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ダジャレ

作者: こでまり-

 血にまみれ地に臥せた王の遺骸を守るかのように敵を睨みつける姫君。自分でも意外なことに恐怖以外の感情が心を占める。

 鉄錆の臭いが蒸れ、鮮血に染まるロビーに、秘め事隠す姫に牙を剥いた騎馬の群れ。

 何が先決かわからなくなる。現実感がなく、視界がぐるりと転回するような感じ。気がつけば、ぐるりと囲うように展開し終えている騎士団。

 向けられる騎士の殺意に既視感。

 秘法により創られた王家の秘宝。それを狙い父を殺した目の前の奴らへの自分の抱く感情によく似てる。

 秘宝は何処だと剣を向け馬から降りた剣士が問えば、犬歯を剥き、誰が答えるかと瞳をギラつかせる。

 父を殺されても堪えない姫君の髪を掴み、醜く笑いながら、女に産まれたことを後悔させてやる。と男が囁く。

 姫君は、近すぎて見難みにくい男を見据え、神の御名の下に生まれたことを後悔しても遅いと嘲う。

 ――ドロリとした己の感情を殺意だと理解したが最後、騎馬に牙剥く無垢なる姫君は大理石の敷き詰められた此処、ロビーで心が最期を迎える。

 ――ドロリと己の体を滴る液体が血だと理解したが最期。騎士達が向かえる悲願は彼岸。

 公開される宴目は狡獪な愚者達の後悔。

 男達の硬骨が飛び散る破壊の絶勝。

 ただ一人の女が恍惚と歌う破戒の絶唱。

 事態を把握出来ない騎士達。

 その間にも姫の両腕が甲冑を裂く。結果、数多咲く血花。

 辛うじて、姫の凶爪(つめ)を逃れた一人が背後から袈裟がきに切りかかる。

 左肩に食い込む鋼。骨を砕き、肉を断つ感触に男は高揚、ではなく安堵したかのような表情で息絶えたであろう赤に濡れた姫を見下ろした。

 しかし、詰めが甘い。

 男が剣を抜くと同時に血が肉が神経が、あらとあらゆる組織が再製され再生する。

 それを見、しかし行動に移る前に男は凶爪(つめ)により細切れの肉片へと姿を変える。

 独楽のように翻る姫君。その手には細切れにした男の長剣。

 その後の男達の行動は二つに分かれた。

 一つは気勢を上げて姫へと向かう。

 一つは奇声を上げて逃げ惑う。

 決意を固めようとも、(けつ)をまくって逃げようとも、結末は変わらない。




 絢爛な剣乱はただ一人を残して終幕した。

 静物を残し生物は皆殺し。

 薔薇を解体(バラ)すように殺害(バラ)した後で、凶器を手にし、凶気に狂喜し狂気する。

 息一つ切らさずに、全てを斬り捨てた少女は霧のように血の煙る広間(ロビー)の中心で十字架のように両腕を広げ動かない。

 その可憐な顔に浮かぶ表情は疲れていると言うよりも、憑かれているような無表情。

 愛くるしい笑顔を振りまく王女は死に、哀も苦しみも感じない魔女が生まれた。

 彼女こそが秘宝。

 王が愛する娘の骸を使い、違法外法魔法秘法の全てを用いて造り上げた意思持つ傀儡。

 その貴石のような奇蹟の軌跡は数多の意思や意志、遺志までも路傍の石を蹴るように鬼籍に入れ生み出された。生まれてから先程までは、紙を破るように簡単に殺す、神のようなチカラを内包した無垢なる姫だった。

 しかし、今では戦であったら偉業とも言える単騎での殲滅を容易く行える異形。

 しばらくすると、何も映さない鏡のような表情は崩れ落ち、屈み込む。

 全てが死んだ白を基調とした城の中、響く音は一つ。

 総てを殺した少女の嗚咽。

 獣の鳴き声のような泣き声を上げながら、城の全てにチカラを流す少女。



 後の世に、不視の魔城に住むと語られる不死の魔女。

 その誕生の物語。

~fin.~


文荒い。

でもこの勢い好き。


戒めの為に遺しておこうかと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  なるほどおもしろいw [一言]  これだけ文章センスあるなら、こんな殺伐としなくても盛り込んでいけそうですけどね。ダジャレを。  確かに勢いはありました。韻を踏んでいくなら、台詞や会話で…
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