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ー旅立ちの章10- こいつ、狂ってる。ほんまに狂ってるんやで!

 な、なんや?この大男は。わいも身長はそこそこあるもんやと想ってたけど、わいより頭半個分、背が高いんやで?わい、自分の身長がどれくらいか正確にはわからんのやけど、この大男はでかいもでかいでおっとろしいんやで!


「さて、俺様の助力はここまでだぜ。お兄さんや。この後の喧嘩はステゴロで勝負をつけるんだぜ!」


 えっ、ちょっと、まちいや!わいの命を救ってくれるんとちゃいますんかいな?


「なーに馬鹿げたことを言ってやがるんだぜ。男の喧嘩ってえもんは、ステゴロと決まっているんだぜ!ささ、俺は邪魔をしないから遠慮なく殺し合いを続けてくれだぜ!」


 やばいでやんす。ここでこの場から逃げ出そうものなら、この大男に、わいが殺される番やで!ってか、なんで、高級料理店でこの大男は、ふんどし一丁なんでやんすか。わいの唯一と言って良い裸芸が台無しやんか!


「おっと。なんだか肌寒いと想っていたら、いつの間にか、ふんどし一丁になっていたんだぜ。いやあ、美味いメシにきれいなお姉さん、そして酒ときたらここは脱ぐしかないと思ったもんだぜ。あーははっ!」


 こいつ、頭のネジが菜々くんと同じくゆるんでいるんちゃいますか?今度、菜々さんにこの大男を紹介してやるんやで。きっと、お似合いの彼氏彼女になるんやで?


「お、おい。わしの備前長船びぜんおさふねを粉々にしておいて、何を自分勝手に言っているのじゃ!ああ、10貫(=100万円)も出して買ったと言うのに、これはひどい話なのじゃ!」


「おう。それはすまなかったぜ。でも、俺様の見立てでは、その刀は備前長船びぜんながふねじゃないんだぜ?生憎、俺様は馬鹿の中の馬鹿だと言われているが、逸品の鑑定には自信があるんだぜ?嘘だと思うなら、目利きに見てもらうといいんだぜ?」


「そ、そんなはずはないのじゃ!確かに、越後屋から紹介された堺の商人から買ったものなのじゃ。い、いや、本物の備前長船びぜんおさふねがこんな値で買えるのかと喜んだものだったのじゃが、もしかして、貴様の言う通りなのかじゃ?」


前田慶次まえだけいじだぜ」


 んっ?この大男、いきなり何を会話にならない台詞を言っているんや?


「俺様は貴様と言う名前じゃないんだぜ!前田慶次まえだけいじって呼んでくれなんだぜ!」


「ま、前田慶次まえだけいじさまなのかだぎゃ!そ、それは本当の話なのかだぎゃ?」


「そ、そうだ。思い出したのじゃ。確かに、この男は前田慶次まえだけいじさまなのじゃ。な、なんでこんなところに慶次けいじさまがお出でになっているのじゃ」


 な、なんや。いきなり越後屋くんと悪代官くんが大慌てしているんやで?どういうこっちゃ。この前田慶次まえだけいじと名乗る男はそんなに偉いひとなんか?


「お、お前、前田慶次まえだけいじさまを知らないのかだぎゃ!このお方は、尾張おわりと三河の国境辺りを治める前田利久まえだとしひささまの跡継ぎなのだぎゃ!しかし、この慶次けいじさまはそういうことが問題じゃないのだぎゃ」


「えっ。どういうことや?この慶次けいじとか言う男は、何かヤバい経歴でもあるんかいな?」


「いいか。この先、命が惜しければ、よくよく私の話を聞くのだぎゃ。この慶次けいじさまは今年で18歳なのだぎゃ。それなのにこれほどまでに大男に成長してしまったのだぎゃ」


「そりゃあ、18歳は育ち盛りやけど、これほど大きな男に成長するのはマレやわな?でも、それはたまたまであって、このひのもとの国を探せば、意外とゴロゴロいるもんとちゃいますの?」


 何をそんなに慌ててるんや、この越後屋くんは。その程度の話なら、わい、帰らせてもらうやで?


「お、おい。待て!ちゃんと話の続きを聞くのだぎゃ。この慶次けいじさまは槍を使わせればひのもとの国で右に出る者はいないと言われているのだぎゃ。その証拠に14歳の時に宝蔵院ほうぞういん流の師範を半殺しにしたのだぎゃ!」


「な、なんやと!宝蔵院ほうぞういんって、あの宝蔵院ほうぞういんやろ?鹿島新當流かしましんとうりゅうを起こした剣聖と名高い塚原卜伝つかはらぼくでんと互角に戦えると言われているんやで?そこの師範を14歳の時に半殺しにしたって、どういうことや!」


 わいは驚愕のあまりにさっきまで半立ちだったいちもつが急にしおれてしまうんやで。この慶次けいじくん、まじでヤバいを通りこして、ガチでヤバいやんか!


「それだけではないのじゃ。慶次けいじさまは喧嘩は祭りの華だぜ!と言って、尾張おわり各地の喧嘩に首をつっこむのが大好きなのじゃ。しかも、片方が再起不能になるまで、決着とさせないのじゃ!」


「おいおいおい。こいつ、狂ってるやろ!なんで、こんな奴、牢獄に入れないんや?なんや?自分ちの権力を使って、役人でも脅しているんかいな?」


「ち、違うのだぎゃ。慶次けいじさまの厄介なところは、素手で喧嘩をやらせることなのだぎゃ。刃傷沙汰なら、上も動かざる得ないのだぎゃ。だぎゃ、相撲の一環だと言われれば、役人も文句は言えないのだぎゃ」


 うっわ。まじでヤバいで。いや、ガチでヤバいで!わい、これから、悪代官くんとどちらかが再起不能になるまで殴りあわなきゃならへんのか?わい、信長さまの兵士に課せられる訓練で相撲もやってきているけど、殴り合いとなったらどうなるか、わかったもんやあらへんで?


「よーーーし、解説ご苦労なんだぜ。さて、これでわかってもらえたかと想うが、これから、そこのお前とお前、ステゴロで殴り合うんだぜ?なあに、死ぬまで殴り合えとは言わないんだぜ。俺様が良いと言ったら、そこで決着だぜ!」

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