第十七話
体育祭は圭の逆転を期待する熱気に包まれていた。
真央が力強く叫ぶ。
「運命の2ラウンド、開幕だ! 健太チーム、1対2の絶体絶命! 圭のブラジリアン柔術が豪の猛攻を切り裂けるか! 指導2の豪、一撃で失格の瀬戸際です!」
カイトが吠える。
「圭の柔術はまだ息づく! 知性の戦略か、暴力の波状攻撃か! この心理戦、目が離せねえ! 世界中がこのリングを見つめてるぞ!」
健太が拳を握り、「頼む! 俺まで回してくれ!」と叫ぶ。
美咲が禍々しいオーラを放ち、ニコニコと笑いながら豪を一瞥。
目の奥に冷たい怒りが滲む。
ゴングが「カーン!」と鳴り、会場が歓声で揺れる。
圭は低重心で柔術の構えをとり、相手の重心と肩の動きを観察する。
「パターンを引き出す」と呟き、ジャブを顎先に放って反応速度を測る。
「パチン!」と軽い音が鳴り、豪が一瞬顔を歪める。
豪が「もう、パワー切れか!」と挑発し、大振りの右フックを繰り出すが、圭がスウェーで滑らかに躱し、反撃の左ストレートで鼻先を小突く。
「パン!」と乾いた音がこだまする。
圭は突進をサイドステップでかわし、軽いローキックを軸足に当てる。
「やはり素人だな。右足の軸がブレてる」と呟く。
豪が「効かねえ!」と叫び、圭をロープ際へと追い詰める。
コーナー近く、観客のざわめきがレフェリーの注意を一瞬散らすその瞬間、豪は左手を振り上げてガードを誘い、右手の指を素早く圭の目の前に突き出した。
パンチのフェイントを目潰し攻撃は、乱戦の一瞬に見えるよう計算されている。
圭はギリギリで躱すが、頬を掠める。
レフェリーの視線が再び戻る前に、豪はさりげなくガードを上げる動作に戻し、まるで何もなかったかのように次の攻撃を繰り出す。
美咲が眉を寄せ、手を握りしめ、静かなプレッシャーを放つ。
豪が「ふん!」と大振りの右ハイキックを放つが、圭は体を沈めてかわし、カウンターのショートアッパーを顎に軽く当てる。
鮮やかな音が響き、豪が一瞬よろめく。
圭は素早くテイクダウンし、クローズドガードに移る。
両脚で腰をがっちり固定し、右腕を両手で押さえ、肘の角度を微調整して時間を稼ぐ。
蓮が「時間稼ぎ、完璧だ」と呟き、剛と流星が「持たせろ!」と拳を握る。
豪が焦って力を込め、振りほどこうとする。
圭はタイミングを見計らって、素早く体を起こす。
豪が勢いよく突進し、髪を掴もうと手を伸ばすが、レフェリーが「髪は反則! やめろ!」と叫ぶ。
圭は頭を下げてかわし、すかさずシングルレッグテイクダウンを仕掛けるが、豪が踏ん張って倒れず、逆に首に腕を絡めてチョークを狙う。
圭は肩を落としてチョークをスルリと抜け、押し退けて距離を取る。
カウンターで軽いローキックを放ち、「パターンは揃った」とつぶやく。
彼は再びテイクダウンし、クローズドガードに戻って右腕を両手でコントロール。
軽いスイープを試み、豪の重心を崩しながら時間を稼ぐ。
豪の息が乱れ、焦りが顔に滲む。
会場は熱狂と緊張で沸き立つ。
ゴングが「カーン!」と鳴り、2ラウンドが終了。
観客の歓声とブーイングで沸騰する。
真央が声を張り上げて叫ぶ。
「なんという攻防! ロープ際の反則スレスレをかわし、クローズドガードで時間を支配! 健太チーム、1対2の崖っぷちで逆転の狼煙を上げるか!」
カイトが分析を重ねる。
「圭、完璧だ! 豪の突進も反則も全て読み切り、ジャブとローキックで軸を崩し、ガード内でコントロール! 豪は焦ってるぞ! 3ラウンドで圭の仕掛けたパターンが爆発するのか! この熱狂は止まらない!」
美咲が圧倒的なオーラを放ちながら近づき、会場の空気を支配する。
豪がコーナーで一瞬目を逸らし、そのオーラに気圧される。
彼女は圭の前で腕を組み、ニコニコと笑いつつ耳元で囁く。
「第二ラウンド、よくやった。では第三ラウンドはこの作戦で行く。そしてコレで極めろ」
圭が「えっ」と小さく声を漏らし、豪を一瞥して気の毒そうな表情を浮かべる。
蓮が苦笑いで低く言う。
「やってこい。お前の戦場だ」
豪がコーナーで「ぶっ潰す!」と吠えるが、声に微かな震えが混じる。
ゴングが「カーン!」と鳴り、観客の「うおお!」で揺れる。
圭は低重心で構え、突進をサイドステップでかわす。
豪の勢いを利用し、脇をくぐって背後に回り込み、ダブルレッグテイクダウンでマットに叩きつける。
圭は冷静に豪の右腕を両手でコントロールし、右足を脇に差し込んでオモプラッタのセットアップ。
素早く体を回転させ、横座りの体勢で右腕をロック。
豪の肩に強い圧がかかり、顔が歪む。
