キシローの誕生:4
「え?会社の資本金ですか、実は実家に借りたんです(笑)『うまくいかなかったら土建屋継ぐから!』とか言って、あとは色々、公でやってるやつとか」
最初は小さなアプリの下請けで、こつこつと仕事をする。
前述のアプリをやったことはいい宣伝になった、ぽつぽつとゲーム会社の下請けで主にゲーム内のミニゲーム等を手掛ける、思い入れのある『あにまる☆えっぐ』もリニューアルした。
「おもいっきりレトロフィーチャーしたんですよ、みんなに『なつかしい!』って言って欲しくって、って言っても知らないはずなんですけど(笑)」
目論見は当たり、やっとゲーム開発部門を軌道に乗せる、また、福島に本社を、東京の六本木に支社を作る
「普通は逆なんですけどね、六本木ヒルズって意外と裏側が物理的に汚いんですよ、それに起業する時結構地元の人にお世話になっちゃって、だったら、会社としては恩返ししないと」
本社では農繁期は休みをとれ、プログラムの知識がない人も採用し育てるようにした。
「職業訓練とかでやったけど即戦力ではない、という人がいるって聞いて。なんでもったいない、せっかくプログラムに興味持ってくれたのに」
会社の仕事は忙しかったが、合間を練って性的少数者問題にも顔を出した。
もともと高校時代悩みを保険医に打ち明けたところ地元の自助グループを紹介されたのがきっかけだった、しかし、そこはすぐ抜けた。
「だってなんかつまんないんだもん、みんな楽しそうじゃないし」
かすかな違和感、
「性的嗜好以外のことで少数者のひとの事をあまりよく言わない人がいて、なんでだろうと思って、行かなくなっちゃった」
それからしばらくして『みにこみゅ』に入る
「色々いた(笑)いちばん驚いたのはいつも言ってる知人の自閉症の女性。え?喋れるの?とか言っちゃった(笑)」
実際は自閉症のなかでも色々なタイプがいるのだが、彼もまた偏見とは無縁ではなかったと思い知らされる。
「なんか漫画でうまく喋れない自閉症のキャラを見た気がして、でもちゃんとコミュニケーションはとれる、ま、よく聞くとちょっと違うけど別に『そういう奴』でいいじゃんで」
性的少数者だけではない少数者を受け入れる『みにこみゅ』は居心地がよかった、元来人の中心にいるタイプだったが、ここでもそれをいかんなく発揮、目立つことや動画アップロードなどの経験から公共放送の福祉番組に出ないか、と代表から声を掛けられた。
「喋れるじゃん」はそういった当事者以外の方にですが実際に言われたことがあります。(作者)