ー旅立ちの章12- 本能に生きるは人間に非ずやで!
「さて、四たん。話の腰を折ってしまってすまないんだぜ。さあさあ、喧嘩を再開してくれなんだぜ。なあに、死ぬ前には止めてやるんだぜ?」
うっわ。結局、わいと悪代官くんとの殴り合いはやらせる気なんかいな、この慶次くんは。ほんま、おっとろしいひとやで。わい、悪代官くんと手を組んで、慶次くんをしばきまわしたほうが命の危機から解放されるんとちゃうんか?
「む、無理なのじゃ。大の大人が10人、束になろうが、慶次さまに勝てるとは思わないほうがいいのじゃ。それこそ、20人ほどで槍を持って囲むくらいしか対抗するのは難しいなのじゃ」
悪代官くん、ためになる解説、ありがとうやで?くそっ!結局、どうにもならんちゅうことかいな。こうなりゃ、腹を括って、悪代官くんを亡き者にするしかないんやろかなあ?いや、待つんや。挽回策はあるはずや。ひとひとりが死ぬか死なぬかの瀬戸際なんや!
「な、なあ。慶次くん。ひとつ提案なんやけど、良いかいな?」
「ん?なんだいだぜ?ああ、得物を使いたいって言うのかだぜ。しかし、四たんは得物を使って相手の命を奪わないと言うほどの腕前があるとは想えないんだぜ?」
「そ、そうやな。でも、得物を使いたいわけやないんや。でも、ステゴロの喧嘩をするのは千歳ちゃんにとっては酷な話やんな?だから、少し、勝負方法を変えたいって、わいは言いたいわけなんや」
千歳ちゃん、わいのつまらん策略に利用して、ほんますまんやで?でも、千歳ちゃんだって、血なまぐさい闘いは見たくないやろ?
「うーん。四たんは女性に気配りができる良い男なんだぜ。ますます、俺様は四たんに惚れこみそうなんだぜ!」
いや、慶次くんに惚れこまれるのは、正直、嫌やで?もし、慶次くんと友達にでもなってみろや。慶次くんのことやから、絶対にトラブルを抱えるどころか、自分から、わいをトラブルに巻き込んでいくんやで?
「わいのようなしょうもない男に惚れこんでも何も出ないんやで?で、勝負方法のことなんやけど、やっぱり男と言うものはステゴロの勝負よりも、いちもつの立派さで勝負すべきやと想うんやで!」
わい、何を言っているんやろな?つい、自分の身かわいさに適当なことを言っているとは言え、こんな馬鹿な提案、通るわけがないんやで?
「あーははっ!確かに、一流の男って言うものは、いちもつもそれに合わせて一流ってなもんだぜ。さすがは四たんだぜ。ますます、俺様は四たんに惚れこんでしまうんだぜ!」
だから、わいに惚れこむのはよすんや!慶次くんからはお尻の貞操の危険よりも命の危険のほうがプンプン臭うんや!
「よっし。四たんの提案を受け入れるんだぜ。ステゴロは今回、お預けなんだぜ。千歳さん、すまないんだぜ。四たんと悪代官のいちもつを見比べてほしいんだぜ!」
「ちょっ、ちょっと待ってっしーーー!なんで、僕が四さまと悪代官のいちもつを見比べる必要があるんだっしーーー!」
「あーははっ。男の基準でいちもつを見比べても、でかいとか長いとか太いとかで決めてしまうんだぜ。でも、女子の視点では違うんだぜ。どっちがより子宝に恵まれそうなのかで判断するはずなんだぜ!」
こいつ、何を謎な理論で言っているんでやんすか?そりゃあ、男同士で見比べても、慶次くんの言う通り、でかさ、長さ、太さで見比べるもんやけど、それじゃあ、ダメだと言って、女性に鑑定させるのはどうかと想うんやで?
「で、でも、僕、出産経験は無いんだっしー。だから、どのいちもつが子宝に恵まれそうなのかはわからないっしー」
「そこは心配する必要はないんだぜ?いちもつを見れば、身体が勝手に反応するんもんなんだぜ?女性の勘って言うのは当たるもんなんだぜ。千歳ちゃんは身体からの反応で決めてくれて良いんだぜ?」
そうか、なるほどやで。わいも男のお尻を見ている時は、ぷりんとしているとか、良い匂いがしそうとかの前に、いちもつがピクンッ!となるほうが大事やもんな。慶次くんはアレやな?理性よりも本能を大事にするタイプなんやな?
本当、人間として、こいつ、クソやで!なんや、人間は考える葦と誰かが言っていたんやで。本能だけで動いているのは人間ちゃうで?慶次くんを人間としてカウントするのはやめておいたほうが良いんやで!
「わ、わかったんだしー。僕、自分の身体の反応に素直になるんだっしー。四さまと悪代官のいちもつの鑑定を任せるっしー!」
おおう。千歳ちゃんがやる気を出したんやで?ほっ、これで、死ぬ寸前まで殴り合うことは無くなったんやで。あとは、悪代官とのいちもつ比べで勝てば良いわけやな?
あれっ?今、想ったんやけど、このいちもつ勝負で負けたほうはどうなるんや?
「あーははっ!それはこの俺様が直々に、負けた方のいちもつをへし折ってやるんだぜ!なあに、1カ月ばかり、女性とイチャイチャできなくなるくらいに抑えてやるんだぜ。一生、使い物にならなくなったら、俺様もさすがに気が引けるんだぜ!」
ほっ。負けても一生、使い物にならなくされるわけではないんかいな。慶次くんは意外と優しい一面があるんやなあ?本当、こいつ、ドブにハマって木曽川に運ばれて、そのまま母なる海へと帰ってほしいもんやで!