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Y件

午前1時23分


「なにそれ?」

桐原竜司の薄いリアクションに窓けんは床を叩いて、そのあと立ち上がる

「これは!!!!!!

最新OSに追加されたミラージュシステム!特別仕様のカメラ付きゴーグルを装着することで、ゲームの中の世界へ入ることができる夢のような発明!

まあ、本来はネットの世界に飛び込めるシステムを構築する副産物で生まれたらしいけど

棚からボタ餅!とはこのことだな!とつくづく思うね


そして、ここにくる理由はただ1つ!


親父は俺には買ってくれないのに、りゅうじには買い与えたROW小窓の最新ゴーグルがここにあるからだ!

だから!やらしてください!」



窓けんはウインクをしている

「うるさいな、そこにあるの使っていいからさ

こっちは仕事で忙しいんだよね」


「ありがとーーーりゅうじ、男前!!」

「はいはい…」


窓けんはゴーグルを頭に装着してパソコンに表示されるログイン画面にシリアルナンバーを入力していく


「ふふふふふふふふ…始まる、始まるんだ!ななな!」

「はいはい、いってらっしゃい」

桐原竜司はパソコンを眺めながら手を振った



午前4時59分、朝陽が窓から差し込み桐原竜司は時間の間隔を取り戻した

振り向くと窓けんはまだゴーグルを外していない

そこまで面白いのか?と桐原竜司は一旦、作業を中断して窓けんに近づく


「おい、窓けん、やりすぎだぞ

帰れ」

桐原竜司に寒気が走った

「窓けん?」

窓けんから返事が全くない


明らかに様子がおかしい

反応がまったくみられない

ゴーグルを取り外して、体に触れる、暖かい

死んではいないようだ

「何だこれは?おかしい…でもとりあえずは親父さんに電話!あと、救急車!」



午前8時

「苦労をかけたね」

小窓創太郎こまどそうたろうは窓けんの父親である

60歳とは思えないほど若く見える

常にストライプのシャツでカジュアルスタイル

一方、桐原竜司はパーカーにスウェットのずぼらな姿で少し恥ずかしい


「本当にすみません、まさかこんなことになるなんて…」


「君のせいではないよ、けんやの自己管理の悪さが招いた結果だ

自業自得というやつだな、ははは」


小窓創太郎のすごいところである

実の息子が意識不明であるにも関わらず、ここまで冷静でいられるのは冷徹であるとかそういうことではない

覚悟をしているのだ


人生は一度きりであり、時間も有限である

<今を全力で生きる>

小窓創太郎の会社のスローガンがそれを表している


しかし、ここまで冷静なものなのか?桐原竜司は小窓創太郎の人間性を理解しているにしても、息子の安否をそこまで冷静に考えられるのか?そこに多少なりとも疑問があった


「父さん、けんやは無事ですか?」

小窓台こまどだいが病室に現れた

25歳、次男である


「だい、そうか、今日が帰りか

どうだった?アメリカ合衆国の最先端技術は?盗めるものは盗んできたか?」

小窓創太郎の目つきが少し真剣になる

「父さん、けんやが意識不明だろ?けんやの心配をしてやれよ」

「だい、いつも言っているだろう?時間は無限じゃないんだ

声をかけることで奇跡的に意識を取り戻す事例があることは知っている

そんな奇跡があるなら声をいくらでもかけるさ


しかし、今回、けんやが意識を無くした原因は別のところにある」


「え?」

桐原竜司は思わずまぬけな声をあげたがまた病室の扉が開いた


「親父、けんやが入ったのか?」

小窓寅事こまどとらじ

長男、35歳


桐原竜司はその言葉にも疑問があったがそこは沈黙を守った


「とらじ!お前は、シンガポールの機関にいるはずだろ?なぜ、日本にいる?」

「父さん、今回は本職での依頼が入ってね

Y件には全面的にバックアップすることで契約した


だから解決するまでは日本にいることになる

で?今回で6人目だ

これで本部も本腰を入れて対処する必要がでてきた


しかし、この事業は外せないからね…本部の意向が強い」


小窓創太郎は髭をさすりながら質問を続けた

「今回で6件目…

そっちでは解決に向けた具体案はないのか」


小窓寅事はファイルをスーツケースから取り出しながら応える

「ばたばたしてるね、あれだけ提案していたのに

必ず発生するサイバーテロに向けてチームを結成しておくべきだと


まあ、今回のことでかなり反省しているみたいだからね

もうすぐ実現するじゃないかな」


そこで小窓寅事が桐原竜司に気がつく

「うん?なぜここに桐原君がいるのかな?

父さん…あれだけ言ったのに…

部外者をプライベートにまで干渉させるとまずいことになる

何度も言っただろ?


あーー、今回のことは桐原君が関係しているのかい?」


「えっ…はい」


小窓寅事は大きなため息をついた

「とにかく、これからもう一度本部に戻るよ」



小窓寅事は小窓創太郎にファイルを手渡して足早に病室をあとにした


「りゅうじ君、寅事兄さんを許してあげて

あんな言い方だけど、きっとりゅうじ君を巻き込みたくないからだと思う


それに実は、君の普段のお手伝いがかなり役立つと思うんだ」

小窓台はにっこりと笑っている


桐原創太郎がファイルに目を通しながら

「桐原君、これから時間ある?」

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