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最弱の英雄  作者: 皐月 遊
第一章 異世界召喚
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一章 5話 「弱者の決意」

「さて……どうするか…」


武器屋を離れてから10分が経過していたがライトはまだ西門を出れていなかった。

武器屋のおっちゃんの話によると武器屋から西門までは真っ直ぐ行けば5分も掛からずに行けると言う話だったが


「初めての異世界だからな…珍しい物だらけだから寄り道しまくっちまった…」


ライトは今迷子になっていた。

真っ直ぐ行けば良いはずなのに初めてみる店や建物を見つけてそれを見に行っていたら気づくと迷子になっていたのだ


「周りに人も居ないし…ヤバいぞこれは」


今ライトがいる場所は路地裏だった、自分はつくづく路地裏に縁があるなと呆れていたが、よく考えてみると最悪の状況という事に気がついた

最悪ガラの悪い奴に絡まれてそのままバッドエンドということもありえる。なにせここは日本ではなく異世界なのだ


「と、とにかく人のいる場所に…」


とライトが歩き出そうとした時


「ちょっと何するの!」


という声がすぐ近くから聞こえてきた


「ん? なんだ?」


声が聞こえた所に行ってみるとそこは自分がいた路地裏から少し進んだ所にその声の主が居た


「いいからおとなしく金目の物をだしな!」


その声の主は女性だったがどうやらガラの悪い奴らに絡まれているようだった。

人数は3人で1人はリーダーっぽい金髪の男で後の2人は太めの男と細めの男だった、そいつらは3人で女性を逃さないように囲んでいる状況だった、幸いライトは気づかれてはいなかった