「ふん!」と豪が抵抗するも、腰を押さえて前転を封じ、じわじわと締め上げる。
圭がレフェリーに「そんなに力かけてませんよ」とアピールし、サッと解除。
レフェリーが「……オモプラッタ、問題なし」と一瞬迷いつつ、警告を出さない。
真央が叫ぶ。
「圭のオモプラッタがバッチリ決まった! 豪、肩がピンチ! え、離した!? 何!? 観客がざわついてるぞ!」
カイトが分析。
「圭の動きは計算ずく! オモプラッタをわざと離して、メンタルを揺さぶる! 豪の焦りが漂ってるぞ!」
豪は「効かねえ!」と吠え、なおも強引に突進。
圭は冷静にシングルレッグテイクダウンで捉え、マットに叩きつける。
素早く右腕を両足で挟み、腕十字の形に持ち込む。
肘に強い圧がかかり、豪の顔が歪む。
だが、極める直前でサッと解除し、冷たく笑う。
豪の呼吸が荒くなり、目に動揺が浮かぶ。
だが、「くそっ!」と吠え、立ち上がりながら顔を狙った肘打ちを放つ。
圭は冷静に肘をかわし、クリンチで動きを封じる。
右足を捉え、マットに倒す。
素早く体を回転させ、シングルレッグXガードへ。
右足で右膝裏を絡め、左足で腰を押さえ、豪のバランスを崩す。
豪の右踵を脇下に引き寄せ、ヒールフックをセット。
踵に強い圧がかかり、豪が「うっ!」と呻き、顔が歪む。
圭は極める直前でサッと解除する。
豪は膝を押さえ、荒々しい呼吸で立ち上がるが、足元がふらつき、目に恐怖がちらつく。
豪が「ふざけんな!」と唸り、追い詰められた獣のような目で最後の手段とばかりに金的キックを繰り出す。
だが、圭は一瞬の隙を見逃さず、膝を軽く曲げ、キックをガード。
豪のバランスが崩れたその刹那、圭は滑るように背後に回り込む。
両腕で胴を捕らえ、バックマウントを奪う。
圭の両足が腰にしっかりとフックし、まるで蛇が獲物を締め上げるように固定。
右腕で肩をガッチリ押さえ、逃げ場を奪う。
左足を巧みに動かし、豪の右足を絡めてツイスターをセット。
圭は体を左に傾け、豪の頭を右に、腰を左にひねる。
背骨に圧がかかり、豪の顔が苦痛で歪む。
「うっ!」と息を詰まらせ、豪の体が硬直する。
だが、圭はここで止まらない。
ツイスターのポジションを維持したまま、左足を滑らせ、豪の右足をさらに深く捉える。
まるでパズルを組み替えるような流れる動きで、バナナスプリットへ移行する。
圭は豪の右足を両足でがっちり挟み、左腕で体を押さえつけながら、股関節に容赦ない圧をかける。
豪の口から「うあっ!」という叫びが漏れ響く。
観客のざわめきが一瞬静まり、豪の苦悶の声だけが場を支配する。
圭は冷たく見据え、「まだだ」と小さく呟く。
バナナスプリットの圧を保ちつつ、右足を巧みにずらしてさらにコントロール。
体を軽くひねり、まるで水が流れるような動きでシングルレッグXガードへ移行する。
圭の両足が豪の右足をがっちり捉え、まるで鎖のように締め上げる。
そこから一気にカーフスライサーをセット。
圭は両腕で豪の左足を高く持ち上げ、股を大きく開かせる。
ふくらはぎに圧がかかり、豪が「うあっ!」と叫び、痛みで両腕で頭を抱える。
股を開かされ、じたばたする無様な姿に観客が爆笑する。
「え、なにあれ!?」
「うわ、恥ずかし!」と笑い声が響く。
美咲が腕を組み、ニコニコと笑いつつ「うんうん」と満足そうに頷く。
圭が吼える。
「お前は舐めすぎた! 対策もしてない素人が、絶対に勝てない! それが格闘技だ!」
そしてカーフスライサーを深く決め、豪の叫び声が弱まる。
「ぎげげげげええええっ!」
激痛で体が脱力し、リングに崩れ落ちる。
レフェリーが素早く割って入り、試合を止める。
観客が「圭! 圭!」と熱狂し、会場が揺れる。
真央が叫ぶ。
「圭、豪を圧倒! カーフスライサーでKO! 豪の心が折れた!」
カイトが補足。
「圭のこの流れ、芸術だ! バナナスプリットで股関節を極め、カーフスライサーで一気にフィニッシュ! 観客が総立ちだ!」
健太チームが1勝を挙げ、2対2の同点に。
圭が荒い息で立ち上がり、「蓮さん……やりましたよ」と呟く。
剛が「最高の試合でした!」と声を上げ、流星が「あいつの最後の顔見ましたか! 最高でしたよ!」と笑う。
蓮が静かに頷き、「よくやった。それでこそ俺の右腕だ」と言う。
颯が冷たい目で豪を睨み、静かに立ち去る。
健太が拳を握り、「次は俺だ! 絶対勝つ!」と叫ぶ。
美咲が健太を振り返り、これまでにない満面の笑みで言う。
「次はお前がぶっ倒す番だ」
健太チームの士気が沸騰する。
「はい、美咲さん!」と目を輝かせ、拳を握り締める。




