ー旅立ちの章16- わいの夢はひのもといちの侍なんやで!
「あーははっ!さすが親友の四たんだぜ!じゃあ、さっそく殴り合いを始めようかなんだぜ!」
「ちょっ、ちょっと待ってほしいんや!確かにわい、慶次くんをフルボッコにするとは宣言したんやけど、どう見ても、わいが慶次くんと殴り合ったら、死んでしまうやんか?」
「ほっほう。四さまは慶次くんを殴り殺せるのかっしー。さすが48の寝技と52の得意技を持っているだけはあるんだっしー」
千歳ちゃん?何を言っているんや?わい、さすがに慶次くんを殴り殺せる特技はないんやで?
「あーははっ!俺様を殴り殺せる男があのひと以外に居るとは思っていなかったんだぜ!」
えっ?どう言うことや?慶次くんを殴り殺せる男がこの世に存在するって言うんかいな?この野生動物の王と言っても過言ではないような慶次くんを素手で殺せるんかいな?
「んっ?四たん、何を不可思議な顔をしているんだぜ?世の中、広いんだぜ?俺より強い奴なんて、きっとゴロゴロしてるんだぜ?」
「慶次くんより怖いと思った男いないんやで?わいは30年近く生きてきたんやけど、腕っぷしだけの話ならば、慶次くんが1番やと想うんやで?」
「あーははっ!そう褒めるんじゃないんだぜ?でも、俺様より腕っぷしだけで上を行くのは尾張に2人もいるんだぜ?それなら、全国探せば、もっとゴロゴロ転がっているはずなんだぜ!」
まじかいな。尾張で2人ってことは、ひのもとの国は60国以上あるって聞いているんや。ってことは単純計算で120人以上いるってことかいな?こんなおっとろしいことはないんやで!わい、こんな修羅の国で果たして、千歳ちゃんとイチャイチャして、家族を増やして、孫に囲まれて静かな余生を送ることができるんでっかいな?
「四さま?そんな老後のことを考える前に、今、目の前の慶次くんをどうにかしないといけない気がするっしー?」
「そやったわ!わい、慶次くんをどうにかしてフルボッコにしないといけないんやったわ!千歳ちゃん、わいが死ぬ前に、わいの子供を孕んでくれやで!」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと何を言っているんだっしー!結婚もお付き合いもしていない四さまの子供を授かるなんて出来ないっしー!」
「そこは道理を曲げてほしいところなんやで?だって、考えてみたらわかることですやん?わいが慶次くんと殴り合ったら、確実にわいが死ぬんやで?だったら、わい、この世に産まれた証として、子供を残しておきたいわけなんや!」
「で、で、でも、結婚は後でいいかもしれないけれど、せめて正式にお付き合いしてからイチャイチャをしたいんだっしー。ぼ、僕、やっぱり、四さまをまだ受け入れることはできないんだっしー」
千歳ちゃんがすごく申し訳ない顔でそう言ってくるんやで?わい、ちょっと順番を間違えてしまったんやで?
「あーははっ!四たん、その想いを叶えたいなら、俺様を越えていくんだぜ?俺様如きを倒せずに、四たんはこれから先、ひのもとの国にゴロゴロいる、俺様より強い奴とはまともに戦うことすらできないんだぜ?」
せやなあ。慶次くんを倒せないようじゃ、わいのこれからのひのもといちの侍の道はお先真っ暗やもんなあ?って、ちゃうわ!わい、そんな夢なんて、これっぽちも持ってないわ!
「まあ、ええわ。とりあえず、千歳ちゃんをわいの嫁さんにするには慶次くんを倒さなならんのは本当のことなんや。千歳ちゃん、ちゃんと見ておいてくれやで?わいの一世一代の活躍を見てくれやで?」
「しょうがないっしー。じゃあ、四さまの墓石には【愛のために生きた武士、ここに眠る】と刻んでおくっしー」
「ん?千歳ちゃん、それ、どういうことだぜ?四たんは武士なのか?だぜ」
「うーん。武士ではないっしー。でも、信長さまに仕えて、兵士をやっているんだっしー。死んだら普通、2階級特進だっしー?だから、四さまは一番下から2個あがって、30人の足軽長になれるっしー」
「ああ?おいおい、信長さまの兵士なのかよ、四たん。これは参ったんだぜ。信長さまに自分ところの兵士との喧嘩は良いが殺すのはやめておきなさいと釘を刺されているんだぜ」
「な、なんやと?慶次くん、信長さまの家来なんか?じゃあ、このまま、慶次くんと殴り合いをしたら、結局、どっちにしろ喧嘩両成敗で、信長さまからお咎めを受けることになるでやんすか?」
信長さまは自分とこの兵士同士が喧嘩をすること自体は禁止してないんやけど、そのあとのお仕置きが待っていることが問題なんや。
そのお仕置きって言うのが信長さま直々のつっぱりをもらうことになっているんや。わい、前、喧嘩した奴らが信長さまの元へ連れていかれた後に、3日ほど訓練を強制的に休むことになったことを知っているんやで?
「まあ、しょうがないんだぜ。四たん。殺し合うまでの殴り合いは禁止なんだぜ。どちらかが死ぬ寸前までで、やめておくんだぜ」
うーん。慶次くんに死ぬほど殴られるかもしれへんけど、殺されないことはこれで確定したんかあ。わい、ちょっと、心が軽くなった気分なんやで?