復活のキシロー:3
「もういいよキシロ―。
私、キシロ―が大好きだし、キシロ―がモモのこと思ってくれるのかどうか不安だった。
だから試すような真似したの、ごめんね。
『結婚相手を紹介して欲しい』なんて。
モモの運命をキシロ―に任せてもいいかな、なんて思って、ごめんね。
もしかして、なんて、ないのにね。
そしたらなんか、それを聞いた人から『男性が苦手なんて勿体ない!』なんて随分押されちゃって・・・。
そうだよね、キシロ―とモモじゃ、結婚はできないよね。
彼をあいしてる?
うん・・・。
でもモモはいつまでも思い出す、モモのそばに、みにこみゅにいた頃のキシロ―のこと。
私の障がいのこと一生懸命勉強してくれて、困ったときに助けてくれたこと。
モモはその時この人社長なんだとかわかってなかったから、ただマメな人だと思ってたけど、大好きだよ、今も。
だから旦那さんだって社長じゃなくったってキシロ―が大好きなんだと思う。
記者さん、金融業のこと言い出したの私なの、キシロ―が『何やっていいかわかんない』って言ってたから、『前反貧困ビジネスやりたいって言ってたよね?ちょっとお金貸してくれるとこがあるといいな』って。
今モモは大好きな絵本の仕事に就いて働いているんだ。
ね、モモも飛べたよ?」
考えていたら、モモさんから何件にも分けてメールが来た。
何を謝っているのだろう?
聞くと、自閉症だから恋愛などわからないだろうという心無い言葉を浴びせられたのだという。
しかし、実際にモモさんは人を愛する。 一方のキシロ―はと言えばこんなことを本に書いている。
「空を飛ぶって言ったって、地を蹴って、風に乗ることだけじゃない。
僕は子供のころから思ってて、いまだにそうだと信じてることの一つがあって。
空と陸と海の境界ってすごい曖昧なんじゃないかって、思うんだ。
いやね、地理学的なことは置いといてだよ、僕の生まれたI市には海と山と空がある、けっこう一緒に見れるスポットとかあって綺麗なんだけど。
波打ち際は揺らめいていて、海と空の間に雲がかかるとちょっとね、わからなくなるよね。
夕方だったりすると昼と夜の境さえも。
少数者とかのくくりも、その他の境界も、本当にはわからないかもね。
まぁ、曖昧でも境界があるからこそ、超える楽しみがあるんだけど。
僕はIT起業家だとまだ思われてるのかな?
でも、本当のことなんか本にも、ネットにも、新聞にも、なんにも書いてない。
名もなき人の嘆きが、いつだって聞き逃されてきたのなら。
誰に言っても仕方ないなんて言わないで、小さく声を上げてよ。
その小さな羽ばたきが、いつか・・・ってこれじゃなんかのCMだけど(笑)
小さい羽根だって、みんなを乗せて飛べる翼だって、変わりはしない。
飛べなくたっていい、飾りでもいい、それでも、風は起こせるから。
だから僕はね、君も飛べるよって思うんだ。」
(『空の飛びかた』より)




