第3章 エピローグ
―――――半年後。
「いいですか? 最初が肝心なんですからね!!」
隣にいるポルクルがいつもの口調で口うるさくこちらに注意して来る。
「分かってるって。全く……ポルクルはいつからこんなにガミガミうるさくなったんだか……」
「そりゃいつもこうしてあなたを見ていると、あれこれ気になってきますよ!」
彼のキーキー越えに耳を貸さないように中界軍の軍事施設内を歩く。施設の中はいつもと違って殺風景だ。そんな中部下を含めた三人は真っすぐな廊下をただひたすら目的地に向かって歩いていた。
「で? 何を話すのか決めたんですか?」
オルバンがポルクルの話を逸らす。
「いや? 別に? 何かいるもんか?」
「さすがですね。ぶっつけ本番とは……」
三人の会話は今日も変わらずのんきなものだ。この時が一番心落ち着くのかもしれない。
コツコツと床を歩く音が響く。軍事基地の中はいつもはもっと賑やかなのだが、今日は足音が響くほど静かで少し寂しい。それも今日は仕方のない事なのだが……。
長い廊下を歩き、嘗て自分もあの人の背中を見つめながら歩いたなと思い出す。
自分はあの大きな背中を……父と呼べる彼の背中を今も追えているだろうか。彼の思う自分になれているだろうか。彼が目指した方向を向けているだろうか。
真っすぐ伸びた廊下を歩きながらそんなことを考えた。
あの黒の煤けたマントの背中を、自分は……。
「ほら、マントが歪んでます! もう! ちゃんとしてくださいよ! 閣下!!」
後ろをピッタリとくっついてくるポルクルはまたこちらに向かってそう叫んだ。
「ああ~もう! うるさいなあ。そんなの誰も気にしてないって!」
「します! 僕がします!!」
ポルクルの言葉に「まあ今日ぐらいはポルクルの言う事きいてあげたらどうですか? 閣下」と、オルバンがクスクスと笑う。
「はあ? オルバンまで口うるさくするのか!? この裏切者!」
「ほら、そんな事言ってたら着きましたよ?」
オルバンを睨もうとしたが、そう声を掛けられ目の前の扉へと顔を向ける。
大きな黒の扉。嘗てあの人も通った道。そして……。
黒の扉の前に立ち、なんの躊躇も無く開け放つ。迷いなどもうすでに捨てていた。
そこは中界軍の大きなホール。式典などをするそのホールは地面を黒く塗りつぶしたのかと思うほど、大勢の人々が整列していた。
黒い軍服。そして天使の証である白の翼がコントラストを作っている。会場を見渡しながらゆっくりと自分の立つべき場所へ歩き出す。
その場所に向かう道すがらに見覚えのある顔が並ぶ。戦友、昔の上官……。皆が道を作り、自分の進む先を示す。
自分の立つべき舞台に上がると、その場にいる全員が音を立て敬礼をした。
あと数歩……ブーツの音が鳴り響く。
その数歩先にあの人が、自分の憧れが迎え入れてくれているような……そんな気がした。
マントをひるがえし、会場全体を、中界軍の全てを見渡す。そして目を閉じ大きく息を吸う。
ーーやっと……やっとだ。
瞼をゆっくりと上げる。その黒い瞳はギラリと光り輝いていた。
ヤマトは……いや、『中界軍ヤマト元帥』は言い放つ。
「時は満ちた。さあ、転生天使の戦争を始めよう」
皆さん、おはこんばんにちは!大橋なずなです。
三章完結してしまいましたね。一年掛けての更新でした。
いやあ……二章に続いての急展開! いかがだったでしょうか?
いろんなことが二章から変わり過ぎでビックリされてる方もいらっしゃるかも? ですね。すみません。
今後ですが、もう少しこのシルメリア編を続けさせて頂きます。半年経ちレイン、ヤマトはどのような生活をしているのか。それをまだまだ描いていこうかななんて……。
そして次回の四章ですが……少しお暇を頂き、数か月の期間を開け更新を再開をさせて頂こうかと思っております。
詳しくはまた活動報告&Twitterでお知らせしますのでそちらもご覧いただければ幸いです。
では、いつも応援してくださる皆様。ノートで読んでくれる友達。そして今こうして後書きを読んでくださっている貴方。この作品に触れて頂いた全ての方々に感謝しつつ……。
また四章後書きでお会いしましょう。
Twitter:@oohasinazuna