漢の生き様
馬鹿な話ですが、ある意味リアル。
着信があった。
同じゼミの仲間、千代子ちゃんから。
現在時刻、土曜日の10時32分。
ほんの少し、オレがトイレに行っていた間の着信。時間にして17秒。
同じゼミの仲間ということで、とりあえず番号は交換したものの、美人の千代子ちゃんに電話をかける勇気なんてナッシング。
そんな千代子ちゃんから電話が、きた!
ぐあー、なんでリアルタイムで取らなかったんだ!オレは大腸を一生恨む!
いつも、着信なんてお母さんか、悪友の忠男か、GEOから『延滞してます、デジタルモザイク』ぐらいのもんだ。
まさか、千代子ちゃんからの電話とは…オレのセブンセンシズも頼りにならないもんだ。
でも、これどうしよう?
この時間の電話だろ…
『ねぇ、飲んでたんだけど、つまらないから抜けて来ちゃった。これから呑まないかな…?』
うおぉーこれは燃える!飲みたい!飲みたい!むしろいろんなものを飲みたい!飲ませたい!
早速かけなおさなきゃならん!このチャンスをものにせねば!
……
いや、待てよ。オレ、金持ってたっけ?残金は…
2546円、後はQUOカードが500円分…
だめだ、イタリアンレストランでQUOカードを出すわけにはいかん!使えないし!
でもどうしよう?ATMはもう閉まる。開いていても、下ろす金はない。
飲み直して、タクシー、そして、ホテール!むしろブティックホテール!帰りのタクシー、いや、むしろ、帰らずに朝マックか!マックグリドルか!
『ねぇねぇ、メイプルシロップとソーセージって、案外合うんだねハート』
そんな話してぇ!メイプルシロップとソーセージは全く合わないけど、そんな話はしてぇ!
いかん、早く軍資金を手に入れねば…少なくとも2万は欲しい…
どうしよう…忠男に借りる?
いやいや、ご飯のおかずが常にソースとマヨネーズとケチャップのローテーションの忠男のこと、2万なんて天文学的な金があるはずがない!
しかたない…奥の手、アルティメットウェポンを使うしかない!
『かあさーん?寝てる?』
『寝てないよ。なんだい?』
『(ナイス!韓国ドラマ中だ、機嫌いいはず)あのさ、お願いがあるんだけど…』
『なんだい!今見てるんだから、後にしてくれ!』
『(いかん!長期戦は不利だ!)あのさ、2万貸してくれない?何もいわずに!』
『何馬鹿なこといってんだい!』
『頼む!オレが男になるために、どうしても必要なんだよ!どうしても今必要なんだ!』
『…なんだか知らない間に一端の男になったようだね。ちゃんと返すんだよ!』
よしっっ!軍資金はゲットだ!母さん、オレ、やるよっ!
家の中で電話なんてしてられない。少しでも地下鉄に近いほうがいいだろう。走りながら、さぁ、電話だ!行くぜっ!
トゥルルル~ガチャ
『ハァハァ、あ、ごめん、千代子ちゃん、さっき電話くれたでしょ!なんかあった』
『いやね、今飲んでたんだけど…』
『(きたぁ~!きたきた!)どうしたの?抜け出て来ちゃった?』
『いやね…今、友達と飲んでて、エヴァンゲリオンの話になってて、ヒロインの名前がわからなかったの…』
『…ん?んん?』
『それで、あなたなら知ってそうかな~って?』
『…アヤナミレイかな?葛城ミサト?ソウリュウアスカラングレーもそうだし、あえていうなら伊吹マヤも…』
『いや、もういいよ。ありがとう、もうわかったわ。ありがとうねー』
ガチャリ
『いや、本当の意味ではアスカなんだけど、世間一般ではレイかな…』
走れるところまで走ろう。
走り着いたところは、泡のお風呂でした。
ある意味、漢になったので、母さんには嘘をついてません。
まぁ、こういう時代もあるかと(笑)