朝の電車にて。
時間あたり二本ほどの特快にギリギリのところで滑り込む。
昨日あったという都内の別の路線での大混乱の影響はどうやら出ていない様子で二十三区外から都内へ向かう電車はほぼ時間通りに走り出した。
走ってきたせいで汗だくだけど汗をじっくり拭く余裕はスペース的に無さそうでげんなりする。
まぁ、いいや。さて、ここからが本番だ。早速辺りを見回してみる。
まず、音。話し声は……しない。驚くほど静かな車内。皆一様にスマホや読み物を手に首を下ろしそれを真剣に無表情で見つめている。
この文を書いている自分もきっとその中のひとりなので偉そうなことは言えないが、改めて観察してみるとなかなか異様な光景だ。
だが、それではボクは何の面白味もない。つり革に捕まりながら舟こいでるやつとかいないものなのか。
目的の駅まで鼓膜を刺激するような面白そうなことはないだろう。と、言うことでメーカーが十年近く新型を出さないせいでボロボロな癖に未だに最新機な音楽プレイヤーに巻き付けたコードをほどき、イヤホンを耳にはめる。再生ボタンを押し、接触が落ち着くまでジャックをグリグリとして準備完了だ。流れてきたこれを買った当時は最新だったはずの曲を聴きながら再び作業に戻る。
汗がようやく引き始めた。
次は臭いか。……しないな、何も。
親父の加齢臭も、押し付けがましい女の香水も、何の臭いもしない。
整髪料の涼しげな臭いがするので横を見るとバッチリ髪を決めた若い男が立っていた。
勿論片手にはスマホ。
うむ。臭い、異常なし。
一通り確認し終えてしまいもう思い浮かぶものは何もなかった。見つめてて幸せになれそうな女の子もここからでは見つからない。不思議な位若い子がいない。
そもそも、無理矢理乗ったせいで目の前に広がるのは窓の外の景色が大半だけど。
窓の外を流れる景色の流れ方から見てこの道六年のベテランな俺の判断では電車は遅れもなく順調に走っているようだ。
世界有数のターミナル駅、新宿に着いても座れない状況は続いた。
多少余裕ができたので辺りを見回してみるが車内一切の変化なし。
……書くことが尽きた。
そう思って外を見ると目的の駅のすぐそば、うちの学生の溜まり場になっているファストフードが見えた。なんだ、もう着くのか。
じんわりとスピードを殺している電車のせいで少しだけつんのめりながらドアの方へ移動し降りる。
降りると同時にもわっとした、外へ出たのに一日中閉めきった室内に入ったときと同じような爽やかさの欠片もない不快な空気を食らう。
不快さに気分が悪くなりそうになりつつ、スマホに編集終了のコマンドを打ち込もうとすると、止まっていた汗が額からすぐに流れ出していた。
暑いのは嫌いだ。
今日のポイント:ボクの人生は呆れるほど平凡でドラマ性、皆無。かもしれない。




