ー朝焼けの章18- 決闘、敵討ち、返り討ち。なんや?わいはいつのまにか大義を手に入れていたんやで?
こう言っておいて気付いたんやけど、もしかして、この前、わいの眼の前に現れた教祖様くんは真の教祖様くんじゃないってことやんか。これは由々しき問題なんやで?
「こりゃ、【神の家】に関して、もっと情報を集める必要性があるんやで。尾張支部を潰したところで根っこを潰さないことには、わいと千歳ちゃんの愛の巣を守り切ることはできないんやで!」
「そうだよなあ。ちなみに、【神の家】の本部ってどこにあるんだ?本部を真っ先に潰したほうが支部を潰すより効果的だよなあ?」
「しっかし、四たんが知らないことを俺様たちが知っているわけがないんだぜ?本部を探す前に支部をとっちめて、その教祖様とやらを締め上げたほうがよくないのか?だぜ」
せやなあ。悩むよりしばくのが易しって言うもんなあ?あれ?なんか間違っている気がするんやで?
「案ずるより産むが易しだろ。四さん、そこは。まったく、何が悩むよりしばくのが易しだよ。それじゃ単なるごろつきと変わらねえよ」
あかん。よりにもよって彦助くん如きにツッコミを喰らってしまったんやで?わいに天然のボケ体質が備わっているせいなんやで?
「まあ、どっちでもええやんか?意味が通じればそれでええんや。じゃあ、当初の予定通り、尾張支部をぶっ潰して、教祖様くんに洗いざらい吐いてもらうって方向で固めておきましょうか。しっかし、どうやって皆殺しにするかやなあ?火付けは重犯罪やしなあ?」
「殺しも充分に重犯罪のような気がするっしー。できるなら、誰も殺さずに済めば良いんだっしー」
そりゃ、誰も殺さなくて良いってのはええことや。でも、向こうはこちらを殺す気満々で来ているんやで?やられる前にやれは、女の取り合いでも当たり前に行われることなんや。穴に棒を先につっこんだほうが勝ちなのは昔から変わらへんのやで?
「俺様、良いことを想いついたんだぜ。ごちゃごちゃ考えずに【決闘状】を【神の家】に送れば良いんだぜ。【決闘】なら、いくら信長さまと言えども、口を挟んでくることは不可能なんだぜ!」
「ああ、なるほどやで。【決闘】なら、殺し合いでもお咎めはなしなんやで?慶次くん、良いところに気がついたんやで?でも、どうやって【決闘】に持ち込むんやで?」
「そこは四たんが考えてくれなんだぜ。俺様がそんなことまでわかるはずがないんだぜ?」
ああ、期待した、わいがアホやったんやで。そりゃ、慶次くんが考え付くのは殴り合いから殺し合いまでなんやで?ちょっと、慶次くんは考えの幅が狭すぎやしまへんか?女性で言うなら、前の穴から後ろの穴までの狭さやで?
「四さま。アホなことばっかり言ってたら、いい加減、慶次くんに締め上げてもらうっしーよ?」
「ちゃ、ちゃうねん。モノの例えをしただけなんやで?しっかし【決闘】に持ち込むにはどうすればええんやろな?」
「ん?【決闘】が大丈夫なら、【敵討ち】ってのもいけるんじゃねえの?」
おっ?彦助くんが馬鹿なりに面白そうなことを言ってくれたんやで?
「なるほど。【敵討ち】も悪くないんやで?彦助くんが殺されたら、わいらとしては堂々と【敵討ち】や【決闘】に持ち込めるんやで?ちょっと、彦助くん。【神の家】に乗り込んで、殺されてきてくれまへんか?」
「嫌だよ!なんで俺が殺されなきゃいけないんだよ!そこはどう考えても四さんだろ!」
こいつ、何を言ってますんや。この物語の主人公はわいやで?彦助くんは自分の物語が終わりを迎えているんやから、ここでは特別ゲストやんか?って、そないなことしたら、辻褄が合わなくなるから、面倒なことになるんやで?
って、わいは何を変なことを考えているんや?わいって、彦助くんの影響で知らぬ間に妄想界の住人になってしまったんかいな?
「俺様だと殺されにいくつもりが、【神の家】のやつらを全員、殺すことになりそうなんだぜ。うーーーん。上手く【決闘】や【敵討ち】に持っていける方法は無いのか?だぜ」
「僕、想ったしーけど、【神の家】が四さまを狙うのは、言わば、向こう側からしてみたら【敵討ち】っしーよね?それをこちらが利用してしまえば良いんじゃないっしー?」
「おおお!さすが愛しの千歳ちゃんやで!せやせや!元はと言えば、わいが勘違いで昔、【神の家】の尾張支部を潰してしまったことが発端やんか!あちらさんから視たら、【敵討ち】やんか。だから、わいらとしてはこれは向こう側が【敵討ち】にきたから、【返り討ち】にしたと宣言してしまえばいいわけなんや!」
「四さんの言う通りだな。これで、ひとを殺すことになっても、俺たち側としては【返り討ち】って大義があるもんな。じゃあ、下手にこちらから手を出すよりは、向こうが勝手に喧嘩を売ってきてくれるのを待ったほうが利口なのかもな?」