だから、四の命を守るのは拙者なんだポッポー!」
なんか、鳩のまるちゃんがわいの命を守るとか言い出しているんやで?そんな小さいなりで、どうやって、わいを守る気なんかいな?
「あれは寒い冬の朝だったポッポー。拙者が冬を越すための食料も貯えずに秋を謳歌していたポッポー。まあ、拙者は愛くるしい姿だから、冬にはニンゲンたちが餌をくれるとタカをくくっていたんだポッポー」
なんか、ダメダメなことを言っている鳩のまるちゃんなんやで?やっぱり、鳩の脳みそは人間さまに比べたら、ちっさいからなあ?しょーもないことしか考えられんのやろうなあ?
「しかし、その冬はいつもとは違っていたんだポッポー。拙者の愛くるしい仕草を見ても、誰も餌をくれなかったんだポッポー。それどころか、石を投げられたり、あろうことか、拙者を捕まえて喰おうとしやがったんだポッポー」
せやなあ?鳩のまるちゃんとの出会いはあの忌々しい土地での出会いやもんなあ?そりゃあ、あそこの土地で何かをもらおうってのは無理ちゃうかなあ?
「なあ、四たん?まるちゃんはなんで、餌をもらえないどころか、喰われそうになってるんだぜ?鳩は、そりゃあ、そこそこは美味しいかもしれないが、喰うならスズメだろう?だぜ」
「ああ、慶次くんには言ってなかったんやな。わいとまるちゃんは、三河の地で出会ったんや。わいが針の行商人で三河の岡崎に行っていた時期があったんやわ。その時に、鳩のまるちゃんが餓死しそうだったところを、わいが餌付けしたって言うわけや」
「四さまが言うのを聞く限りでは、三河の土地はこの世の地獄だと知っているんだっしー。今川のお殿さまに、年貢で、冬を越すための食べ物すら取られるって聞いたっしー。鳩のまるちゃんは、そこの住民に殺されて、焼かれて、塩をまぶされて喰われなかったのが奇跡的だったと、四さまから聞いているんだっしー」
「あちゃあ!なんて、ひどい土地なんだぜ、三河は。しっかし、なんで今川の殿さまは、三河の民をいじめているんだぜ?東海1の弓取りとまで言われている男だぜ?義元は。なんで、三河をまともに治める気がないんだぜ?」
「そんなのわいの知るところではないんやで?でも、あの土地は慶次くんが想像している以上の地獄や。ひとがひとを喰い、親が子を喰うんや。まさに、この世の地獄やで。わいは、あの土地には二度と近寄りたくない気持ちやで?」
「そんな地獄で四に出会えたのはまさに僥倖だったポッポー。だから、あの時、誓ったんだポッポー。四に危険が及ぶ時は、拙者が守るとポッポー。例え、四が特別な人間でなくても、拙者は四のために命を使い切ると決めたんだポッポー」
「フシュルルルー。鳩にしておくにはもったいないほどの忠義なんだフシュルルルー。四。鳩のマルを救ってくれたことを感謝するんだフシュルルルー」
「人間界の言葉には【窮鳥懐に入れば猟師も殺さず】ってのがあるんや。別にわいは鳩のまるちゃんが愛おしくて、救ったわけちゃうで?たまたま、餓死しそうな鳩がおったから、助けてやっただけやで?」
「あーははっ!何を照れ隠しを言っているんだぜ!四たんは。四たんは動物に好かれているのは、四たんが動物好きなのを、動物たちが察知しているからだぜ!良い狩人は動物に好かれるんだぜ!四たんは誇って良いんだぜ?」
「四さまは本当にお人よしなんだっしー。困っているひとが居たら、放っておけないっしー。いつ、騙されてしまうか、いつも心配だけど、そんな心優しい四さまを僕は大好きなんだっしー」
や、やめてくれやで?わい、そない褒められても、照れてしまうんやで?ちょっと、そんな皆でニヤニヤしながら、わいを見つめるのはやめてくれへんか?わい、辱しめにあって、いちもつがビクンッ!って反応してしまうんやで?
「フシュルルルー。興が冷めたのだフシュルルルー。今日のところは、四の命、奪わずにしておくんだフシュルルルー」
「あれ?今日のところは、なんかいな?できるなら、この先ずっと、わいが寿命が尽きて死ぬまで放っておいてほしいところやで?」
「フシュルルルー。それは約束しかねるんだフシュルルルー。貴様は神に仇なすモノなんだフシュルルルー。ワシが手を下さずとも、きっと他の誰かがお前の命を狙うんだフシュルルルー」
なーんや。結局、長寿さまくんが、わいの命を狙う気は無くしても、他のモノが狙ってくるんかいな。それじゃあ、根本的な解決にならへんなあ?どうにかして、わいの命を狙われんようにせんとあかんなあ?
でも、一体、どうしたらええんや?わいが、どうにかできる問題なんかなあ?




