第7話 極道の陰影
時を同じくして、一条組本部の会議室でも、同様に重苦しい空気が漂っていた。
長い黒檀の会議テーブルの両側には、組織の中核幹部たちがずらりと座っている。煙が立ち込め、ほとんどの者が姿勢を正し、主座に座る男に視線を集中させていた。
一条竜也は濃色のスーツ姿で、ネクタイは締めていない。シャツの襟元は無造作に開けられ、わずかに鎖骨のラインとあの浅い傷跡が覗く。彼は椅子にもたれかかり、一見リラックスしているようだが、その鋭い瞳が、居並ぶ全員をゆっくりと見渡すとき、そのプレッシャーで空気が凝固するかのようだった。
「組の今後三年間にわたる、不動産、物流、金融への段階的な事業転換の詳細計画は、黒田から皆の手元に渡っているはずだ」竜也の声は大きくないが、一人一人の耳に鮮明に届く。「何か問題があれば、今提起してくれ」
短い沈黙の後、白髪交じりで精悍な顔つきの、叔父貴世代の幹部、島田が、手元の計画書をテーブルの上に軽く叩きつけるように置いた。
「若頭」島田の声は、古株の極道特有のしゃがれ声と率直さを含んでいた。「我々のような古い人間が、貴方を支持しないわけじゃない。だが、兄弟たちは長年、昔ながらの『シノギ』で食ってきたんだ。今、いきなり転換だと言われても、あのナイトクラブや賭場の商売はどうなる?下にはたくさんの兄弟がいる。彼らは何を食い、何を飲むんだ?まさか全員が建設現場でレンガを運び、パソコン画面に向かって株を見ろとでも言うのか?」
彼の言葉に、数名の保守派幹部が低く賛同の声を上げた。
竜也の視線が島田に固定される。彼はすぐに反論せず、むしろ頷いた。
「島田叔父貴のご懸念は理解する」彼の口調は非常に平静だが、眼差しは刃物のように鋭い。「つまり、叔父貴は、兄弟たちを一生、日の当たらない陰で生かし、時代に取り残されるのを待つか、あるいは……いつの日か警視庁に手柄として一網打尽にされるのを待てと?」
彼はわずかに身体を前傾させ、肘をテーブルにつけ、指を組み合わせた。
「時代は変わった。『昔のやり方』はもう通用しない。暴力は、あくまで最後の手段であって、生き残るための唯一の方法であってはならない。俺たちは、兄弟たち、そしてその家族に、陽の当たる未来を与える必要がある」彼の声は依然として落ち着いていたが、反論を許さない力を帯びていた。「転換には痛みが伴うが、俺についてくる兄弟には、今よりずっと安泰で、裕福な未来を約束する。ついてこられない者は、無理には引き止めない。然るべき金銭を渡して、穏やかな晩年を送ってもらえばいい」
彼は一拍、言葉を切った。その視線が全員を掃き、最後に再び島田の顔に戻る。
「だが、組の金を受け取りながら、裏で小細工を弄し、組の未来を邪魔しようとする者がいるならば……」竜也の口元に、冷たい弧が描かれた。彼は最後まで言葉にしなかったが、その身の毛がよだつような殺意は、居並ぶ多くの幹部の背筋を冷やした。
島田の顔色は幾度か変わり、最終的に竜也の圧倒的なプレッシャーに晒され、憮然として口を閉ざし、それ以上何も言わなくなった。
会議は、表面上は平静だが、内側では暗い潮流が渦巻く雰囲気の中で終了した。
幹部たちが次々と退室した後、竜也は主座に一人座り、眉間を揉んだ。内部の抵抗は、予想よりも少し大きい。特にあの島田は……。
その時、テーブルに置かれた彼のプライベートな携帯電話の画面が光った。新しいメッセージの着信だ。
送信者:Sakura。
竜也はメッセージを開く。内容は非常に簡潔だった。
『父と腹心が一条組の動向について話し合い、警戒している様子。また、週末の家宴で、伊藤の件が正式に話題に上りました。』
竜也は画面を見つめ、その眼差しは瞬時に氷のように冷たくなった。
鈴原家、伊藤家……やはり、この鬱陶しい蝿どもが群がり始めたか。
彼の細長い指が、素早く画面に返信を打ち込む。
『了解した。全て予定通りで。俺がいる』
送信が成功した後、彼は携帯を置き、窓の外の華やかな都会の夜景を見つめた。その眼差しは深淵を覗くように奥深い。
どうやら、計画をさらに加速させる必要があるようだ。




