第三話 何でこうなった!?
出席を取り終えた僕達は、始業式があるとの事で体育館へ民族大移動の如く移動をし。
先ほど、特に何も無く始業式を終えて。今は、教室へと戻るべく。
更なる民族大移動を実施中である。
僕は、移動中。先ほどのクラスでの出席確認の事を思い出していた。
呼ばれた生徒が自己紹介をしていったのだが、その中に今日の朝に声を掛けてきた女生徒が
居なかった事を改めて思い出し心の底から安堵した。
本当に居なくて良かった。まぁ、全部で7クラスあるのだから、マンガの展開みたいな事は
そうそう起きないだろう。と、周りの生徒に合わせて移動していた僕の肩を叩く人物が現れる。
振り返ると、そこに居たのは一人の男子生徒。
名前が出てこない。出てこないのだが、クラスメイトだと言うのはわかる。
彼は確か、僕の後ろの席の生徒だったはずだ。
だが、さすがにさっきの今でクラスメイトの名前を覚えれるはずもなく。
言葉が出てこない。すると彼は、にこにこと笑いながら話しかけてくる。
「よっ、甲斐でよかったよな名前。俺、北中 浩輔。これからよろしくな」
「あっ、うん。よろしく。」
それから北中君が僕の隣へと並ぶと再度口を開く。
「なぁ、安芸島学園に居たってマジか?」
その質問に内心やっぱり来たか。と思ったが、最初に決めていた通りの返答をする。
「うん。でもね、こっちに来る前は普通科に居たんだよ僕。」
「へぇー、そうかそうか。そういや、普通科もあるんだよなあの学園。」
「まぁ、どうしても電脳電子科が有名だからね。」
僕が通っていた安芸島学園には電脳電子科と呼ばれる専門クラスがある。
人類が電子世界に潜れるようになって半世紀。
電子の世界での作業、業務をする専門職が産まれた。通称ダイバーだ。
また、ダイバーのアシストをする人たちの事をワーカーと呼ぶ。
そして、その専門職の人たちがもつ資格。
国家資格に分類される電脳技師と呼ばれる資格がある。
この資格獲得と、将来有望なダイバー、ワーカーを育てる事を目的とするのが
安芸島学園の電脳電子科である。
そして、県下で電脳電子科を持つ高校は二校しかない。
だから、安芸島学園と聞けばまず電脳電子科という言葉が浮かぶのは必然だ。
「こりゃ、勘違いするヤツが多いだろうな。よしよし、席が前後のよしみだ。
困った事があったら何でも聞いてくれ。」
そう言って右手を差し出してくる彼に、僕も右手を差し出して握手をする。
「うん。助かるよ、よろしく北中君。」
その後、彼とは取りとめの無い会話をしながら教室へと戻るのであった。
◆
「おーい、誰か我こそはってヤツはいないのか?」
現在、教室ではLHRの真っ最中である。
黒板には田中先生が書いた委員や係りの名称がずらりと並んでいる。
だが、まず最初に決めるべき役職。学級委員長。
男子生徒と女生徒で一人ずつの選任なのだが、誰も手を挙げない。
こういう係り決めというのは、どこのクラスでも難航するものなのだろう。
それに、係りの種類と選出人数を数えたらクラスの人数ぴったりだった。
つまりは、クラス全員何かしらの委員、または係りにならなくてならないのだが。
出来れば楽なもの。もしくは、『これ』とすでに決めているものになりたいと思うのが普通だろう。
誰も手を挙げない事に、あごに手をやる先生。
どうも何か思案する時、田中先生はあごに手をやるクセが在るみたいだ。
と、先生がにやりと笑い。口を開く。
「よし、早い者勝ちだ! 学級委員長になったら相方を選ぶ権利をやろう!」
なんて事を、僕は先生の提案にげんなりする。
多感な高校二年生にそんな権限は不要だろう。
ただでさえ、男女で組まなければいけない役職で、相手を選べると言われても正直困る。
これでは手を挙げる事がさらに難しくなるのではと思っていると、すぐさま声があがる。
「先生! 私やります!」
「おっ、中村か。よしよし、じゃあ前に出てきて司会しろ。」
声を上げた生徒が教壇へとのぼる。
そして先生が黒板の学級委員の所に、中村という文字を書いていく。
その間、彼女の方を見ていたのだが、むちゃくちゃ小さい。
たぶん、クラスの女生徒の中では一番身長が小さいのでは無いだろうか。
ショートカットの彼女は、先生が黒板に自分の名前を書き終えるとこちらに向き直る。
その時、その子と一瞬だが、目が合った気がした。
「じゃあ、中村。相方は誰が良いんだ?」
先生の言葉に、男子生徒の心中は複雑だろう。
見た目かわいい女の子に、選ばれるというのはある意味で名誉だ。
しかし、それで一年間学級委員長をしなければ行けないのは、正直割りに合わなさ過ぎる。
まぁ、さすがに何にも接点の無い異性を指名する事など無いだろうから
僕が指名されることは無いだろう。僕としては、北中君が手を挙げた委員か係りにでも
手を挙げて便乗さしてもらおうなどと考えていた。
そして、彼女がその口を動かす。
「それじゃあ、甲斐君でお願いします。」
そして告げられる男子生徒に同情する僕。
まぁ、さっさと次にいかないと時間制限もあるわけだから仕方ないよね。
それにしても、甲斐という苗字って僕以外にこのクラスにいたっけ?
自己紹介を聞き逃したかなと考えていると、周りから何やら視線を感じる。
そして、背中を突かれる感触に後ろを振り向くと、北中君が笑いを堪えながら
くいくいとアゴをしゃくる。
えっ、うそでしょ?僕は、教壇に立っている彼女、中村さんへと視線を向ける。
「よろしくね。甲斐君」
彼女の発言の横で、先生が黒板の学級委員の項目の所に
新たに僕の名前を書いていくのが視界の隅に移る。
どうやら、このクラスに甲斐という生徒は僕しか居ないので間違いないらしい。
何でこうなった!僕は心の中で絶叫するのだった。




