ー朝焼けの章20- 河童くんの妙薬は滋養強壮にもってこいなんやで?
ほんげえええ!千歳ちゃんの右のこぶしが、わいの左ほほに弧を描くように突きこまれたんやでえええ?
「ふう。浮気の虫は早めに退治しておかなければいけないと、お母さんからはよく言われていたっしー。男は油断するとすぐに他の女性の胸をガン見するんだっしー」
「いたたたやで?千歳ちゃん。あんまり、強く顔面をなぐっちゃあかんのやで?こぶしの骨は簡単に折れてまうし、それに顔の骨は存外、硬いんや。変な角度でこぶしを突きこんだら、大事な千歳ちゃんのお手てがいかれてしまうんやで?」
「あーははっ!そこは四たんが上手く殴られてやれば良いんだぜ?千歳ちゃんは、やるなら蹴りにしておくのが無難なんだぜ?」
「そうだよな。でも、丈夫に想える脛の骨も意外と折れるときはポッキリ折れるんだよなあ。まあ、こぶしの骨と比べるのが間違っているかもしれないけどさ?」
「わかったんだっしー。これからは蹴り中心にしておくっしー」
でもな?わいが千歳ちゃんから蹴りを喰らうふりをして、その蹴りを受け止めて、あれえええ、お代官さまあああプレイに持ち込むことも可能なんやけどな?
「って、何の話をしてましたっけかいな?千歳ちゃんに顔を殴られて、記憶が飛んでしまいましたわ!」
「食事中に汚い話はやめようぜって話だよ、四さん」
ああ、彦助くん。せやったせやった。彦助くんに手料理を作ってくれる女性がおらへんって話やったわ!
「うっせえええ!俺だって、四さんのようにそこそこで良いから、顔がまともな女性にご飯を作ってほしいんだあああ!」
「おい、彦助くん?今、なんと言いましたんや?まるで、わいの神様と等しき千歳ちゃんをそこそこ程度と言いたいんでやんすか?」
「い、いや!?そんなつもりで言ったわけじゃないぞ!?千歳ちゃんは充分、可愛いと想うぞ!?」
「ほんまにほんまか?じゃあ、千歳ちゃんの可愛いところを100個言ってもらおうかいな?」
「四さま。僕のために怒ってくれるのは嬉しいっしーけど、そんなに彦助くんをいじめるのはやめておくっしー。だいたい、四さまが彦助くんに彼女が出来るなんて一生無理だって言ったのが悪いっしー」
あ、あれ?わい、彦助くんに一生、彼女ができないなんて言いましたっけ?
「売り言葉に買い言葉なんだぜ。喧嘩せずに仲良く夕飯を喰おうなんだぜ?」
わいは慶次くんにたしなめられたんやで?せやな。ご飯は美味しく食べなあきまへんなあ?
「千歳ちゃん。この菜っ葉の味噌汁が美味しいんやけど、味噌でも変えたんかいな?」
「ん?味噌はまだ台所に残っているのをそのまま使っただけっしーよ?そんなに味が変わってるっしー?」
千歳ちゃんがそう言うと、ずずずと味噌汁を飲むんやで?
「あれっしー?四さまの言う通り、確かに、少し味噌汁の味が変わっているっしー。僕、寝ぼけて何か混ぜたっしー?」
「ケケッ。実は、こっそり、味噌汁の鍋に、オイラの皿からにじみ出る液体を入れてみたんだケケッ!」
「ああ、それで、なんだかよくわからない苦みが味噌汁の味に混ざっているっちゅうことかいな。って、何してくれとんねん!河童くんの妙薬やから、害は無いと想うけど、いらんもん混ぜたらあかんでほんま!」
「ケケッ。良かれと想って混ぜたと言うのに、説教を喰らってしまったのだケケッ。オイラ、悲しい気持ちになってしまうんだケケッ」
「ちょっと、四さま。河童くんをいじめるのはやめるんだっしー。河童くんだって、良かれと想ってやってくれたことなんだっしー。なんで、四さまは、そんなに怒りん坊なんだっしー?」
「す、すまへんて。わいもここまで怒るつもりはなかったんやで?でも、あのくそ苦くてぬるっとして、おえっとなってまう河童くんの妙薬入りやと想うと、つい、怒鳴ってしまったんやで?河童くん、すまへんな?」
「ケケッ。わかってくれて嬉しいんだケケッ。ちなみに、滋養強壮の効果もあるから、夜の営みが今まで以上に楽しめることこの上ないんだケケッ!」
おお。まじかいな。わい、最近、酒を飲むと立ちが悪うなってしまってたもんなあ?
「河童くん、ありがとうな?わい、今夜も千歳ちゃんと熱烈に愛し合うから、その時は長屋の外に居てくれやで?」
「フシュルルルー。お熱いのは構わないが、別に外に出たところで、【姫】の喘ぎ声は外にダダ漏れだフシュルルルー。中に居ようがいまいが変わらない気がするのだフシュルルルー」
「まあ、そこは気分の問題なんだろうだぜ。ニンゲンさまのずっ魂ばっ魂を長寿さまや河童が視てても、興奮なんかしないし、ましてや興味すら無いってのにな?」
「ケケッ。慶次の言う通りなのだ。ニンゲンの身で考えれば、犬や猫の交尾を視て、ニンゲンが興奮するのかどうか?と言う話になるんだケケッ。まあ、視られていて気分の良い話でも無いってことだから、大人しく、外に出ているだけなのだケケッ!」