1話ー入学
チュンチュン.....
「ん……」
小鳥の小さなさえずりで少女___ラピス・レインは目覚めた。
眠たげに目をこすり、軽く伸びをするとその華奢な体を起こす。
『空間繋ぎ』
ラピスは小さく唱えると、何もない空間から学園の制服を取り出した。
そして素早く着替えると刀を片手に持ち、階段を下りる。
宿を出ると、通りは朝市で賑わっていた。肩と肩がぶつかりそうなほどの人の波をかきわけ、やっとのことで路地裏へと入り込む。
(面倒。上から行くかな)
ダンッ
足に身体強化をかけて高く跳躍し、屋根の上に降り立つ。
そしてラピスは屋根から屋根へと飛び移ってゆく。
_____タンッ
アストラル学園の門の前、軽い音を響かせ、ラピスは屋根から石畳へ着地した。
同時に近くを歩いていた新入生が、ラピスにぎょっとした視線を送る。
だが当の本人は特に気にする様子でもなく、門をくぐってゆく。
入学式が終わり、新入生が続々と教室へ向かう中、ラピスは人の波により中々進めずにいた。
「だいじょうぶ?人、多いもんね」
後ろからの声に振り向くと、そこには金髪碧眼の大人びた女子生徒がいた。
垂れ目がちの目に女性らしい体つきをしていて、十人中十人が振り返るだろうその少女を見てラピスは何?、とでも言いたげな視線を送る。
少女はにこっと笑うと、
「あ、ごめんね。えっと、私はリィル・ミリアルっていうの。
あなたもAクラスみたいだったから……。
よければ、一緒に教室に行かない?」
「え…と、うん」
二人は歩き出した。