ー旅立ちの章32- なんや?鳩のまるちゃんの声が聞こえるようになってしまったんやで!
わい、どうしたらええんや?河童くんには命を狙われているし、さらには【神の家】なんて言う怪しげな新興宗教団体にまで狙わていたことが判明したんやで!
「わい。どないしよ?とりあえず、この世から【神の家】の奴らは全員、あの世に逝ってもらうことは確定やけど、河童くんみたいな得体のしれんもんからは、どうやって身を守ればええんや?それに、下手をすると、千歳ちゃんも危険な眼にあうかもなんやで?」
わいは混乱の極みやったんや。【神の家】の奴らは見つけたら、その場で引きずり倒して、マウントポジションからの鉄拳制裁しといたるわ!って想ってもうたんや。でも、河童くんは、さっき、慶次くんが言っていた通りやと、あの世に送るのは無理そうや。
あああああ。わい、このまま、どこかで、わいそっくりな人間を探し出してきて、殺して、木曽川に流して、そいつの名を奪って、別の人間として産まれかわろうかいな?
「四たん。そんなことをしても、河童たちからは逃げられないんだぜ。こいつらは四たんの外見で判断しているわけではないんだぜ」
「なんやと?じゃあ、何で判断するんや?わい、鳩のまるちゃんから、よく頭の上でウンコをぷりぷりされているさかい、それの匂いでバレてしまうんかいな?」
「失敬な奴だポッポー。お前に害が及ばないように拙者が守ってきたと言うのに、本当に失礼な奴だポッポー!プリプリッ」
「おい、このくそ鳥!また、わいの頭の上でウンコしやがってからに!って、なんで鳩がしゃべってまんの!あんた、変なもんでも食べて、ついに狂ってしまったんかいな!」
「何を慌てているんだポッポー。って、なんで拙者の声が聞こえているんだポッポー!お前、変なモノを食べて、ついに狂ってしまったんだポッポー!」
「おいおいおい。俺様にも何で鳩の声が聞こえてるんだぜ?俺様、何か変なもんでも食べたのか?だぜ」
「僕にも鳩のまるちゃんの声が聞こえるんでっしー。一体、どういうことでっしー?四さま、何か僕にいやらしいことをするために、変なモノでも食べさせたっしー?」
ちゃうちゃうちゃう。わい、千歳ちゃんにいやらしいことをしたいのはやまやまやけど、誓って、怪しい薬を水に混ぜて飲ませたりなんか、せーへんで?
「おかしいんだポッポー。確かに四には資格が有ると言っても、能力が目覚めるには時間がまだまだかかるはずだったポッポー。何故に、こんなことになってしまったんだポッポー?」
資格がある?能力が目覚める?何の話をしているんや?それよりも、なんで、わいだけやなくて、慶次くんにも千歳ちゃんにも聞こえているんや?
ここは王道展開的に考えても、鳩のまるちゃんの声は、飼い主のわいにしか聞こえんって言う設定のほうがおもしろいんちゃいますの?
「まあ、ええわ。百歩譲って、まるちゃんの声が聞こえるのはしょうがないってことにしときましょうか。慶次くん、千歳ちゃん。理由はよくわからんけど、とりあえず、鳩のまるちゃんの声が聞こえることは他の皆には言わん事にしときまっせ?」
「えっ?なんでなんだぜ。鳩のまるちゃんと会話できるなんて、こんなのいくらでも金のとり放題になるんだぜ?鳩のまるちゃんと口裏合わせをしとけば、大道芸人として遊んで暮らせるようになるくらいの金が手にはいるんだぜ?」
「そうだっしー。それに、鳩のまるちゃんを使えば、色々と世間話を拾ってきてもらって、それで情報収集もできるっしー。隣の夫婦がどんなイチャイチャをしているか、つぶさに報告してもらえるっしー!」
「慶次くん?簡単に金を稼ごうとするのはやめておき?それは、博打打ちがドツボにはまる典型的なパターンや。儲かると想ってることはすでに誰かがやったあとなんやな?あと、千歳ちゃん。千歳ちゃんのアイデアはナイスやで?わいも、お隣さんが毎晩、どんなイチャイチャをしているか、知りたかったんや!」
「おい、お前ら、拙者にのぞき見なんぞさせるんじゃないんだポッポー!拙者は人間同士の絡み合いを見ても楽しくもなんともないんだポッポー!」
うーん。怒るとこはそこなんかいな?慶次くんの言っていることを怒るほうが先決やと想うんやけどな?
「まあ、ええわ。とにかく、わいらが鳩のまるちゃんと会話ができるようになったのは他言無用なんやで?言わんでもわかってると想うけど、わいら、ついに頭が狂ってしもうたんかと、医者に連れていかれてしまうからな?」
「まあ、それが妥当なとこなんだぜ。しっかし、なんでまた鳩野郎の声なんか聞こえるようになったんだぜ?もしかして、知らず知らずに神の肉体を口にでもしてたのか?だぜ」
「神の肉体を口にするやて?慶次くん、さっきも言ってましたけど、神の身体の一部を食べると、何かが起きるかわからないって言ってたのは、例えば、鳩のまるちゃんの声が聞こえるようになるってことかいな?」
「まあ、そういうことも起きるかも知れないってことなんだぜ。でも、おかしいんだぜ。一体、俺様たちはいつ、どこで、何の神の肉体を口にすることになったんだぜ?」




