↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/8

プロローグ

 王都リーヴェルには、食品から不動産まで幅広く商売を営むベルフォード家という大商家があった。


 その当主オスカーは、三人の娘を書斎に呼んだ。


 柔らかい笑みを浮かべ、三女のリリアに声をかける。


「リリア、卒業おめでとう」


 リリアは微笑んだ。


「お父様、ありがとうございます」


 オスカーは机の上で手を組み、三人に言った。


「本題に入るとしよう。俺の後継者を決めるため、お前たち三人には、この街で商売をしてもらう」


 引き出しから丸めた地図を取り出し、机に広げた。


「見えないだろう。近くへ来なさい」


 三人は前へ進み、地図を見た。地図には三か所、赤い丸で印が付けられていた。


「この物件の中から場所を選び、何を売るのか、今夜までに教えてくれ。この街で、より多くの人々を笑顔にした者を、俺の後継者にする」


 長女のヴィクトリアは首を横に振った。


「お父様、私たちは商売について何も知りません。助言をいただけませんか」


「俺が教えては意味がないだろう。お前たちは俺の指示で動く使用人ではない。自分で考えなさい。失敗しても怒らないから、やってみなさい」


 ヴィクトリアは頷いた。


「わかりました」


 次女のセシリアがオスカーに尋ねた。


「お父様、物件は早い者勝ちですか?」


「ああ。ただし、売るものも決めてくれ。内装のデザインを決める必要があるからな」


 セシリアは地図に視線を落とした。


「問題は何を売るのか」


 リリアはオスカーに言った。


「お父様、物件を見て回りたいので、外出してもよろしいでしょうか」


「ああ。あまり遅くならないようにな」


「はい。お父様、失礼します」


 リリアは踵を返し、書斎を出た。


 家の外へ向かっていると女性の使用人がリリアに声をかけた。


「お嬢様、お出かけですか」


 リリアは足を止め、振り向いた。


「はい」


「私もお供します」


「大丈夫です。私一人の力で考えたいんです」


「差し出がましい真似をして、申し訳ありませんでした」


 使用人は頭を下げ、仕事に戻った。


 リリアは外に出て、物件を一つひとつ見て回った。


 北区画は、富裕層の住宅や高級店が建ち並んでいる。


 中央区画は、商業の中心地。人通りが多い。


 南区画では、住宅の間を子供たちが駆け回り、楽しそうな笑い声を上げている。


 *


 ——昼過ぎ。


 リリアは公園のベンチに腰を下ろした。


「どこで何を売ればいいのか、全然わかりません」


 ため息をつくと、隣からもため息が聞こえた。


 隣を見ると、青い髪を後ろで一本に束ねた青年と目が合った。青年は、白い制服を纏った騎士だった。


「騎士様、どうかされたのですか?」


 青年は静かに目を閉じた。


「僕に声をかけたのか?」


「はい。そのような装いの騎士様は、初めてお見かけしましたので」


 青年は目を開け、黒い瞳でリリアを見つめた。


「確かに、僕はこの街の騎士ではない。そんなに珍しいのか」


「はい。王都では見かけない装いですから。もしかして、他国の騎士様でしょうか?」


「ああ。視察に来た。……だが、困ったことに財布を落としてしまった」


「それは大変ですね」


「ため息が聞こえたが、キミは何か困っているのか?」


 リリアは少し迷った挙句、青年に事情を説明した。


「——なるほど。僕でよければ力を貸そう」


「本当ですか?」


「ああ。騎士に二言はない」


 リリアは立ち上がり、青年に向き直った。


「リリア・ベルフォードと申します」


 スカートの裾を少し上げ、会釈する。


 青年は純白の鞘に収まった剣を手に取り、立ち上がった。


「僕の名は——レオンハルト・ヴァイス。レオンで構わない」


「レオン様、ご案内します」


「ああ」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ブックマークや評価、感想をいただけると、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。