「あなた達にあげる物なんてないわ!はやくどいて!」


ライトはこんな状況だが、なんて綺麗な声なんだろう、と思ってしまった。まだ顔も姿も見ていない女性の事をライトは助けるか迷っていた


ーーまだ誰も俺に気づいてない、逃げるなら今しかない


という考えが浮かんだ、確かに見ず知らずの相手を助ける義理は無いし、そのまま返り討ちにあう可能性もある


「向こうでも言われただろ…弱者は強者に従ってればいいって…」


ーー助けて何になる、もし助けられても感謝されて自己満足してそれで終わりだ


ライトは自分も日本で不良に絡また事を思い出した。 ただ強者に殴られるだけだった無様な自分を思い出し、自分が情けなくなった


「向こうではカッコ悪いだけだったからな…」


ーーでもここはもう日本じゃない、だからここではせめて…


「自分がカッコいいと思えることをしよう」


そう決意し、ライトはまだ顔も姿も見ていない綺麗な声の女性を助けるべく男達に声をかけた


「あんたら、恥ずかしいと思わないのか?」


とライトが言うとリーダー格の男が振り向き


「あ?なんだテメェ…」


「俺のことなんてどうでもいいだろ、それよりもその娘を放してやれよ」


そう言うと女性は驚いたように


「だ、誰ですか…? 私の事を知ってる人ですか?」


と言ってきた、それに対しライトは


「いや、アンタの事は知らないよ、偶然声が聞こえたから来ただけだ」


と返した

今ライトは強気に振舞っているが、内心は恐怖でいっぱいだった、いつ襲ってくるのか、襲ってきたらどう対処するのかとずっと考えていた


「さっきから随分カッコつけてくれちゃってよぉ…」


リーダーの男が睨みながら言う


「そうやってたまにカッコつけた奴が俺らに歯向かってくるんだよ」


太めの男がライトを指差して言う


「そんでそいつを助けようとした奴の前でボコボコにするのが」


細めの男が言い、そしてリーダーの男が


「最高なんだよなぁ…」


と不気味な笑顔で言った


ライトは男達が襲って来ることを予想し、おっちゃんから借りた片手剣を背中の鞘から出した、そして剣を見せた途端、男達の顔色が変わった


「お、おいお前…なんで剣なんて持ってんだよ…」


「お前何者だよ…」


「まさか…」


と3人はそれぞれ怯えたように言ってきた、こいつらは剣に怯えている…そう分かったライトはさっきよりも強気で


「俺が剣を持ってちゃ都合が悪いのか?」


と自分でも驚くような低い声で威圧するとリーダーの男は怯えながら


「お…お前まさか…騎士なのか⁉︎」


と言ってきた、武器屋がある時点で騎士とかが居るだろうと疑ってはいたが、まさか自分が騎士に疑われるとは思わなかったライトは、それを利用する事にした


「あー…バレちまったか…そうだよ、俺は騎士だ。 そこそこ有名なんだぜ?」


「しかもその黒ずくめの服装…見たことはないが…お前、黒騎士バルムか⁉︎」


黒騎士バルム。 また聞き覚えのない名前が出てきたがもうここまできてしまえば後戻りは出来ない、もうこいつらには会うこともないだろうと、ライトその名前も借りる事にした


「へー、知ってるのか、そうだ、バルムだ」


ライトがそういうと男達は顔色を変え


「すすすすみません! バルム様とは知らずに! こらお前達も謝れ!殺されるぞ!」


「すみません!」


「許してください!」


なんと土下座をしてきた、それに対しライトは


「あぁ、今回はお前らがそのまま帰るなら見逃してやるよ」


というと男達は急いで逃げていった、男達が居なくなった事で隠れていた女性が見えたが、女性はフードを被っていたので顔はよく見えなかった


「えっと…大丈夫か? 怪我とかない?」


そういうと女性は何故か怯えた口調で


「あなた…誰ですか…?」


と聞いてきた


「さっきも言ったろ? 俺はバルムだよ」


「う、嘘をつかないで…あなたはバルムじゃないわ」


「……どうしてそう思ったか聞いてもいいか?」


そう言うと女性は「簡単な話よ」と言ってフードを被るのをやめ


「バルムは、私の知り合いだからよ」


と言ってきた。フードを被るのをやめた女性は、一言で言うと美少女だった。

ライトが見たことのない銀色の髪に琥珀色の眼、真っ白な肌という完璧な美少女にライトが言葉を失っていると


「ど、どうしたの?」


と困ったように聞いてきた、それにライトは慌てて


「い、いや! そうか、バルムが知り合いだったのか、そりゃ気づかれるわな」


「えぇ、なんでバルムの名前を使ったの?」


「あー、それはあいつらを脅かすためなんだよ、実は俺、騎士でもなんでもないんだ」


というライトの言葉に女性はさも当然のように


「騎士じゃないのなんて一目でわかるわよ」


と言った。そして続けてライトをじっと見ながら


「じゃあ、私を助けるために嘘をついたって事?」


「あぁ、俺この国に来たばかりでさ、そのバルムって人も知らないしあいつらも知らないっぽかったから名前を借りたんだよ」


「な、なんでそんな事したのよ」


女性は信じられないというように言った、それに対しライトは


「助けたいと思ったからだ、まぁ戦闘になったらどうにかしてアンタを連れて全力で逃げたけどな」


と自信満々に言うライトに女性は呆れながら


「前半はカッコいい事言ってるのに後半はカッコ悪いのね…」


「まぁカッコよくなろうとしてすぐにカッコよくなれりゃ苦労しねぇさ」


そう言うと女性は笑顔で


「あなたを見てると警戒してた自分が馬鹿馬鹿しくなるわね」


その笑顔を見てライトは自分の顔が赤くなっているのが分かった、だが女性はそれに気づいてないようでその笑顔のまま


「助けてくれてありがとう。 それと、アンタって言うのやめて、私はアイリスよ」


突然のお礼と自己紹介にライトが動揺していると女性……アイリスが不安な表情で


「えっと……あなたの名前、教えてくれない…?」


と言われ、ライトは我に返り


「あ、あぁごめん、俺はライト!井綱 雷斗だ!」


「イズナ…ライト…」


アイリスはライトの名前を確かめるように口に出し、そして「……よし!」と何かを決意したようにまた笑顔で


「よろしくね!ライト!」


と右手を出してきた、それに対してライトも笑顔で


「あぁ!よろしくなアイリス!」


とお互いに握手をした。


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