プロローグ ドリーム ロスト~夢の終わり~
白一色の世界をひたすら駆ける。
走りながら周りに異常が無い事を視認して、インカムに問いかける。
『マーカーへ、再度ポイントの表示と指示をお願いします。』
その言葉に、数秒もしない内に10cm四方の小型のウィンドウが目の前に現れる。
そこに映っているのは、赤いチェッカーとそこまでのルート。
『次のブロックを左へ、そこで小規模な破損が確認出来ます。』
インカムを通して聞こえた言葉を聞き終わると同時に消えるウィンドウ。
僕は後ろに首を向けると、後ろについて走っている二人に確認を取る。
「それじゃあ、二人とも準備よろしく」
「あいよぉ」「了解」
長髪の男子と短髪の女子が返事をしたのを確認して、僕も腰に挿している筒に手を添える。
前方には分かれ道。僕達は迷う事無く左側へと進路をとる。
そして今までと代わり映えしない白い世界をひた走る。
「しかし、数ヶ月経つってのに未だに慣れないな。目がいてぇわ。」
「痛覚なんて無いのだから、それは気のせいね。」
「うっせ、例えだ例え!」
「あらそうなの。ごめんなさいね、理解してあげれなくて。」
「お前、わかってて言ってんだろう!」
後ろを振り向かなくても、お互いが睨み合いながら会話をしてるのがわかる。
二人の仲が余り良くならないまま数ヶ月も過ぎてしまった。
まぁ、このテストが終われば一学期も終了してメンバーは再編成されるから
二人にとってはどうでもいい事なのだろうけど。
出来れば、入学して最初のチームなのだから、もう少し仲良くなってもらいたかったな。
と、そんな事を考えていたら、僕の視界に目的のものが姿を見せた。
それは白い壁にノイズと共に走る黒い裂傷。
僕は左手を挙げて後ろの二人へ合図を送ると、腰から筒を抜き放ち空中へと放り上げる。
瞬間閃光。同時に周りの空間へと光の粒子が散布される。
すると、黒い亀裂が更に広がり。そこから黒い影が飛び出してきた。
その影は、まっすぐに僕らに向かって突っ込んで来る。
僕は、すかさず手首にあるスイッチを入れると左手を前方に突き出す。
バチっと言う音と共に、黒い影の突進を僕らの前に現れた緋色の壁が防ぐ。
それでも尚、壁のこちら側にこようと、その巨大なアゴをガチガチと鳴らす黒い影。
今目の前にいるソレの容姿は例えるなら機械仕掛けのムカデである。
黒いメタルボディに巨大なアゴ。そして、何本もの足がカチカチと機械音を撒き散らす。
どうしてこう、ウィルスのデザインはこうも醜悪なものが多いのか。
作っている人間のセンスを疑いたくなるものだ。
『マーカー、ワーム型ウィルスと接触。ワクチン散布は終わってる。エリアの固定を頼みます。』
『座標を確認。エリアの固定を始めます。デリート作業、気をつけてね3人とも。』
インカムからの返事を聞きすぐに行動を開始する。
「二人とも盾役は僕が引き受けるからデリートはまかせるよ。」
「まかされた!」「了解!」
僕の言葉に短く答えて展開した緋色の壁の両サイドより、二人が一気に駆け抜ける。
壁の側面を抜けた二人の方へとワーム型がその頭を向けるのを僕は見過ごさない。
展開したままのシールドをそのままワーム型へと押し付ける。
ガチっとシールドの表面とワーム型が更に接触すると、ワーム型の頭がこちらに向き直る。
そうそう、君はこっちを向いてなくちゃね。
ワーム型がその巨体を大きくしならせてシールドへと再度体当たりを敢行する。
2回、3回と繰り返すもシールドにはヒビの一つも入らない。
目の前のシールドに悪戦苦闘しているワーム型の後方。
僕の視界は、ワーム型の後方に回り込んだ二人が同時に武器を構えて飛び掛る姿を捉えていた。
「せいやっ!」
「はぁっ!」
彼が振るうブレードがワーム型の胴体へと吸い込まれるように横なぎに通過する。
すると金属同士が接触したかのような音を立て、ワーム型の身体が二つに引き裂かれる。
状態を持ち上げていた下部を失い、自然落下するワーム型の上部。
そこへ今度は、彼女が手に構えられたランスを深々と突き刺した。
頭をランスにより床に縫い付けられたワーム型は、それでも暫らくの間。
カチカチとそのアゴと残った足を動かしていたが、次第に動きが緩慢になり。ついには完全に動作を止める。
そしてランスの刺突箇所から亀裂が一気に広がると、弾けるように黒い粒子となって消えていった。
その光景を確認して、僕はインカムへと手を伸ばす。
『マーカー、ワーム型の消滅を確認。エリアのスキャンをお願いします。』
『スキャン終了。反応なし。エリアの固定化を解除。みんな、お疲れ様。』
インカムから聞こえる言葉に安堵の息を漏らすと武器を納めた二人に向き直る。
「二人ともお疲れ様。それじゃ、戻ろうか。」
僕の言葉に二人が頷くのを確認して、目の前に手をかざす。
そこに現れたウィンドウを操作して、ダイブアウトのボタンを出す。
そしていざボタンを押そうとした時、僕の前で同じようにウィンドウの操作を行なっていた二人が同時に叫ぶ。
「春樹!」「甲斐君!」
僕の出していたウィンドウに黒い影が落ちる。
瞬時に後ろを振り向くも、目の前には切断されたワーム型の下部がすでに僕へと襲い掛かって来ていた。
「あっ・・・」
そして、僕の意識はそこで途切れた。
完走目指して頑張ります。
誤字脱字ありましたら、報告頂けると助かります。




