0話ー帝国の夜
_____________スィナル帝国・帝都マナルの一角
辺りの建物よりもひときわ大きく、そして華やかな建物があった。
3メートル程の高い塀に囲まれていて、正門には銀色の質素なプレートが付けられている。
プレートには、『帝国立アストラル 魔の捕食者の狩人学園』と刻まれている。
「ここが…、アストラル学園」
門の前に一人佇む少女。青みがかった白いコートを羽織っている。
腰には一本の刀を差してあり、それが使い込まれた物であるのは一目瞭然であった
「明日から、ここで生活することになるんだ」
首飾りを右手で握り締める。
そして少女はくるりと身を翻すと、その場を後にする。
(宿を探さないと……)
街は夕闇に染まりつつあった。
『アリィ・バルハット』
ふと、目に入ったのは宿の看板。
「師匠…」
そう呟くと、少女は宿へ入ってゆく。
「こんばんわ、いらっしゃいませ!」
カウンターに立っていたのは、若い女性店員。
「一泊、お願いします」
「はい、30ギルです」
少女は銅色の硬貨を3枚、カウンターに置く。
店員に鍵を渡され、階段を上る。
「アリィナ師匠、あの時の選択は間違ってなかったよね…?」
ベットに顔をうずめ、少女は眠りにおちていった。