そして時代は彼女を選んだ:3
写真も載っていた。
前述したように細く小さな身体は、おせじにも彼の望む成熟した大人の男性のそれとは程遠い、せいぜい少年といった感じだ。
それでもポロシャツを着こなし、仕事の合間に筋トレに励む、そんなどこにでもいそうなFTM。彼らの言葉でいうところの「ノーオペノーホル、パス度低め」の。
晒されたせいだけではないと思うが、ブログの講読者数も増え、最初はブログの書籍化の話が来た、もっともこれは断ったそうだが。やがて別の出版社から書き下ろしのエッセイというか実話ドキュメント系の本を出さないかという話が来た。実名を出さないという条件付きでOKをしたのは、
「FTMですってカムすんのは別にいいんですよ、でもほんとカンベンして下さい。それに僕の本名ヤバいっすよ、すげぇない」
とのことだ。
ちょっとずつ、民放のバラエティにも出るようになった。
お昼の情報番組で辛いたこ焼きを食べたり、調子に乗ってメンズモデルぶって高級スーツに身を包み、オネェタレントに「ないわぁ」と言われてがっかりしたところを見せたり、あまりFTMだからどうこうというよりは同世代のお笑いタレントと同じ扱いを受けていたところを動画サイトで見つけた。
・・・というのが、何度も言うようだが、実は私はあまりテレビを見ないのだ。
この本を書くにあたって動画サイトで検索し始めたのだ。それはさておき、なかなか「なぜ彼がなぜそんなに話題になったのか」の核のところにはたどり着かない。
今の時代、こういったタレントは一年もてばいいほうで、だいたいは一つの流行語を残した後忘れられてしまうのだが、(まぁ、それでもいいほうかもしれないが)彼はそうではなかった。
一体何がそんなに話題に乗り続けたのだろうか?
彼への視聴者のネット上の反応を見てみよう。
「けしごむさん @keshigomu3 さいきん見るけどキシロ―ってなんなの?」
「あしたの上 @ashita_u う~ん、これで企業家ねぇ」
「ははははだし @8888dashi まぁオカマはよくてオナベは駄目ってことはない」
「小鳥 @bird こないだの発言凡庸性高いWWW ウケる」
ではその発言を辿って見よう。