表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

プロローグ・4 ハイスコア

 振り返ると、扉を開けようとする俺を、天使がじっと見ていた。さっきまでとは全然態度が違う――何か、緊張してるようにも見える。


「そうだ、俺の欲しい特典ってこういう感じなんだけど、EXPどれだけと交換できる?」

「い、いや……EXPは、魂を調整するときに、能力を付加する容量を決定するものだ。容量さえ足りていれば、交換せずとも、おまえの要望を具現化した能力をセットできる」

「要望……それで魔法をセットしたりは?」

「おまえは次の世界に行っても、種族が地球人のままなのでな。その世界では異世界人は魔法を使えても、地球の人間は魔法を使えない。そこまでのルール変更は、私の権限ではできないのだ」


 ソロネより上位の存在がいるってことか……最上位の天使ではないから、当然といえば当然か。


「じゃあ、『最強』……あと、『セーブ』でいいかな」

「セーブ? それは何を意味する『セーブ』だ?」

「ゲームとかの『記録セーブ』だよ。俺がセーブポイントを設定して、何かミスったときに、そこに戻ってくることってできないか?」

「可能だ。しかしセーブポイントを増やすことはできず、新たなセーブを作ると上書きされることになるが……そういったやり方ならば問題はない。しかし、なぜそんな特典が必要なのだ?」

「俺、もう何かミスったとき、やり直せないっていうのは嫌だからさ。一日時間が戻せれば、あ、失敗したって時に取り返しがつかないってこともないから」


 前世で落雷を食らったとき、家にいる時まで時間を戻せたら、俺は死ななかった――というのもあるが。

 せっかく転生しても、不慮の事故で取り返しのつかないことになることもあるかもしれない。そういうリスクを『セーブ』は確実に回避できる――今の話だと、セーブしまくって安心感を得るような使い方はできないが、保険にはなる。


「では、その三つの特典を取得するには……魂経験値が1007639ほど必要だ」

「うわ、やっぱり多いな……100万か。でも、わりとあっさり稼げそうだな」

「……気づいているのか? 魂経験値を積むことで、お前の魂は強くなっている。今の状態で受肉すれば、混沌との戦いで、多く攻撃を撃つことができるようになる」

「だったらなおさらイケるな。7万回戦えばおつりが来るんだから、いつか終わるなと思ってたんだけどさ」

「い、一度目は無事に帰ってこられたかもしれない……しかし、二度目の保障はないぞ」


 脅すように天使が言う。最初に比べると、随分感情が表情に出るようになってきた……こうして見ると、転生する前の俺より幼いかもしれない。中学生ってほどじゃないから、18歳くらいだろうか。天使に年齢なんてないのだろうけど。


「……確かに概念としては必要ないが。言ったはずだ、私の姿はおまえが天使という存在に対して抱く想像を、そのまま具現化したものだと」

「そ、そうか……」


 ドストライクな容姿に見える天使。我ながら、俺の理想は高いようだ――胸の大きさに対しても。


 そして俺はもう一度扉を開け、混沌に挑む。

 漆黒の空間に飛び出し、まずは混沌の位置を確かめる――今回は、上空の方にいる。

 俺は迂回しながら、瞬きのうちに着弾するスピードの光線をギリギリで避けつつ距離を詰めていく。冷静になれば、混沌の攻撃の前兆が見える――触手の先端に光が集まるのだが、発射後は文字通り光の速さでレーザーが飛んでくる。

 つまり光が集まったところで軸をずらせば、回避し続けることはさほど難しくない――と思っていたら、何発か連続で撃ってこられた。


「うぉぉっ……!」


 せっかくなので、フライトシムで覚えたいろいろな空中戦闘機動マニューバを試してみることにする。バレルロール――螺旋を描きながら前方に進む機動。


 ――このバレルロールが、思いの外見事に決まった。俺は螺旋を描き、発射されたレーザーの周りを回るようにして避けて、混沌へと接近することに成功する――そして。


(一撃――もとい、16連射で離脱する……いや、イメージできる限りの光弾を撃ちこむ……!)


 一度目の戦闘よりも、俺の放てる弾数は多くなっている。ならば、混沌に弾が届く距離まで近づいたら、一度のチャンスで全弾を撃ちこむ――どのみち力尽きれば撃てなくなるのだから、それが最大効率だ。


 弾が尽きたあとは、回避機動も取れなくなり、混沌に撃たれる。

 天使はそれを『死』だと言うが、俺にとっては、単なる『再挑戦リトライ』だった。



 2戦目リザルト、32EXP、状態は『正常』。


 18戦目リザルト、520EXP、状態は『正常』。


 530戦目リザルト、18064EXP、状態は『正常』。



 ――そして、752回めの出撃。30821EXP、状態は『正常』。


 俺は、撃墜されることなく生還した。


 累計100万発以上の光弾を打ち込まれた混沌は、まるで超新星爆発か何かのように、黒い球状の表面に幾筋もの光の亀裂が走り――そして、爆散した。


 俺は、それを全速で離脱しながら眺めていた――天使によって、あの白い空間に戻されるまで。


(あれ……俺、どれだけEXP溜めるんだったっけ?)


 夢中になりすぎて、計算を忘れていた。そんな俺を、帰還したあとで、天使が表示したメッセージが出迎えてくれた。



//---------------------------------------//


 魂番号:62,4884,2999

 EXP:5536428

 状態:正常

 混沌討伐回数:1(RANKING:1)


//---------------------------------------//

※ 次回は12:00更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