勢力の再編
朝の光が雲を突き破り、一夜の動乱を経た東京を照らした。一条組本部の会議室では、多くの者が顔に疲労の色を浮かべていたが、その瞳は、興奮と高揚の光を瞬かせていた。
黒田哲也が、プロジェクターのスクリーン前に立ち、竜也と鈴原桜に最新の情勢を報告している。
「若頭、夫人」黒田の声には、隠しきれない興奮が滲んでいた。「この度の抗争によって、山口組柴田派の核心戦力は三分の二以上を失いました。彼らの関東におけるいくつかの重要拠点も、指導者を失ったことで内部混乱に陥っています。さらに重要なのは……」
彼はスライドを切り替え、画面には関東地区の主要な極道組織の名称と勢力図が表示された。
「……元々、山口組と我々の間で態度を決めかねていた『沼田会』、『小松組』などの中小組織が、今朝早くから、我々への接近の意向を明確にした挨拶状を送ってきています。現在、裏社会では」黒田は一拍置き、敬意を込めた口調で続けた。「若頭のことを、『関東の龍』と呼び始めています」
この称号は、絶対的な武力、卓越した謀略、そして既に確立された覇権を意味していた。
竜也は主座に深く腰掛け、その敬意に満ちた称号には関心を示さなかった。彼が注視するのは、あくまで実際の成果と、今後の道筋だ。彼は、隣に座る鈴原桜へと静かに顔を向けた。
「どう思う?」
鈴原桜の視線は、勢力図から引き上げられた。その目は、冷静で明晰だ。「これは、絶好の好機です。この投降してきた勢力を統合すれば、私たちの実力は大幅に強化されるだけでなく、これらの分散し、時に混乱の温床となる力を、制御可能な軌道へと組み込むことができます。これは、私たちが次に目指す全面的な事業転換において、極めて重要です」
彼女の考えは、竜也と寸分違わず合致していた。竜也は頷き、黒田に命令を下した。「組の外に情報を流せ。一条組は志を同じくする友を歓迎する、と。だが、条件がある。我々の新しい規則を遵守することだ。再編成を受け入れ、我々の正式な商業システム(桜華信貸)の枠組みに組み込まれる意志のある者だけを歓迎する。古態に固執する者は、自滅に任せておけ」
「承知いたしました!」黒田は意気込み、すぐさま命令を受けた。この統合は、一条組が単なる極道組織ではなく、強大な地下の影響力を持ちながら、合法的な商業に根差した新型の連合体へと進化することを意味していた。
その時、一人の組員がノックして入室し、丁重に装飾の凝った招待状を差し出した。
「若頭、鈴原家からでございます。来週行われる家族晩餐会に、若頭と夫人をご招待したいとのことです」
竜也は招待状を受け取り、その上に刻まれた鈴原家の家紋を一瞥した。彼の眼差しは微かに冷たくなったが、口元には意味深な弧を描いた。彼は招待状を桜に手渡した。
「どうやら」彼の低い声が会議室に響いた。「誰かが、座っていられなくなったようだ。この**『刀』の価値を、再評価したいのだろう」
鈴原桜は招待状を見ても、驚く様子は微塵もない。ただ、全てを了解したかのような平静な表情だった。




