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三浦大河の【るんだか】シリーズ

ヲタクとパリピの両立、真剣に考えているんだが?

作者: debym-tect

短編です!

他にもあげて行く予定なのでブックマーク、お気に入りお願いします!コメントもなんでもどうぞ‼︎


 チャイムがなり響く廊下にも一つ音が鳴り響く。


「ダァーーシュッ‼︎」


 教室から体をだして、担任教師が叫んだ。


 そうーー足音を鳴らしてるのは俺!三浦大河である。


「はあ、はあ......はあ、はよざいます......」


「ん、三浦遅刻な」


「え〜〜?マジかよぉ......」


 俺は新しい高校生活、新学期、新学級の中で早々、遅刻常習犯になっている。


「おい、放課後でいい。社会科研究室にくることだな」


 朝っぱらから放課後終了宣告......。

 

 その直後だったーー


「すんません‼︎遅刻しましたァ‼︎」


 と、勢いよく扉をあけて来たのは海山春馬(みやまはるま


「お前もまたか!はあぁぁぁ......。お前も社研に来い」


 すると、今度はどっと、笑い声が上がった。温かいさと失笑が混じった笑いである。


「春馬‼︎また遅刻かよ」

「お前面白すぎ、髪の毛どうなってんのよ」


 んぁ、と春馬は気を抜けた返事をして


「うおっ!マジか‼︎なんだこれ......」


 と、呟く。再び教室では笑い声が聞こえる。

 先程は笑いも声もなかったのだがーー


ーーーーーーーーーー〆ーーーーーーーーー


 午前の授業が終わり、昼休憩が始まる。


 昼休憩といえば売店へ行ったり、弁当片手にふざけ合ったりと、色々と楽しい印象ばかり受けるだろう。

 だが、大河は長く伸びたそのまま下ろしただけの髪で顔を隠し、一層陰湿に、憂鬱に、黙々と弁当を食ってるだけなのだ。


 そう。いうまでもないが、三浦大河は一人でいることが1日のほとんど……つまりぼっち。昼飯の時間は大河にとって、中でも群を抜いて辛いものだったーー。



 昼休憩が終わり、午後から授業が再開する。


 刻限の放課後はもう授業を2つ残すのみ............それまでに、窮地を脱する言い訳を考えなくては。と、大河はいまさらながら現実逃避から戻り、戒めから逃げる方法を探していた。


 “えと、今日がアニメのキャラの誕生日で夜からお祝いしてました”


 いやいや、ちがう‼︎確かに時々ある話だが、それでは言い訳にならないどころか、火に油を注いでしまう。じゃあ、


 “夜からゲームしてて気づいたら朝でした”


 いや、あってるけど。確かにあってるけど!今日は徹夜でゲームだったけれども‼︎

ーー理由にならない……。


 “ヤンキーとケンカしてて負けて。そして気づいたら朝でした”


 これか……?

 って、オイィ!そんなこと言ったら怖がられて、本当に一生ぼっちになる。それは断じて避けなくてはならない。


 

 そもそも、何故俺はぼっちなのだろう。俺はいつだってクラスの中心の人気者になりたいと思っていた。

 小学生のときは、クソガキのリーダーみたいなもんでクラスの団結力はあるものの、教師いじめの学級崩壊まで導いた。

 中学では、友達はたくさんいたがいつの間にか自分が仲間はずれな気がして、いつの間にか自分から距離を置いていた。そして、その中学の曖昧さが嫌いだった。


 高校では親友と呼べる存在が欲しくて、なんでも話せるような存在が欲しくて、でもそれは難しいことで……。

 広く浅くでいいからとにかく人気者になりたくて、高校デビューをしようとした。


 だがーー俺の青春。どうしてこうなったのだろうか……


 髪は全体的に伸び、メガネで、ゲーム好き、ここまでならまだ許せる。それに“コミュ障”、“顔面低レベル”、見た目はあまり気にしない。“アニヲタ”で、“サボリ魔”で“遅刻魔”で、“学力貧弱”、何一つ取り柄がないときた。

