第十六話
秋の陽光がグラウンドに差し込み、体育祭は緊張感に包まれていた。
観客席は「圭! 勝ってくれ!」「健太チーム、逆転だ!」と熱狂で沸き立っていた。
健太チームは蓮の1勝に対し、剛と流星の敗北で1対2と劣勢だった。
3勝で決着のルールのため、追い詰められた状況だ。
真央が声を弾ませる。
「さあ、個人戦! 赤コーナー、圭! ブラジリアン柔術の黒帯、知性のファイター! 青コーナー、豪! ストリートで鍛えた無頼の拳! 圭の頭脳は豪の暴力を止められるか?」
カイトが声を轟かせる。
「柔術の緻密な技か、暴力の猛烈な力か! 圭の冷静な戦略が豪の突進をどう封じるか、リングが答えを出す!」
蓮が圭に鋭く囁く。
「相手は喧嘩屋だ。一回ペースに乗せられると面倒だぞ」
圭はメガネを外してケースにしまい、豪を見据えた。
「格闘技は暴力に負けません。それを私が証明します」と呟く。
健太が拳を握り、「逆転はここからだ!」と短く叫ぶ。
剛と流星は無言で頷き、視線でエールを送る。
対する豪は荒々しいオーラを放ち、ニヤリと笑う。
「弱肉強食、勝つ奴が正義だ! ぶっ潰すぜ!」
ゴング直前、レフェリーが圭に近づき、告げる。
「相手がグローブチェックを要求してきた。中央に来てくれ」
圭は眉を軽く上げ、青コーナーを一瞥する。
豪は不敵に笑い、拳を軽く叩きながら挑発的な視線を投げかける。
「ふん、グローブチェックか。らしいな」
両者はゆっくりと中央に進み、距離が縮まる。
観客席が一瞬静まり、緊張感が張り詰める。
レフェリーが「グローブを見せろ」と指示を出し、圭が両手を前に差し出す。
その瞬間、豪が「くらえ!」と吠え、一気に飛び膝蹴りを顔面に叩き込む。
圭は咄嗟に腕を絞ってガードを固めるが、「バシッ!」と音が響き、衝撃でロープ際に後退。
美咲が眉をピクリと動かし、豪を冷たく一瞥する。
豪が嘲笑い、すかさず襲いかかり肘打ちを左肩に叩き込む。
「ガツ!」と鈍い音が響き、圭は肩を押さえ、息を詰まらせながら膝を屈する。
観客席から「反則だろ!」「持ちこたえろ!」と怒号と声援が交錯。
レフェリーが目を吊り上げ、「ゴング前の攻撃は指導1! コーナーに戻れ!」と怒鳴る。
豪は「ルールなんざ俺の舞台じゃ邪魔だ!」とニヤリと笑い、観客の一部がブーイングで応える。
レフェリーが圭に近づき、「メディカルチェックを行う! 続けられるか?」と確認。
彼は肩を押さえ、息を整えながら静かに頷く。
蓮が駆け寄り、「大丈夫か?」と低く問う。
圭は「衝撃は抑えました。大丈夫です。むしろ相手の攻撃パターンを分析できてラッキーですよ。絶対に負けません」と呟く。
真央が叫ぶ。
「ゴング前から野獣の奇襲! この反則が圭の心に火をつけるのか!?」
カイトが叫ぶ。
「許されざる一撃だ! だが、柔術は冷静な計算の上に成り立つ。肩のダメージをどう逆手に取るか、この心理戦が勝負の鍵だ!」
レフェリーが両者に視線を向け、「準備はいいか!」と確認。
圭が頷き、腕を振り上げる。
ゴングが「カーン!」と鳴り、会場が観客の「圭、極めろ!」「豪、潰せ!」で揺れる。
圭は低重心でガードを固め、柔術の構えで牽制する。
肩の痛みが鈍く響くが、目を細めて足運びを観察し、「突進のリズム……崩せ」と呟く。
豪が「かかってこい、陰キャ!」と咆哮し、野獣の如く突進。
圭は素早くサイドステップでかわし、ジャブを顔面に放つ。
「パチン!」と軽い音が響くが、豪は意に介さず、肘打ちを肩に叩き込む。
「ガツ!」と鈍い音が響き、圭が一瞬後退。
「こいつ……肩を執拗に狙ってる」と息を整える。
豪が「逃げんな!」と頭突きを繰り出すが、咄嗟にガードを上げ、衝撃を抑える。
額に汗が滲み、視界が揺れるが、歯を食いしばって姿勢を立て直す。
