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5話・神さまルートはないの?

「あなたはユミル?」


「そうだよ。志織」


 幼い少年の姿のユミルはどこにもいない。目の前の美青年がユミルだと知らされてもさほど志織は驚かなかった。もともとはこちらの方が本来の姿なのだろう。

 魔王マーカサイトと顔立ちが良く似た麗しい銀髪の青年は、紫色の瞳を潤ませて志織を見つめていた。その彼が自分のことを「お姉さん」から「志織」と、名前を呼んでくれていることに気が付いた志織は頬を赤らめた。


「そんなこと言っていいの? わたしユミルを選んじゃうかもよ? 神さまルートはないの?」


「残念ながらそれは出来ないね。ぼくはこの世界の見届け係だから」


 照れ隠しのように言った言葉にユミルが正直に応えてくれて志織は気落ちしたけど、そんなに凹みはしなかった。もともとユミルの正体を知った時から、自分のなかで彼は自分と並び立てる人ではないと察してしまったせいだろう。

 それでもあのふたりを見てしまった後だからなのか、非常に残念な思いがする。


「なあんだ。つまらないの」


「ぼくももう少し志織とこうしていたかったけど、ごめん。時間が来たみたいだ」


「ユミル?」


 志織の頭を撫でる手付きは優しいのに、その後に続いた言葉はどこか突き放した様な言葉だった。


「この世界の時間はいま止まったままなんだ。この世界の(かなめ)となるきみをここへいつまでも留まらせるわけには行かないからね。だからそろそろきみを戻すね」


「ユミ…!」


「心配ないよ。きみの思うようにやってごらん。ぼくはいつだってきみが願えば側にいる」


 そう言ってにっこり笑ったユミルは志織の手を離した。志織は目に見えない世界から放り出され、足もとの支えを失って身体が急速な勢いで下降してゆくのを感じた。


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