 ここまでのマイナスを集めて、神様仏様は何をしたいんだろうーー。世界の終焉でも見たいのだろうかーー。


 と、訳の分からぬnegative(ネガティブ thinkingシンキングが始まったところで、彼の意識は戒めの回避へと低徊した。


もう時間がない......だったらーー


「え〜〜。この作者がこの文を書いた理由は何か、三浦。…………三浦!み、う、ら‼︎」


「あ、はい......。夜に、疲れたなってボーとしてて、気が付いたら朝でした」


 瞬間、笑い声が教室を包み、バカを見るような目や楽しそうに眺めてる目が、こちら側を向いている。

 大河は突然のことに、挙動が不審になって、


「あ、ちょっ……。すいません……」


小太りの国語科教師がこちらをどっしりと見据えていた。


ーーーーーーーーーー〆ーーーーーーーーー


 そして放課後、担任に呼ばれていた三浦大河は、社会科研究室の前にいた。


「失礼します」


 コン、と木の扉でいい音を奏で、彼は教室に入った。教室の中には既に、短髪茶髪、容姿端麗のクウォーター、海山春馬が担任の前に座っている。


「遅ぉい」


 担任の高梨宏之が独特の言い回しで大河を咎める。


「すみません......」


 担任に小さく返事をすると、


「おす」


 と、今度は春馬が声をかけてきた。


「お、おす」


 すぐに高梨先生の説教は始まったーー。


ーーーーーーーーーー〆ーーーーーーーーー

 説教が終わり、教室から出たすぐ、


「じゃあ、俺はこれで......」


 すぐに別れを告げようとした大河だったが、


「なあ、お前って面白いのになんでいつも一人でいるんだ?」

 

 春馬が悪気なく聞いてくる。そう、悪意なく。彼は天然なのか、と大河は思う。


「あ〜〜。ほんとは一人なんか好きじゃないんだけどな」


「ふーん、てか友達欲しいとか思ったりしないの?」


 こいつはグサグサ上がってきやがるな。と内心思うが、それは素であり、そして悪気なく言ってるからタチが悪く憎めない。

 海山春馬という少年の魅力はそこにあるんだろうなと心底思う。


「すげぇ欲しい」


 切実な願いであった。それが大河の高校生活を変えるとは本人も、そして春馬も考えもしなかっただろう。



「別にアドバイスってもんでもないけどーーーー



 彼の言ったことはこうだった。


 まず印象が暗いこと、これが大問題だと春馬はいった。髪が長く、下を向いてばかりである。周りを気にしすぎで、自信がなさすぎ、まあまず髪を切ったら?と、要約するとこういうことだった。

