ー朝焼けの章 6- ひでよしくんは牛、豚、黒人、四(よん)の4人の家来を手にいれたんやで?
やったやで!わいもやっと出世かいな!信長さまに仕えて5年近く、はあああ、長かったんやで?
「彦助くんに弥助くん。ほんま、すまんのやで?わいと田中くんが先に出世してもうたんやで?」
「ああ、それはおめでとうと言っておくよ、四さん。あーあ。俺もまだまだ一兵卒かあ。それにひでよしさまの正式な家来になるってことは、ひでよしさまが出世して、足軽50人長になってくれないと、俺と弥助には、足軽10人長の役目が回ってこないってことだよなあ?」
「そう、ですね。というわけで、彦助殿と弥助殿は、これまで以上に頑張ってもらうことに、なります。それによって、私の出世が早まれば、彦助殿と弥助殿の出世も早まるということ、です」
ひでよしくんは上手いこと考えているんやで?これから先、出世していくとなると、信頼できる家来が必要になるんやで?5年も同じ釜の飯を喰って、同じ寝床で寝ていた男たちを採用したほうが、自分にとっては安心やもんなあ?
「ひでよしくんはいったい、どこまで出世する気なんかなあ?わい、ちょっと不安になってきたんやで?」
「そこはもちろん、信長さまの領土が増えれば増えるほど、私もそれに合わせて出世していくつもり、ですよ?信長さまはひのものとの国全てを手に入れると常々、言っていますので、私のような才能が無いものでも、頑張り次第では1国1城の主になれるはず、ですから」
おお、ひでよしくんの夢はでっかいなあ。わいの夢なんて、千歳ちゃんと大家族を作ることくらいしか持ち合わせていませんのになあ?
「ところで、話は変わります、けど、四さんは仲人を誰に頼むつもりなの、ですか?私は親友のひとりである利家殿にお任せするつもりなの、ですが?」
「やっぱり、お武家さんにもなると、同じくお武家さんの仲人になるんやな?わいは針の行商人上がりの足軽10人長やさかいなあ?田中くんにお頼みしようかなあ?」
「わかったんだぶひい。四さん。僕が快く、その役目、任されるんだぶひい?結婚は3か月後って言っていたぶひいけど、その辺りは今でも変わらないんだぶひい?」
「せやな。諸々の事件に片がつけば、3か月後やな。しっかし、どないしたもんやろなあ?3か月以内に解決するんやろか?」
少なくとも、今現在、最も障害である【神の家】との対決は避けられまへんな。あの胸糞悪い教祖様くんを極楽浄土に送らなあかんわ。あんなの、尾張に居座られた日には、わいと千歳ちゃんの幸せな日々なんて望めへんからな?
「ん?四さん。何かトラブルでも起きたのか?俺で良かったら、手伝うけどさ?」
「彦助くんを巻き込むのは何か嫌な予感がするんやなあ。別に彦助くんが敵に寝返るとかそんな心配じゃあらへんで?」
「敵?敵って何だよ。四さん。気になるから、何があったのか教えてくれよ?」
彦助くんが心配そうにわいに聞いてくるんやで?はあ、しょうがありまへんな。彦助くんの性格だと、放っておけば首をつっこんできそうやからなあ?
「えっとな?わい、1週間前に色々とあったんやで?」
わいはそこから話を切り出して、1週間前に起きた事件を事細やかに説明しだすんやで?まあ、そうは言っても、鳩のまるちゃんや、河童くん、長寿さまくん、それにねずみのこっしろーくんのことは除外してやけどな?
「【神の家】?なんだそれ?俺、そんなの聞いたことないぞ?椿は知っているか?」
「いいえ?私は知らないわね?菜々は何か知っているかしら?」
「あたしー?んー、【神の家】かー。そう言えば、清州の街にそんな看板をつけた屋敷が最近出来たってのは聞いたことがあるようなー?」
ほうほう。あいつら、秘密組織かと想ったら、堂々と屋敷に看板を立ててはるんでっかいな。それにその屋敷っていうのは、利家くんが破産するきっかけになったアレやな?
「菜々くん。その屋敷の詳しい場所はわからへんのかな?わい、ちょっと、カチコミに行ってくるさかい」
「えー?そんな、危険な事をするのなら、教えられないよー。なんだか、あそこの屋敷には、ちょっと気がふれたひとたちが出入りしているって噂なんだしー。四さんだけならともかく、千歳まで巻き込まれたら、大変だよー?」
菜々くんが心配してくれてるんやで?でもな?もう、千歳ちゃんは巻き込まれているんや。だからこそ、あいつらをこの尾張から追い出す必要があるんやで?
「千歳ちゃんの身を守るためでもあるんやで?だから、その屋敷の場所を教えてほしいんやで?」
「そうなのー?うーーーん、でも、よくよく気をつけてねー?何なら、彦助くんを貸してもいいからねー?」
「ちょっと待ってくれ。菜々さん。なんで、俺が四さんの手助けをすることが確定してるわけ!?」
何言ってますんや、彦助くん。あんた、さっきまで、わいを手伝おうとしてたやんか?