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蒼銀の死神ーRapis Silver Jokerー  作者: 折鶴夏葵
0章 さぁ、物語がはじまるよ
1/85

古の神話

12/5

この物語の基盤となる話です。


____すべては、此処からはじまった。

この世界を創った創世神は、最初に大地を創った。

しかしその上には何も存在せず、ただ殺風景で広大なつまらないものだった。

神は必死に考えた。どうすれば、美しい世界を創れるのだろうかと。


「大地だけでは、美しい世界にはならない。青いモノを創ろう。どこまでも澄み渡る蒼穹の空を」


神はどこまでも続く空を創り、そこに太陽という輝くモノを浮かべた。

しかしいつまで待っても、大地は変わらないままだった。

神はまた、考えた。


「天のような、緑が欲しい。青々と茂る緑が。天には“水”というモノがあったな…。水が無ければ、緑を見ることは叶わない」


神は大地の周りに海を創った。そして緑を創るために大地に種を落とした。


「大地に緑を創るためには、水をあげなければ」


このときに神は空から水を降らせた。

時が経ち、神は大地を見た。

すると、望んでいた緑はそこには無く、枯れてしまった緑になるはずだったモノがあった。


「水は必要不可欠なのか。ならば、大地に水を与える者がいなければならない」

神は水を司る“精霊”を生み出し、大地に水を降らせる役目を与えた。


「お前にはこの世界の水を管理してもらう。一人では対処できないときに備えて、お前の補佐をする眷属を与えよう」



神はあることを思いついた。


「この世界のあらゆるモノを司る“精霊”を生み出して美しい世界を創る手助けをして貰えば、この世界も天の様に栄えるだろう」


神は“水の精霊”に続き、“火の精霊”“地の精霊”“風の精霊”を生み出した。

それぞれにそれぞれの眷属を与えた。

精霊たちがそれまでのモノと違ったのは、個々の意思を持つという点だった。

精霊たちは神を信頼し、崇めた。

神に美しい世界を見せたいが為に努力を重ね、ついに楽園を作り上げた。

やがて世界には聖獣が現れた。

聖獣は神が生み出したモノではなく、精霊たちの努力から生み出されたモノだった。


「素晴らしい。精霊たちよ、生命いのちを生み出したのか。私もこの世界に生命を生み出そう」


そうして生み出されたのは“人族”と“魔族”だった。

そのどちらもが魔力と呼ばれるモノを身に宿していた。

優れた魔力を持つ者に、神は特別なチカラを与えた。

精霊から信頼を得て精霊を操るチカラ、生粋の狩人となるチカラ、聖獣を操るチカラ、真実を視るチカラ。

その者達は後に民族を束ね、その家系には代々チカラが受け継がれていった。


精霊を操る“シェイリルの民”


生粋の狩人“フェルマータの民”


動物を操る“ティラードの民”


真実を視る“ルーディアの民”


四つの民族はそのチカラゆえに人族からも、魔族からも恐れられ、それまで暮らしていた地から離れていった。

四つの民族は人里離れた地に移り住み、人と関わることも無くなった。

恐れる存在がいなくなったことで、人族と魔族は欲に溺れ、自分たちの領土を広げようと争いを始めた。

人族は個々の力はあまり強くないが、その数は魔族を大きく上回っていた。

魔族は個々の力が強大だが、数は人族には敵わなかった。

争いは長い長い時の中で行われ、いつまでたっても決着はつかない。

争いによって、楽園だったはずの世界は荒廃してしまった。


それを見た神は怒り狂い、世界はさらに荒れていった。

神が我に返った時には、もう既に遅かった。

精霊が努力して作り上げたモノは、他でも無い神によって破壊されていたのだ。

尚も争いを止めない人族と魔族。

だが、自分が生み出した者たちを殺める事など神には出来なかった。


「人族と魔族の住むこの大地を幾つかに分けよう。二度と、こんな争いが起こらないように」


神は自身の持つ聖なる槍で、大地を分け、それはいつしか五つの大陸へと成った。


魔族の住む“ディアム大陸”


人の住む“オーガリア大陸”“ハーナル大陸”“ローリヴァン大陸”


聖獣たちの住む“アルヴァンニ大陸”


種族ごとに別々の大陸に住むことになり、世界は平和を取り戻した。

荒れた大地には緑が息を吹き返し、それぞれの大陸は異なる文化を生み出した。


しかし、神には分かっていた。

人族と魔族の欲望は、未だ強く根付いていることが。

神はそこで、自らがチカラを与えた者達が束ねた民族に願った。


「私の存在も、怒りに任せて力を使ったことで消滅に近づいている。だがこのままでは、また争いが繰り返されてしまう。きっとそのときに、私はいない。これは私の、最後の願いだ」


神が民族たちに願ったことは、その場にいた四つの民族と神しか知らない。





それからしばらくして、雨が降り始めた。


長い間降り止まぬ雨は、精霊たちが神の消滅を悲しみ、流した涙。

だが大地に生きる者たちは、そんなことなど知らず、いつものように過ごしていた。


そのとき四つの民族は、神が消滅したのを知った。

願いを聞き届けた者たちは、今も尚、その血を絶やすことなく生き続けている。

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