 大河はメガネはどうなのか聞いたが、


「眼鏡つけてたってカッケェやついるし、面白いやついるだろ?」


 だそうだ、なんと曖昧な着目点かつ明瞭な答えだろう。



 だが、大河はその全てを受け入れることはできなかった。そう、自分を全否定されてるようで......。

 三浦大河はこう見えて、我が強いタイプである。そのためこういって全否定されてると捉えると、すぐに怒りが湧いてくる。

 だが、今は違った。海山春馬という男は、本気で親身になってくれ、彼なりに意見してくれたのだ。

 いくら大河の性格でも、それを踏みにじるような感情は生まれない。もうこうなったら全て否定しようともパリピになってやろうとさえ思い始めた。


 だが、もう一つ問題はあった…それは大河の趣味によるーー

 インドア派の趣味である。ゲームにアニメ、ライトノベルなどいわゆるヲタクの部類に入るだろう大河は、インキャとなる条件を抱えている。

 それを変える勇気も気持ちも、心も三浦大河は持ち合わせていない。そして春馬は決意した。



 【ヲタクのままでパリピを目指す】


 とーー。


ーーーーーーーーーー1ーーーーーーーーー


 いくら中学で失敗したとはいえ、話すことぐらいできるものはいる。


 この目の前にいる宮沢諒太、千葉真有も“それ”である。だが同時に彼らは大河が嫌いとする人物。

 大河はよくいじられる、そのいじり方がいかにも自己中でとても苦手なのである。


 仲のいい、真面目だが明るい奴や陽キャには優しいが、周りと違った異端を執拗にキツくいじるそんなタイプである。


 大河は先程言った通り、ある程度、自分が許せる範囲というのをはっきりと持っている。少し、自己中気味である。

 そう、だからこそ自己中な人は苦手で、お互いにいがみ合う。そして“陽”の方が仲間が多いので大河は不利になるというわけだ。


「お前っ‼︎まだ随分インキャらしくなったなァ?」

「その様子じゃてめ、“ぼっち”だろ?」


 わざわざぼっちを強調して言う。


「いや、ちげぇし......」


 大河はこういったタイプの前ではますます小声になってしまう。


「その髪とかっ‼︎ワックスもつけてないな」

「マジかよ、おい。ワックスぐらいつけた方がいいぞ?」


「そんなんつけて何になるんだよ」


 大河はワックスというものに経験がなく、ガチガチに固めた気持ちの悪い、七三やツンツンしか想像できない。

 それで思わず言い返してしまったのだ。


「お前には分かんなかったか」


 と、嘲笑され“帰ったら絶対に検索しよう”と軽く心に誓うのであった。


ーーーーーーーーーー2ーーーーーーーーー


 家に帰ってまず彼がしたのはゲーム、四角で世界が作られたサバイバルったり、クリエイトしたりするゲームで、憂さ晴らしにオンラインの荒らしをしているのである。


「はあ、こんなのやっても意味ないか」


 そう、区切りをつけるとスマホをベットの上から取り、何か黙々と検索を始めた。

 その内容はというと、


【ヲタク 陽キャ 方法】


 全くワックスと関連がないーー


 しばらくして調べに納得がいったのか、スクロールの手を止めた。


 そしてーーーー。



ーーーーーーーーーー3ーーーーーーーーー


 学校には三浦大河の姿があった。予鈴すらまだ鳴っていなく、それにいつもの陰湿さがない。

 髪を短く揃え、ワックスで束感を出しただけだが、爽やかさを感じる。メガネも姿がなく、口には柔らかく笑みが浮かんでいた。


「はわっ‼︎誰あんた⁈」


「よう!ええと............」


「早坂繭生!ってかホント誰?」


 朝から話しかけてきたのは、クラスメイトの早坂繭生ーーらしい。向こうもこっちがわからないようである。


「えぇーと。三浦だ、三浦大河」


 あまり、コミュ障を出さないよう気をつけて話した。他にも髪、顔など気を使っているところがたくさんある。正直、慣れない……。


「は?あの遅刻してる人?えっ!なんで早く来てんの?」

 繭生は驚きが隠せないようであり、とても混乱しているので、あまり余計なことは言わないこととした。

 

 その後は特に何もなかったが大河としては大きな成長である。



そしてチャイムが鳴る少し前、昨日の二の舞を避けるため少し早く来た春馬が、


「へ?お前だれ?」


「よう、春馬‼︎この前はさんきゅな」


 なぜ気付かない、と内心思うが、“こいつは天然だ”で片付ける。


「は?ほんとにわけがわからない......」


 こいつは感謝されている意味すらわからないようである。だったら


「三浦大河だよ、覚えとけな?」


 やっと理解したようで、


「あっ‼︎そゆこと、いい顔してんじゃん!」


 確かに客観的に見ても今の彼はわるくない。だが、彼にはまだ、不安要素が残っているようであった。


ーーーーーーーーーー4ーーーーーーーーー


昼休みーー三浦大河にとって最も憂鬱な時間であった。それは今日も例外でなく、不穏な空気を漂わせていた。


 大河の周りを囲んでいるのは、いつも春馬の周りにいた男子たちである。彼らの中の一人が口を開く。


「おい三浦、イメチェンしたんだなァ?ちとチヤホヤされるからって調子に乗ってんじゃねぇのか?」

 続けて、

「テメェが粋ってもよ、誰も得しねェし、ぶっちゃけキモいんだわ」


「言うの可哀想だと思って言わなかったけど、お前かなりキモいからな?それが全然変わってねえよ」


 そうだ、俺はこれが来ることをわかっていた......どうする、どうする三浦大河⁉︎


「はは、言葉キツいな」


 苦し紛れの、その場しのぎである。

 教室の遠くから見ていた繭生が心配そうにこっちを見ている。


「マジでウザいぞお前、気色悪ィ言い方やめろや」


「............」


 言葉に詰まった俺は何も言えなかった。やっぱ俺には無理だったか、このままぼっちで行くしかねえ。やらなかった方がまだーー


「ちょっと来て!」


 耐えきれなくなった繭生が大河を教室の外へ連れ出して、廊下の角で立ち止まった。


「お、おい」


「ねえ、なんで言い返さないの?一度決めたことからまた逃げるの?」


 大河はデジャブを感じた。社会科研究室の前での、春馬との会話のときとのものである。

 だが、それとは少し違った。春馬と違って、彼女は自分の意思でわざと冷たく言ってるのだ。それがわかっててもやはりどうしようもない。


「でも、もう無駄で......。やらない方がいいんじゃーー」


「私ね……。同じ経験がある。ただそれだけだけど、諦めて欲しくはない。こんなこと言えるように偉くないけど……一度決めたことは突き通して」


 その言葉はなぜなのか、大河の心に強く残った。


ーーーーーーーーーー5ーーーーーーーーー


「で?元に戻った方がまだマシなんじゃねのか?」


 大河は、今度は大きく息を吸って答えた。


「戻る気なんてないよ」


 その明るい笑顔のままでーー。



 三浦大河は変わった。明るく、清潔に、揺るぎなく。そのことだけで、たった2日で変わった。三浦大河の物語。


 インドア派の趣味でも、小さなこと気にせず、かと言って自己中でなく、ある程度寛容で、自分の意思はしっかり持ってる。

 そんなやつになれたら、きっといつかーー


 俺ははっきり言える『ヲタクとパリピの両立、真剣に考えているんだが?』と。

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