ー朝焼けの章16- わいって昔はどこか冷めた感じやったんかいな?
偵察と潜入任務を終えた、わいと彦助くん、鳩のまるちゃん、ネズミのこっしろーくんは、わいと千歳ちゃんの愛の巣に戻っていくわけやで?
「ただいまやで?わいの愛しの千歳ちゃん。わいがおらんくて寂しかったやろ?」
「河童くん、長寿さまくん、それに慶次くんが居てくれたおかげで、それほどには寂しくなかったっしーよ?」
くっ!つらいんやで。わいは千歳ちゃんが寂しいもんやと想って、すっ飛んで帰ってきたというのに、つれない返事なんやで?
「はあはあはあ。四さん。もう少し、ゆっくり歩いても良かったんじゃねえのか?千歳ちゃあああん、千歳ちゃあああんって泣き叫びながら走って帰らなくても良かっただろうが」
「うっさいわい、彦助くん!あんたさんには愛しの彼女がおらへんから、そんな悠長なことが言えるんや!わいは千歳ちゃんと1分でも1秒でも長く一緒に居たいんやで!」
「そんな照れるようなことを言うなっしー。ほら、彦助くんも困惑しているっしー。騒がしい夫で済まないっしー、彦助くん」
「あ、ああ。別にそんなに気にしなくても良いぜ?でも、四さんも変わったなあ。俺、もうちょっと四さんは知的だと想ってたのに、千歳ちゃんのこととなると、いてもたってもいられないって感じになっちまったし」
せやろか?わい自身はそない変わったようには想えないんやけどなあ?
「俺様は四たんとの付き合いは、彦助さんに比べて短いほうだけど、俺様が視てきた限りでは、千歳さんにべったりだったぜ?」
「ああ、慶次が俺たちと親友になったのは、四さんが千歳さんと付き合ったばかりの時からだもんなあ。昔の四さんはもっと人生に対して、達観した感じだったぜ?いや、どこか、自分の人生に諦めを持っていたって感じって言えば良いのかなあ?」
彦助くんが感覚でしゃべっているせいで、何が言いたいのかよく伝わってこないんやで?
「えっとだな。訓練をしている時も、戦中も何かに冷めた感じだったんだよ。でも、千歳ちゃんとお付き合いを始めてから、四さんの心に熱が入ったって言うかさ?すまん、俺、馬鹿だから、上手く説明できねえや!」
「なんとなくだけど、僕にはわかるっしー。四さまは情熱的だけど、心のどこかに冷めたモノを持っていたっしー。でも、今はその冷めた部分は皆目、見せなくなってしまったっしー」
せやろか?まあ、四六時中、一緒に過ごすようになった千歳ちゃんには感じるモノがあるんやろうなあ?
「ヒトってモノは変わって行くモノだぜ。それが悪い方向ではなく、良い方向に転がっていくってのなら、気にする必要はないんじゃないのかだぜ?」
「せやな。良い方向に変わって行っているなら、それでええんやろな。さて、夕飯でも喰いながら、敵情視察の結果でも話すんやで?千歳ちゃん、お椀を取ってくれやで?わいがご飯をよそうさかいからな?」
わいはそう言うと、人数分のお椀を千歳ちゃんから受け取って、おひつからご飯をよそって、山盛りにしていくんやで?
「ほれ、彦助くん、慶次くん、たあああんとお食べ?やで!」
「おっ、悪いねえだぜ!しっかし、今年の春先は寒かったんだぜ。今年はちゃんと米が育つのか心配なんだぜ」
「そうだよなあ。2月は大雪が降ったもんなあ。まあ、その後はぱったりと雪がやんだから、大事にはならなかったけどさあ?」
「あれはびっくりだったっしー。後から聞いた話、八百屋で立ち往生していた風花くんが雪達磨に襲われそうになりましたわ?って言っていたっしー」
「その雪達磨って、田中くんやろ?あの日は昼過ぎから猛吹雪になってしもうたしなあ。ひでよしくんなんか、突風にあおられて、吹き飛ばされていきましたからなあ?ひでよしくんを回収するのは大変やったんやで?なあ、彦助くん?」
「えっ、あっ、ああ。俺は椿と菜々さんを連れて、その辺の宿屋に避難させていたから、ひでよしがどうなったかは、四さんから聞いた話でしか知らないんだよな」
「ああ、そうやったわ。彦助くんは椿くんと菜々くんの身の安全を確保してたんでしたわ。わいはあの時、300メートルほどゴロンゴロン転がって行く、ひでよしくんを追いかけるハメになって、大変やったで」
「僕は四さまの長屋に居たから助かったしーけど、あの猛吹雪はなんだったんっしー?2月に起きるような吹雪じゃなかったっしー」
「アレは大変だったんだぜ。まるで雪女でも現れたのかと想ったくらいだったんだぜ」
「ケケッ。慶次の言う通りだケケッ。ここ、津島の街に雪女が来たんだケケッ。もちろん、四の命を狙ってだケケッ!」
「フシュルルルー。雪女を寄越すとは、これまた、とんでもないことをしでかしてくれたものだフシュルルルー。上はそれほどまでに四の命が欲しいのか?フシュルルルー」