美咲はニコニコと笑いつつ、握った拳がわずかに震え、内に秘めた怒りを覗かせる。
観客席が息を呑み、頭突きの衝撃にざわつく。
レフェリーが「頭突きは反則だ! 指導2! 次で失格にするぞ!」と警告。
豪が「チッ、うるせえ!」と顔を歪める。
「ビビってんじゃねえぞ!」と唾を飛ばし、挑発。
圭はクリンチで腕を掴み、「冷静に詰めろ。決して避けられない攻撃ではない」と呟く。
豪の重心のブレを見逃さず、柔術のテイクダウンで巨体をマットに引きずり込み、ガードポジションから三角絞めを狙う。
豪が「ふん!」と力任せに振りほどき、膝蹴りを脇腹に叩き込む。
圭が「クローズドガード」と呟き、両脚で腰をがっちり固定し、足首をクロスして仰向けに引き込む。
豪の巨体がマットに沈む。
圭は「ここで決める!」と歯を食いしばり、暴れる腕を押さえ込む。
右腕を掴み、腰を素早くずらして角度を作り、腕十字をセットアップ。
豪が肘を振り回すが、圭が冷静に腰をずらしてコントロール。
「ガキッ!」と関節が軋む音が響き、腕が軋む。
豪が「効かねえ!」と吠え、力任せに姿勢を起こし、汗と怒りで顔を歪めながら、ロックを強引に外し、肘を胸に叩き込む。
「ドス!」と重い音が響き、圭が息を詰まらせる。
圭が立ち上がり、突進をジャブで牽制。
慎重に間合いを測る。
「パチン!」と音が響くが、豪が「効かねえ!」と、ショルダータックルを圭の腹に叩き込む。
「ゴン!」と音が響き、ロープ際に後退。
圭が腹を押さえ、息を整えるが、視線は鋭い。
圭が「パターンは読めた」と呟き、豪の突進をかわしてシングルレッグテイクダウンでマットに引きずり込む。
圭は豪の腕を自分の胸に引き寄せ、両脚で肩と胴を押さえつけ、腕を捻り上げるキムラロックをセット。
豪の左腕を不自然な角度に曲げ、肩関節に強烈な圧をかける。
「グッ!」と痛みに顔を歪め、抵抗する。
圭が「これで終わりだ!」と囁き、腕をさらに捻り上げる。
豪が「ふざけんな!」と咆哮し、巨体を力任せに立ち上げ、圭を腕ごと持ち上げる。
ロックを強引にこじ開け、肩に担いで背中からバスターでマットに叩き落とす。
「ドン!」と轟音が響き、リングが揺れる。
観客席が熱狂で総立ちとなる。
圭は衝撃でよろめくが、素早くガードを固める。
ゴングが「カーン!」と鳴り、1ラウンド終了。
真央が魂を込めて叫ぶ。
「柔術が野獣の猛攻に食い下がる! 飛び膝からバスターの嵐、リングが暴力に呑まれた! だが、知性の炎はまだ燃えている! 体育祭の魂、ここに炸裂!」
カイトが声を轟かせる。
「圭のキムラロックは豪の腕を一瞬捉えたが、あのバスターの破壊力は脅威! 肩のダメージが寝技を鈍らせているのか!? 次のラウンド、分析が暴力をどう切り裂くか、刮目せよ!」
圭がコーナーに戻り、荒い息をつく。
剛が「大丈夫ですか!」と声をかけ、流星が「あいつ卑怯すぎますよ!」と豪を睨む。
蓮が「いけそうか?」と低く言う。
健太も激励を飛ばそうとするが、美咲が近づき、圭の肩を強く掴む。
「2ラウンド目は徹底して分析に回せ。触るだけでいい。ジャブとローで牽制だけしろ」
彼が「えっ」と振り返るが、彼女は笑顔で「2ラウンド目は徹底して分析に回せ。触るだけでいい。ジャブとローで牽制だけしろ」と繰り返す。
その目の奥は笑っていなかった。
圭は校舎裏の空き地で見た彼女の姿を思い出す。
「分かりました」
そういうと美咲は満面の笑みでセコンド席に戻る。
健太が「何をアドバイスしたんですか?」と興味津々に尋ねた。
美咲はニコニコして何も答えない。
圭がリングを見据え、「触るだけ……やってみるか」と呟く。
対する豪がコーナーでニヤリと笑い、「次でケリをつけるぜ!」と吠える。
会場は健太チームの崖っぷちと、圭の冷静な闘志で期待が膨らむ。




