表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/124

ー朝焼けの章23- 幸運の壺を買うと、今ならおまけに2個ついてくるんやで?

 はあああ。今度は長屋の前に小動物の死体を置いて行くようになりましたんかいな。ひでよしくんの提案でしばらく放置してみたら、嫌がらせもなくなるんじゃない、でしょうか?って言う助言を聞いて、早1カ月が経とうとしているんやけど、こりゃ、ほんま悪質なんやで。千歳(ちとせ)ちゃんが視てまう前に道の脇に埋めて、簡単な墓でも立てておくんやで?


 今は春も半ばを過ぎて、5月なんやで?連日、慶次(けいじ)くん、彦助(ひこすけ)くん、千歳(ちとせ)ちゃんと、わいの家で居候をしている鳩のまるちゃん、ねずみのこっしろーくん、河童くん、長寿さまくんとああでもないこうでもないと、作戦を練っているわけやけど、なかなか良い案が出ずに難儀しているんやで。


 尾張(おわり)以外の他国も春の苗付けはとっくに終わりを告げているんや。これから、(いくさ)の季節に入りますさかい、あんまり【神の家(ごっど・はうす)】を放置しているわけにもいかないんやけどなあ?


「おっす、(よん)さん。うかない顔をしているぶひいねえ?やはり部下持ちともなると、悩み事が増えるぶひい?」


「あっ、田中くん。訓練お疲れさまなんやで?そりゃあ、部下の中には使えん奴らもおるさかい、そいつらの指導をするのも難儀なんやで?でも、それよりも【神の家(ごっど・はうす)】のことについて悩んでいるんやで?」


「ああ、あの【神の家(ごっど・はうす)】ぶひいか。最近、清州(きよす)の街でたまに名前を聞くようになったぶひいねえ?なんでも幸運の壺を押し売りしているとかなんとかぶひい」


 田中くんの言う通り、わいらが手をこまねいているうちに、あいつらは仲間を増やすべく、幸運の壺の販売を再開したんやで?こうなると、厄介なことこの上ないんやで。しかも調子こきおってからに、今なら、なんと幸運の壺を1個買えば、おまけに2個ついてくるって宣伝文句やで?


 そりゃあ、いくら怪しげな壺と言えども、タン壺には充分に使えるんや。しかしやで?あいつら、あの壺を1個300文で売っているところがあくどいんや。


 そもそも、あの壺は確か、以前は1個50文から100文で売っていたはずなんやで?わいは、昔、騙されて1貫で買ってもうたんやけどな?それは置いておいて、2個おまけでついてくるって言っておいて、そもそも、3個分の値段で売っているんやで?


 ほんま、上手い商売なんやで!元々の値段を知らん奴らから視たら、えらいお買い得に想えますもんな?しかも【幸運の】なんていう、わけのわからん付加価値をつけているところがミソやんか?


 ニンゲン、不思議なことに、ようわからん効果があると言われても、もしかしたら本当にそうなるのかも?と期待して買ってしまうもんなんや。わいは、昔、針の行商人をやっていたから知っているんやけど、やっぱり、産地をごまかして売るのが一番良い方法やったなあ。


 南蛮語で言ったら、【ぶらんど】やったかな?包丁と言えばせきやんか?だから、針を売るときも、これはせきの職人さんたちが丹念に造ったもんやで?って言っていたもんやで?もちろん大嘘やで?産地偽装なんて当たり前やわ。売れたら勝ちやで!


 おっと、話がそれてしまったんやで?やっぱり針を売る時も何本かセットでいくらいくらにまけまっせ!って言うのは、好評やったんや。でもな?それでも、わいは10本まとめての値段を10本そのままで売るようなアコギなことはせんかったで?


 ああ、想い出したわ。ちょっとまた話がそれるんやけど、頭のおかしい客がおったんやで?その針は原価は1本2文なのに、それを1本20文で売るとは何事だ!そんなの詐欺だ!ってな。


 ほんま、頭が悪い客やったんやで。清州(きよす)から、あんたさんが住んでいるところに到達するまでに関所を何個通ると想っているんや。関所を通るたんびに関銭を取られるんやで?その運賃を含めて、さらにわいの利益まで勘定に乗せれば、原価の10倍に膨らんで当たり前やで。


 この話、嘘だろ?って想うひともおるかも知れへんけど、マジやで?卸しの商売ってのはモノを右から左へ流して、利ザヤを取る汚い商売やって想ってる奴なんて、意外と多いんや。


 でもな?その品物を運んだりしてるんは、卸し問屋やんか?その辺含みでさらに手間賃として、自分の懐に入れる分を考えて値段を決めていかなならんから、楽な商売ちゃうんやで?


 わい、こういうイチャモンをつけてくる奴らを原価至上主義者って呼んでいるんやけど、そもそもとして、あいつらは商売の仕組みを理解しようとせえへんのや。


 原価以外を値段に入れてはいけないとか、ほんまにとち狂ったことを平然と言う人種なんやで?てか、田んぼや畑で米や野菜を作っている農家の皆さんでも、原価でモノを売るわけがあるかいな!


 あと、こいつらのもっとひどいところが、美濃(みの)で米がいくらいくらなら、尾張(おわり)でも同じ値段のはずだ!って声高に言い出すことやで!


 こいつら、ほんと馬鹿やで!アホなんて生ぬるいもんちゃうわ!土地それぞれに米が作りやすいとか作りにくいとかあるんやで?それを考慮すれば、土地それぞれで原価も変わってくるんや。でもな?あいつらは自分の都合の良い最安値の土地の米の原価が基準なんや。それで売れとか言ってくる救いようのない馬鹿なんやで!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

cont_access.php?citi_cont_id=886148657&s

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