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14話・魔王さま来訪

 志織は自分の前で跪く神官長を見下ろした。痛いほど真摯な瞳が向けられていた。志織の胸のなかで先ほど出会った彼の顔が思い浮かんだ。


「あの。気持ちは大変嬉しいのですが、今のわたしにはあなたの気持ちに応えられません。ごめんなさい」


「聖女さま?」


 跪く彼の前に志織はきちんと正座して、三つ指ついて深く頭を下げた。真剣に想いを伝えて来てくれた相手に対し、誠意を持って応えたい。そう思って正座で望んだのだ。


 自分達種族の存続をかけて、聖女の志織を狙う勇者や魔王とは違う理由でイエセは志織を望んでくれた。それが嬉しかった。でも志織は彼の気持ちに応える気はないので、変に期待を抱かせる態度は相手に失礼だとも思っていた。

そのまま頭を下げていると、困惑したような声が振って来た。


「聖女さま。どうぞ頭をおあげ下さい」


「イエセ」


「無茶を言いました。わたしの発言はお忘れ下さい。でも今後あなたさまを気にかけ、お傍にいることぐらいは許して頂けるでしょうか?」


「分かりました。わたしもこの世界に来たばかりで何かと不安ですし、相談できる相手が側にいてくれたなら心強いです」


「相談相手ですか…まあ。いいでしょう。これから私も頑張りますし」


 これから頑張るって何でしょう? ちょっと怖いですけど。無理やりにっこり笑顔を作った志織は、イエセに本日最後のお願いをした。


「ではイエセ。一つだけお願いがあるのですが、今日は色々あり過ぎて疲れました。もう寝たいので速やかに部屋から退出して頂けますか?」




 数週間後、志織は美麗な魔王マーカサイトの訪問を受けていた。イエセが彼との話し合いの場を、神殿の謁見室に設けてくれたのだ。

 彼は初めて会った時には足もとまで引きずる様なローブのような衣服を着ていたが、今日は勇者が着てる様な衣服で金糸で刺繍の入った襟の大きな上着にズボンをはき、全身ぬれ場カラス色した黒でコーディネートされていた。


 腰回りには、金の宝飾品を華美にならない程度に巻いていた。他の者には真似できないコーデだ。彼以外の者がしたら可笑しな印象にしかならないだろう。彼だからこそ出来るコーデだ。


 その彼は両手いっぱいの深紅の薔薇の花束を抱えていた。


「今日はお招き頂いて感謝している。聖女は今日も可愛いらしいな」


「ひゃあああっ」


 マーカサイドが花束を手に、もう片方の手で志織の手を取ったのでてっきり花束を渡されるものと思っていた志織は隙を取られた。彼はなんと跪き彼女の手の甲にキスを落としたのだ。


「そなたの誘いが嬉しくて、これはここに来るまでの間に花売りから購入した花だ。受け取って欲しい」


「は‥はい…」


 志織にとって異性から花束を贈られることだけでも生まれて初めての経験なのに、その上に手の甲に彼の唇が触れた‥と、考えて固まった。


「では聖女さま。その花は私が」


「なんだ。貴殿もいたのか? イエセ神官長?」


「私は初めからいましたよ。魔王マーカサイトさま」


 志織がなんとか平常心を取り戻した時、隣から冷気が漂って来た様な気がした。今まで魔王とのやり取りを数名の神官たち同様、見守っていたはずのイエセがつかつかと志織の傍に歩み寄り、花束を横から掻っ攫ったのだ。

 そんな彼をけん制するようにマーカサイドはぬめつけたが、神官長はさらりと受け流していた。


「セレナ。この花は花瓶に移し替えておいて下さいね」


 それまで彼の後ろに控えていた志織の馴染みの女性神官に託す。彼女は心得たように頷くと花束を持って退出して行った。

 その彼女と入れ替わるように現れた別の女性神官はお盆を手にしていた。


「さあ。立ち話も何ですからお二人とも御着席下さい」


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