居酒屋とボクとダチ
中途半端にほったらかしてたのでこちらも三年ぶりの投稿。
この回の『ボク』と同じように無計画に書き始めた作品でしたが、ちょっとだけプロットが出来てきました。
こんな雑さ加減だから三年も滞るのですね(ーー)
電車を降り、ギリギリのところでレポートを提出し終えたボクは図書室に来ていた。
休み直前ということもあり、僕と同様に期限ギリギリの課題の仕上げや試験勉強に来ている学生で普段よりも幾段か人の数が多い。自習室には空きがなく、読書用スペースの僅かに空いた席で勉強することにした。
今期の試験も残り一つ。出席点をかなり多くとることで有名な数学のテストを残すのみ。テスト自体にしたって不安点もないしもう夏休みに入ったも同然だよなとゆったりと公式の確認をする。
ぶっちゃけてしまえば、この確認だって明日の行きの電車でやれば良い程度のもので、わざわざ図書館に来たのは単にレポートを出すだけで帰るのもシャクだった、というだけの理由だったりする。
こんなことを言うとさっさと帰って勉強じゃなくても何かやればいい、という声も聞こえてきそうだがかと言って帰り際に寄りたいところもやりたいこともないのだ。こんなときは無趣味って困ったものであると痛感せざるを得ない。
三十分とせずにテスト範囲の確認も終わり、テキストを閉じ伸びをしたところでテーブルからガガっという機械的な振動と音が伝わってきた。
妙に近くで発せられたそれは、時計代わりに机に置いていたボクのスマホが発生源だったようだ。緑の着信ランプが一定の感覚で明滅している。
一部忌々しげにボクを睨む人も含む周りの人に軽く頭を下げ、スマホのロックを解除すると、1通のメールが受信されていた。
大学の最寄り駅から五十メーターと歩かない雑居ビルの三階、いつも定番のチェーンの居酒屋に一人で入っていく。
夕方五時を回ったことでそこには仕事終わりのサラリーマン達や何時から飲んでるのか分からない位出来上がってる私服姿のおっさん達、そしてガヤガヤと騒ぎながら呑むいわゆるリア充学生達で賑わっていた。
チェーンの居酒屋ほど一人呑みには向かないスポットもないだろう。と常々ボクは思う。カウンターがある店ですら正直独りで行くには厳しいものがある。今日のように友達と呑みに行くのが普通でなくなったらボクの気持ちも変わるのだろうか?
そう考えるようなボクだって今日も当然独り呑みなどではない。
店員に聞いて案内された席ではTシャツ、ジーンズ、サンダルの三拍子で揃えたおしゃれとは程遠いラフ過ぎる格好をしたダチがレモンサワーを片手にホッケを相変わらず間違った持ち方をした箸でぶきっちょに崩していた。何度注意して教えても直らないのでさすがにそれを直すことについては諦めている。
「呑み始めてるのはともかくとして、お前なんでボクのくる前にホッケ頼んで崩し始めてるわけ?」
「ん。 その方が嫌がるかと思って」
言いつつホッケを口に放り込み悪びれる様子もなくそいつは答えた。
「ボクがホッケ好きなの知っているくせに」
「だから、こうして来たら食べやすいように崩しておいてやったんじゃない。優しいダチに感謝しろ」
「これを食べやすいと言うやつがいたら是非お目にかかりたいわ」
どうみたってこの惨状はこいつの箸使いの下手さで身が崩れただけであって、気遣いの賜物ではないと言える。身が細かに分かれすぎてとてつもなく食べづらそうだ。
辟易としながらとりあえずビールを注文。さして待つこともなくやって来たそれをダチのグラスにテキトーにぶつけて一口呷ると胃が炭酸にやられ、思わずゲップが出そうになる。
一年以上の付き合いになるが未だにこいつの味にも炭酸にも慣れない。アルコールと言えばビールと言う慣習に何となくしたがって呑んではいるがいつになったらこれを美味しく飲めるのか? いっそゲームのように「あと三百杯呑んだら熟練度MAX! 美味しくビールが飲めるようになります」とかだったら楽なのに。三百杯も我慢するかは別として。
そんなボクとは対称的に、明日同じ試験を受ける予定のダチはまるで明日はなにもないかの様にまだ半分は残っているのにぐびぐびとレモンサワーを口に流し込み、メニューを見ながら次の一杯を考えている。
雑オブ雑なダチだがこんなやつなのに頭はなかなかに良い。中の下位の成績のボクですら余裕があるのだから明日のテストのことなどもう眼中にないようだ。
「そいやさ」とメニューを見終えて、店員が来るまでの合間でダチが切り出す。
「さっきからスマホをポチポチと何やってんの?」
そう、先ほどからボクは今朝の電車のときと同じように周りの出来事をシュッシュッとようやく慣れ始めたフリック操作でせこせこと文に起こしていた。
一緒に飲んでる相手がスマホをずっといじくっていたらそら、確かにいい気はしないだろう。ということに怪訝そうな顔でこちらを見てくるダチを見て今更ながら気が付く。
「ごめんごめん。実はさ」そうやって切り出してボクは小説を書くことを趣味にしようとしていること、小説を書く為の練習として周りのことを書いてみていること。でも、今一つ面白いものにならないことを話した。
ほーんとかふーんとか性格の割に均整の取れた顔を様々な表情に変えながらダチは相槌を打ちつつ聞いてくれていた。十分とせずボクの話が終わると、しばし思案顔でいたかと思えば、先ほど頼んでからあまり手を付けていなかったハイボールをひっつかむとそれで喉の渇きを潤し、
「なんか書きたい話とかあるわけだ? どんな話?」
と聞いてきた。
「え? ないけど?」
「絶滅危惧モンスター保護管理課の活動」という作品も復活させてますのでお暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。




