ー旅立ちの章31- 【神の家】に狙わているんやで!
「四たん、その【神の家】って何なんだぜ?」
「ああ、わいが針の行商人をやってたころの話なんやけど、そいつら、わいに可愛い彼女ができるとか、富くじが当たるとか、神の国に行けるとか言うて、幸運の壺とか言うのを1貫(=10万円)で売りつけてきたんや。わい、金が無かったから100文まで値切ったんやな?」
「1貫を100文まで値切るって相当な交渉上手なんだぜ。俺様、今度、四たんに傾奇専門店で根切り交渉をしてほしいんだぜ。あの店、品ぞろえは良いんだが、高値のせいで俺様の財布がいつもうすら寒いことになっちまうんだぜ」
「慶次くん。四さまに値引き交渉をさせないほうが良いっしー。四さまは店長が泣いて、塩をまかれるまで値切るから、黒い帳簿に名前が載ることになるんだっしー。それよりも、四さま、話の続きをするっしー」
なんやと!あの伝説と言われる【黒い帳簿】に名前を載せられてしまったんかいな!あかん。わい、その店は出入り禁止になっているはずなんやで。やっぱり、塩をまかれるまではやりすぎやったなあ?
まあ、ええわ。それより、今は【神の家】のことや!
「で、その幸運の壺を買ったはええんやけどな?その壺を買ったあと、目利きに頼んで鑑定してもらったんや。で、その結果は、ただのタン壺やったんやで?わい、腹が立って、そのタン壺を売りつけてきやがった【神の家】の奴らをぎったんぎったんのばったんばったんにしてやったんやで?」
「さすが、四たんだぜ!いやあ、俺様もその【神の家】との喧嘩に付き合いたかったんだぜ!」
うーん。慶次くんが参加したら不味いんちゃいまっか?怪しげな新興宗教団体やったけど、げっそり痩せて、皮と骨だけみたいな奴らやったさかい、慶次くんが、そいつらの首根っこを捕まえただけで、神の国へと旅立ってしまうんとちゃいまっか?
「四さま。買った幸運の壺は、どうなったんだっしー?ちゃんと、粉々にしたっしー?」
「うん?タン壺のことかいな?あんなもん、持ってたら逆に不幸になると想ったやさかい、鑑定を頼んだ目利きの奴に無料であげたんやで?それがどうかしたんかいな?」
「な、な、なんてことをしてるっしー!あれは幸運の壺じゃないっしーよ!」
「いや、だから、何をそんなに千歳ちゃんは怒ってるんや?幸運の壺やのうて、タン壺やろ?タン壺を後生大事に持っていたほうが良かったと言うんでっか?」
「あれは幸運の壺でもタン壺でもないっしー!蟲毒に使っていた呪いの壺っしーーー!」
蟲毒?あの毒虫を詰め込んで、呪いに使うって言われている噂のやつでっか?なんで、【神の家】の奴らはそんなもん、売りつけてきたんや?
「そもそも、四さまは【神の家】のことを勘違いしているっしー!あいつらは、人類救済を謳いつつも、邪魔になる人間を消すために、呪いの壺を配り歩いていたんだっしー!」
「ん?千歳ちゃん、何、言ってますんや?わいのどこをどう見たら、人類救済の邪魔になるような人間に見えるんや?わいは、あの時、一介の針の行商人やで?わいみたいな貧乏な行商人なんて、そこら中にどこでもいるもんやろ?」
わいが千歳ちゃんにそう尋ねたんやけど、千歳ちゃんは気が気でないみたいなんやで?
「四さまは、まるで事態の深刻さを理解してないんだっしー。あいつらは一度、狙った獲物は絶対に始末しようとするんだっしー。四さまは知らず知らずに命を狙われているんだっしー!」
えっ?まじかいな?でも、わい、そんなこと言われても、あからさまに命を狙われた経験は、この河童くんの件くらいやで?
「なあ、千歳ちゃん。何かの間違いやあらへんか?そもそも、奴らはぼろぼろの家ごと、ぶっ潰してやったんやで?まあ、何人かはその家の瓦礫に押しつぶされてもうたけどな?でも、わいの命をあからさまに狙ってきたのは、この河童くんだけやで?」
わいがそう千歳ちゃんに応えたら、意外な人物がその謎を解き明かす回答をしてくれたんやで?
「なるほどだぜ。だから、四たんの周りからはいつも殺気を感じることになっていたのかだぜ。最初は四たん自身が放っているのかと想っていたが、そうじゃなかったんだぜ」
「へっ?慶次くん、何を言っているんや?わいの周りから殺気を感じるって、どういうこっちゃ?」
「いやあ。俺様にもよくわからないんだぜ。何度か、その殺気を放ってる本人を捕まえて、聞きだそうとしてみたものの、皆、捕まえた瞬間に毒を飲んで、その場で絶命しやがるんだぜ。だから、そいつらの正体が何なのか、皆目見当もつかなかったが、これで納得がいったんだぜ」
な、なんやと?わいは知らず知らずにつけ回されていたんかいな!
「千歳さんの話と四たんの話をまとめると、そいつらは【神の家】の構成員に違いないんだぜ!」




