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ー朝焼けの章26- ひゃはあああ!水練は本当に地獄なんやで!?

 しっかし、川で水練は二重にお得なんやで?まずひとつは泳ぎが上手くなることや。次に午前の訓練で汗だくになった身体を川の水できれいに洗い流せることやで?


「ふう。5月になったから、かなり水温が高くなってきてて助かりますなあ?おかげで、水練中に身体中が痺れて、溺れそうになることも少ないですからなあ?おっと、珍二郎くん!?何を溺れそうになっとるんや!?」


 あかん。珍二郎くんは泳ぎが不得意すぎるんやで?


「先輩ー。どうやったら、上手く泳げるようになるんっすか!?俺、このままだと、夏に控える遠泳で溺れる自分の姿しか想像できないっす!」


 珍二郎くんが川の水をゲホゲホッ!と吐きながら、涙眼でわいのことを見つめてくるんやで?やめてえや。わい、そんな涙眼で見つめられたら、いちもつが起きあがってしまうんやで?って、ちゃうわ!


「珍二郎くん。あんまり情けないことを言ってもらっちゃ困るんやで?実際の戦場では、鎧の一部を身につけて泳ぐことになるさかいな?ふんどし一丁で溺れてもらってちゃ、かなわんのやで?」


「そ、そんな殺生な話っす。俺、もしかして、いくさで死ぬんじゃなくて、川に溺れて死んでしまうんっすか!?せめて、槍でぶっ刺されて死んだほうがましっす!」


「まあ、槍でぶっ刺されても、刺され処が良ければ、死に至ることはあんまりないんやけどな?それよりも弓矢のほうが気をつけたほうがええで?あれはいとも簡単に身体を貫通してしまいますさかい。頭なんて運が悪ければ、兜を貫通してしまいますからなあ?」


「ひいいい!兜を貫通するってどういうことっすか!?そんな、危険ないくさ場にはでたくないっす!」


「落ち着くんや。珍二郎くん。あんたさんが今やっているのは死なんための訓練やんか?それに信長さまのもとから逃げ出して、どこに行くつもりなんや?あんたさん、商売できるほどの才能も元手もないやろが?」


「ううう。ごもっともすぎるっす。おれ、自分が情けないっす。信長さまのもとで働けば、お給金をもらえて、さらには嫁がもらえるとかそんな浮かれたことばかり考えていたっす。ううう」


 ふーーーむ。珍二郎くんが悩める若人になってしまったんやで?そりゃそうやろなあ。珍二郎くんはわいと10歳近く若いこともあって、人生に対して、それなりに夢や希望を持っているもんなあ?でも、現実とは厳しいもんやで。


 しかしやで?ここで厳しく指導するのは悪手やと、わいは想うんや。よく根性が足りん!とか言いながら、後輩の尻を蹴っ飛ばしている奴がおるけど、あれはあかんで。あいつのところの兵士は皆、逃げ出してしまってるやんか?


 しかも性質たちの悪いことに、近頃の若い奴らはなっとらん!俺様の時はこんなこんなだったんだぞ!としょうもないこと言いますからなあ。


 さて、そんなアホのことは忘れるんやで。今は珍二郎くんをどうやって励ますかやで。


「珍二郎くん。良いことを教えてやるんやで?わいも昔は珍二郎くんみたいな一兵卒やったんや。でもな?わいは今や足軽10人長やで。きみがもらってるお給金の1.5倍ももらっているんや。しかも、近々、愛する彼女と結婚するんやで?」


「じ、自慢話っすか!?ぼくにそんなことを自慢して、先輩に何か得があるんっすか!?」


「まあまあ。落ち着くんや。わいはこの地位に昇るまで、5年近くかかったんやで?でもな?珍二郎くんは幸運なんやで?信長さまはこれからもいくさを続けていくつもりなんや。それこそ、尾張おわりだけではとどまらないお方やで?ってことはやで?わいより才能がある珍二郎くんは出世し放題ってことやで!」


「そ、そんな。ぼくなんて、水練もまともにできないっすよ?そんなぼくが出世するわけがないんっすよ!」


「何を言っていますんや。わいだって、泳げるようになったのは、この水練を通じてに決まってますやん!普通は、誰も川で泳ぐ練習なんかせえへんわ!わいも筋金入りの金づちやったけど、訓練をまじめにこなしてきたから、今、泳げるようになったんやで!?」


「ほ、本当っすか?にわかには信じられないっす。先輩って何でもできる超人みたいじゃないっすか。ぼくは騙されないっすよ!」


 あかん。なかなかに難儀な性格をしているんやで?どうしたもんかなあ?


「あ、あの。よん殿。どうかしたん、ですか?部下の悩みを聞いているように視え、ますが?」


「おっ。ひでよしくん。良いところに来てくれましたなあ!こいつは珍二郎って言うんやけど、どうしても川で泳ぐのが苦手って嘆いていましてなあ?」


「ははあ。なるほどなの、です。多分、よん殿があまりに泳ぎが上手いせいで余計にしょげているん、ですね?珍二郎殿。よんさんはこう見えても、初めての水練の時は川底に沈んでしまったの、ですよ?」


「えええっ!?先輩が川底に沈んだんっすか!?絶対、嘘っすよね!?ぼくを騙そうとしているだけっすよね!?」


「いや、本当の話、ですよ?でも、よん殿はこんな金づちのままではいかんのやで!って、無理やりにやる気を叩きだして、川底から這い上がってきました、よね?」


「せやなあ。懐かしい話やで。わい、ほんまにまったくと言って良いほど泳げなかったもんなあ?それに比べたら、珍二郎くんはまだまだマシなほうなんやで?」

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