2話ークラスメイト
特に話もしないまま、二人は廊下を歩いていた。
もうほとんどの新入生は自分のクラスへと入ってしまったのか、廊下には二人しかいなかった。
「ふふっ、遅くなっちゃったね。私たち」
リィルは肩をすくめ、ラピスに笑いかける。ラピスは戸惑いがちに「うん」と返す。
1年生の階である4階に着いた。
「こら、そこの二人!早く席につけ」
ガラリとドアを開けると、教室内の視線が二人に集まる。
「すいません、先生。ね、一緒に座ろう?」
ラピスはコクリと頷くとリィルに手を引かれ、窓際の一番後ろの席に腰掛ける。
「さぁ、全員揃ったな。えー、Aクラスの担任になったディル・フィフェルだ。
フェル先生と呼んでくれ。これからよろしくな。あ、廊下側のお前。お前から自己紹介頼む」
「ええっ!」
ざわざわとした空気の中、自己紹介は過ぎていく。
しん.....
突然、教室が静かになり何事かとラピスは顔を上げる。
カタンと椅子から立ち上がったのは、こげ茶色の髪に琥珀色の瞳をした整った顔立ちの男子生徒。
「オレはジン・スノウウェルだ。戦闘タイプは、中等部からのヤツは知ってるだろうが近距離型。よろしくな。」
女子生徒たちが歓声を上げる。
「彼は魔力量が多くて有名なんだって。加えてあのルックスだから女子に人気だそうよ」
聞かれてもいないのに、リィルが補足した。
その後も自己紹介は進んでいき、ラピスの番がまわって来た。
ラピスが一番最後であったため、視線が集まる。
「ラピス・レイン。戦闘タイプは近距離型」
簡潔に自己紹介を終え、席に座る。
(静か、だけど…私何かした?)
「まぁともかく今日のところは下校!寮にまっすぐ帰れよ。起立、礼」
「ラピス、寮に行こっ」
「…ん、わかった」
(大きい)
ラピスが寮を目にした感想はそれだった。
「この学園の女子寮は女子生徒の人数が少ないかわりに、一部屋ずつが大きく造られているんですって。しかも一人一部屋。ある意味すごいわよね」
リィルが説明してくれた。
(どこから情報をもってくるんだろう)
ラピスは内心首をかしげる。
寮の受付でカードをもらい、魔力を流す。
これによって、持ち主以外が部屋に許可なく侵入するのを防ぐのだ。
「ラピス、何号室だった?私は305号室だよ」
リィルがピラリ、とカードを見せてくる。
ラピスはそれを真似するようにしてカードを見せると答える。
「…304」
それを聞いたリィルは嬉しそうに笑った。
「やったぁ、隣ね!」
「ちょっと、疲れた」
ラピスはベットに寝転がり、つぶやいた。
そして魔術を使い、白と蒼を基調とした愛刀をとりだすと、それをそっとなでる。
正確には刀の柄に埋め込まれた透明な石を。
「シュリ、私…頑張るよ」
___ラピスに答えるように、石が淡い光を発していた