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電脳世界であなたと円舞曲(ワルツ)を  作者: のいざ たつや
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第二話 自己紹介

足にそれなりのダメージを負いながらも、何とか他の生徒の後を付けて学校へと到着した僕は

現在、職員室の隣になる談話室とプレートが掛けてある部屋で

これから一年間お世話になる担任の先生と会話をしていた。

この先生とは、転入試験に受かった後に、資料をもらいに来たとき一度会っている。

何でも、僕の境遇を聞いて進んで「自分のクラスへ」と進言してくれた人らしい。

その事を母さんから聞いたとき、このご時勢にめずらしい熱血教師だなと思ったものだ。


「よし、甲斐。これから朝のHRで君の紹介をするのだが、その前に聞きたいことがある。」

「はい。何でしょうか?」

「どこまで話す?」


その言葉に、目線を下へと向けて考え込む。

『どこまで話すか?』という問いは、僕の事を考えの事だろう。

僕が隠したいことは隠していいと言ってくれているのだ。

この先生は、本当に今時珍しいタイプの人なんだと改めて思った。


「前まで通っていた学校の事は、話して大丈夫です。

ただ、一年通して普通科に居た事にしてもらえないでしょか?」


顔を上げて答えた僕に、先生はアゴに手をやると思案顔を作る。

やはり嘘を付くのは教職者としてはばかれる事なのだろう。

もし、ここで先生が包み隠さず全部話さないかと説得を始めようものなら

僕の方が折れて説得に応じてしまいそうだ。

しかし、先生から返ってきた言葉は、考えていたものとは大分かけ離れた提案だった。


「甲斐、こうしよう。君が通っていた学校名は話す。

そして、君は普通科で1年目の履修を終えてこちらに転校して来たと話そう。

やはり教師としてウソを付くのは良くないからな、これで妥協できないか?」


言い終えてから、先生が微笑む。

僕は一瞬きょとんとして、すぐに先生の言葉を反芻する。

なるほど、確かにそれならウソは付いていない。

僕は確かに普通科で履修を終えてからこちらに転入する。

最初の僕の言葉ではウソだが、先生の提案する言葉なら本当の事しか言っていない。

こういう駆け引きっていうか、言葉のやり取りって面白いなと思いながら

僕は先生の提案に頷くと、最後にどうしても言っておきたくなった言葉を口にする。


「田中先生、これから一年。よろしくお願いします。」

「おう、一杯迷惑掛けろ。とことん面倒見てやる。」


そう言って田中先生は、豪快に笑うのだった。





この海淵高校は、校舎が独特な建ち方をしているので有名な学校だ。

どう独特なのかと言うと、上空から見るとN字型に建っているである。

普通はL字型だったり。凹型だったりが多いと思うのだが、これには分けがある。

最初は、この高校も凹型で建てるようにしようとしたらしいのだが

この場所に高校をいざ建てようと地質調査をした時に、頑丈な地盤がN字の様になっていたらしく。

中校舎に当たる部分を、両サイドの校舎の端にくっ付けるように建てると耐震強度が足りない。

なら、地盤にそって中校舎を斜めに建ててしまおうとなって、こうなったらしい。

と、学校説明のパンフレットに書いてあったことを思い出しながら田中先生に連れられ

静かな廊下を歩いていく。先ほど、チャイムがなったので生徒は新しいクラスで

これから一年お世話になる担任の先生を待っている状態だ。

そして先生が一つのクラスの入り口で立ち止まる。


「それじゃあ、ここで待っててくれ。すぐに呼ぶから。」


そういい残すと2-Bと書かれたプレートが挿してある教室へと先生が入っていく。

それと同時に教室から大声が上がる。


『おっしゃー!田中っちだ!』「やった!田中先生じゃん!』

『これは勝ち組』『これは1年間期待できる!』


などなど、いろいろな声が聞こえる。

この反応で、田中先生がこの学校で生徒からかなりの人望があることがわかる。

本当に今時こんな先生がいるんだなと改めて感心する。

前にいた高校では、ここまで慕われる先生は居なかった。

この先生の担任のクラスなら、1年間。楽しく過ごせそうだと素直に思う。

少ししてクラスが静かになると、先生の話し声が聞こえて来る。


『君ら元気に溢れてるな。そんな君らにもう一人仲間を紹介しよう。入っていいぞ』


その言葉を受けて、僕はドアを開けて教室の中へと足を踏み入れる。

突き刺さる視線、視線。僕は、視線を上げれないまま先生の横へと立つ。

すると、先生が僕の肩に手を置きクラスメイトへと僕の事を告げる。


安芸島あきのしま学園から、転入して来た。甲斐かい 春樹はるき君だ。

今年からうちの高校に通うからわからない事が多いと思う。みんな助けてやってくれ。」


先生の言葉に、クラスメイト達が一瞬どよめく。

しかし、先生はあえて何も言わずに僕の背中をトンと軽く叩く。

自己紹介をしろ、と言うことなのだろう。

僕は、そこで初めて視線を上げてクラスを見渡す。


「安芸島高校から来ました。甲斐 春樹です。これから1年よろしくお願いします。」


簡単な自己紹介をして頭を下げると、そこかしこから拍手がなる。

僕が顔を上げると、クラス全体で拍手をしてくれていた。

のりが良い人が多いクラスみたいだなと、考えていると。

先生に背中を再度叩かれる。


「甲斐の席は、そこな。廊下側から二番目の最前列。よかったな、特等席だぞ。」


そう笑いながら僕は背中を押されて自分の席へ向かい腰を下ろす。


「よし、それじゃあ出席取るぞー。初っ端だから名前言ったら立って自己紹介なー」


田中先生の言葉に「おぉー」やら「いぇーい」と声を上げるクラスメイト。

僕の新しい学校生活がこうしてスタートをきったのだった。


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