3話ー朝の出来事
「おはよう、ラピス」
「お、おはよう」
ラピスはぎこちなく挨拶を返す。だがそれは、驚いていたからだ。
(迎えにくるとは思ってなかった)
「ほら、朝ご飯食べにいこ!」
当の本人は全く気にせず、ラピスの腕を引いてゆく。
まだ食堂は混んでおらず、二人は朝ご飯ののせられたトレーを近くの席に運ぶ。
「「いただきます」」
ピラフを一口食べる。
「…!」
「美味しいっ!」
方や目を見開き、方や満面の笑みを浮かべる。
それほどまでに美味しかった。
「そんな風に言ってもらえるなんて、作った甲斐があったわ」
エプロンをつけた老婆が二人に笑みを向ける。
「これを作ったの、貴女なんですか?料理教えてくれませんか!」
リィルの言葉にラピスもコクコクと頷いた。
「そうねぇ、学園がお休みの日なら大丈夫よ。あ、ごめんなさい、そろそろ戻らないと。授業、頑張るのよ?」
「はいっ」
教室に着くと、中にはすでに10人以上のクラスメイトが談笑していた。
ラピスはそれを避けるように席へ一直線に向かう。
「ラピス、どうかしたの?」
リィルはその行動に疑問を覚え、問いかける。だが、ラピスは首を振る。
「何でも、ない…」
リィルはそれ以上、ラピスに問いかけはしなかった。
1時限目は魔術語の読み方を学ぶものだった。
魔術語とは主に魔法陣を描く際に使われる言葉だ。
魔法陣を用いることは極まれだが、大掛かりな魔術__もとい魔法を使うときには欠かせないものとなる為、学園の教育課程に含まれている。